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5.茶番①
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「おはよー、瑠衣」
「……おはよう」
「今日部活休みだから一緒に帰ろうよ」
「…………」
「じゃあ決まり。どっか行きたいとこ考えておいて」
あれから一週間。高崎は俺と友達からはじめるというあの日の言葉を実践するかのように、やたらと積極的に話し掛けてくるようになった。
出来るだけ最小限の接触で済ませたいと思っている俺は、極力喋らないようにしているのだが、何故かアイツの中では会話が成立してることになっているらしく、俺のところに来てはほぼ一方的に喋って去っていくということを繰り返している。
今も教室に入ってくるなり俺のところに来たと思ったら、勝手に喋って自分の席に向かっていった。
しかも最初の挨拶以外何も言葉を発した覚えがないのに、一緒に帰ることに決まった上、どこかに寄り道する予定になったらしい。
そんな俺達の様子を見たクラスメートの反応は様々だ。
約半年間同じクラスにいて、俺の存在を認識することすらなかった高崎が突然俺の事を名前で呼び、休み時間ごとに俺の席に来ては話をする。
そんな光景を初めて見た時、クラス内は驚きと疑問が混ざり合った妙に居心地の悪い空気に包まれた。
一週間経った今となっては、おおよその事情を察しているのか、野次馬的な好奇心を孕んだ不躾な視線や、あからさまに俺を馬鹿にしたものや、嫌悪感を露わにしたものという多岐に渡る不快な感情に変わってきている。
中でも今回俺をこの罰ゲームのターゲットに指名したと思われる高崎と同じバスケ部の中田は、高崎が俺に近付いてくる度にいい感じにゲスな視線を向けてくるのだ。
全部知ってる俺からしてみれば滑稽にしか思えないが、本人は実に楽しそうなので、今のうちに精々楽しんでおけばいいと思っている。そのうち笑ってる場合じゃなくなるだろうし。
最初俺は高崎のせいで注目を浴びるのが嫌で堪らず、すぐにでも全てを暴露してさっさとこの鬱陶しさから逃れようと思っていた。
でもあの告白の次の日。
いつものように特別棟の階段の踊り場で昼休みを過ごしていたところ、またしても部室棟付近にいたあの連中の話し声を聞いてしまい、気が変わったのだ。
「昴流ってばマジで頑張ってんじゃん。朝から高嶋んとこまでわざわざ話し掛けに行ったりさー」
「そういえば昨日告ったんだっけ? じゃあ今はガンガンアプローチしてる最中ってこと?」
「スゲーよ。今まで誰にも見向きもされなかったボッチが昴流に話し掛けられてキョドってる姿とか、マジうけたわ。あれはオチるのも時間の問題だと思う」
「あーあ。そんなんじゃ罰ゲームどころか、難易度高めにしても結局昴流のひとり勝ち状態じゃん。つまんねー」
「もう消化試合に入ってんだろ。だったらもうちょい楽しむためにハードルあげてこうぜ」
「よし、昴流。こうなったらトコトンいっとけ!」
「お、いいねー。次何賭けるー? ボッチ君の処女喪失に」
「やめろ。おもしろがってんじゃねぇ」
「お、珍しー。昴流が焦ってる。この間は涼しい顔して聞いてたくせに、いざホントに男とヤるとなるとビビってんのかよ。ダッセー」
「俺だったら絶対無理だけど、昴流ならイケるだろ。がんばれー」
「だよなー。いっとけ、いっとけ。俺なんてまたフラれたぞー」
「マジか!? 今度は誰んとこいったんだよ?」
次の話題に移ったところで俺はスマホのボイスレコーダーを停止させた。
咄嗟に思い付いてやったことだが、録音しておいて正解だと思う。
これはちょっとスルー出来ない。
正直俺は、俺が大人しく高崎に抱かれることが確定だと思われていることよりも、何故か高崎が俺に告白したことになっていて、予定どおり一ヶ月以内に俺をオトす計画が実行されているのだと言われていることに驚いた。
俺と友達になるといったのは、すぐにゲームオーバーになったっていう事実を隠し、一ヶ月以内に俺を落とすという賭けがあたかも成立したかのように装うため。
俺だって高崎が純粋に俺と友達になりたいと思っているわけじゃないことくらいわかってたけど、こうして実際どういうつもりだったのかってのを知っちゃうと、不愉快さが桁違いだ。
しかも俺とのセックスを賭けにするとか、どんだけゲスでクズな連中なんだと嫌悪感さえ沸いてくる。
相当頭にきていた俺は、アイツらの茶番に最後まで付き合うことで、今度こそ一番効果的なタイミングでアイツらがダメージを追うような暴露の仕方をしてやろうと心に決めた。
「……おはよう」
「今日部活休みだから一緒に帰ろうよ」
「…………」
「じゃあ決まり。どっか行きたいとこ考えておいて」
あれから一週間。高崎は俺と友達からはじめるというあの日の言葉を実践するかのように、やたらと積極的に話し掛けてくるようになった。
出来るだけ最小限の接触で済ませたいと思っている俺は、極力喋らないようにしているのだが、何故かアイツの中では会話が成立してることになっているらしく、俺のところに来てはほぼ一方的に喋って去っていくということを繰り返している。
今も教室に入ってくるなり俺のところに来たと思ったら、勝手に喋って自分の席に向かっていった。
しかも最初の挨拶以外何も言葉を発した覚えがないのに、一緒に帰ることに決まった上、どこかに寄り道する予定になったらしい。
そんな俺達の様子を見たクラスメートの反応は様々だ。
約半年間同じクラスにいて、俺の存在を認識することすらなかった高崎が突然俺の事を名前で呼び、休み時間ごとに俺の席に来ては話をする。
そんな光景を初めて見た時、クラス内は驚きと疑問が混ざり合った妙に居心地の悪い空気に包まれた。
一週間経った今となっては、おおよその事情を察しているのか、野次馬的な好奇心を孕んだ不躾な視線や、あからさまに俺を馬鹿にしたものや、嫌悪感を露わにしたものという多岐に渡る不快な感情に変わってきている。
中でも今回俺をこの罰ゲームのターゲットに指名したと思われる高崎と同じバスケ部の中田は、高崎が俺に近付いてくる度にいい感じにゲスな視線を向けてくるのだ。
全部知ってる俺からしてみれば滑稽にしか思えないが、本人は実に楽しそうなので、今のうちに精々楽しんでおけばいいと思っている。そのうち笑ってる場合じゃなくなるだろうし。
最初俺は高崎のせいで注目を浴びるのが嫌で堪らず、すぐにでも全てを暴露してさっさとこの鬱陶しさから逃れようと思っていた。
でもあの告白の次の日。
いつものように特別棟の階段の踊り場で昼休みを過ごしていたところ、またしても部室棟付近にいたあの連中の話し声を聞いてしまい、気が変わったのだ。
「昴流ってばマジで頑張ってんじゃん。朝から高嶋んとこまでわざわざ話し掛けに行ったりさー」
「そういえば昨日告ったんだっけ? じゃあ今はガンガンアプローチしてる最中ってこと?」
「スゲーよ。今まで誰にも見向きもされなかったボッチが昴流に話し掛けられてキョドってる姿とか、マジうけたわ。あれはオチるのも時間の問題だと思う」
「あーあ。そんなんじゃ罰ゲームどころか、難易度高めにしても結局昴流のひとり勝ち状態じゃん。つまんねー」
「もう消化試合に入ってんだろ。だったらもうちょい楽しむためにハードルあげてこうぜ」
「よし、昴流。こうなったらトコトンいっとけ!」
「お、いいねー。次何賭けるー? ボッチ君の処女喪失に」
「やめろ。おもしろがってんじゃねぇ」
「お、珍しー。昴流が焦ってる。この間は涼しい顔して聞いてたくせに、いざホントに男とヤるとなるとビビってんのかよ。ダッセー」
「俺だったら絶対無理だけど、昴流ならイケるだろ。がんばれー」
「だよなー。いっとけ、いっとけ。俺なんてまたフラれたぞー」
「マジか!? 今度は誰んとこいったんだよ?」
次の話題に移ったところで俺はスマホのボイスレコーダーを停止させた。
咄嗟に思い付いてやったことだが、録音しておいて正解だと思う。
これはちょっとスルー出来ない。
正直俺は、俺が大人しく高崎に抱かれることが確定だと思われていることよりも、何故か高崎が俺に告白したことになっていて、予定どおり一ヶ月以内に俺をオトす計画が実行されているのだと言われていることに驚いた。
俺と友達になるといったのは、すぐにゲームオーバーになったっていう事実を隠し、一ヶ月以内に俺を落とすという賭けがあたかも成立したかのように装うため。
俺だって高崎が純粋に俺と友達になりたいと思っているわけじゃないことくらいわかってたけど、こうして実際どういうつもりだったのかってのを知っちゃうと、不愉快さが桁違いだ。
しかも俺とのセックスを賭けにするとか、どんだけゲスでクズな連中なんだと嫌悪感さえ沸いてくる。
相当頭にきていた俺は、アイツらの茶番に最後まで付き合うことで、今度こそ一番効果的なタイミングでアイツらがダメージを追うような暴露の仕方をしてやろうと心に決めた。
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