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坊ちゃんと私の学園生活⑦
しおりを挟む気配は分かっていたけれど、当然去って行くかと思えば、3人のご令嬢が私達を見下ろしている。
私達と言えば、私はサンドイッチを頬張っているし、エリザベス嬢はミーネを抱き寄せて撫でていたし、中々のカオス振りだ。
「……アウネウラ嬢、コリーテ嬢、ベッテン嬢。ご機嫌よう」
エリザベス嬢が立ち上がり、綺麗な淑女の礼をする。どうやら級友か偉い人のご令嬢なのかしら?
「ご機嫌よう。こちらで何をなさってますの?」
「私の従兄弟が入学したものですから、今日は一緒に過ごしておりますの」
「従兄弟と言うとあの……カーベニオン家の」
「ええ。まだ不慣れでしょうから、息抜きに。アウネウラ嬢は如何お過ごしですの?」
アウネウラと呼ばれた金髪縦ロールは、その重そうな一房を手で払う。凄い。形が崩れない!
「私達はこれから寮の貴賓室でランチでもしようと思ってますのよ。折角ですから、エリザベス嬢とその従兄弟さんも一緒に如何かしら?」
「有り難いお言葉ですけれど、私ーーー」
「長期休みが明けてから、エリザベス嬢はお忙しくてらっしゃるのね?」
そこへ茶髪ポニーテールの令嬢が割って入る。何とも嫌味ったらしい言い回しね。
しかし、エリザベス嬢は先程の穏やかさは何処へ行ったのか。ツン!とすましている。
これがあのこまっしゃくれた原因ね?!
「そう言われましても、休みが明けてまだ2週間ですのよ?まして、従兄弟が入ったとなればそれなりに忙しいのですわ」
「カーベニオン家の編入生と言えば、やたら成績が良くて、やたら強い侍女を召し抱えているとの噂。エリザベス嬢の手は要らないのではなくて?」
そこへ口の端をくいっと上げて不敵に笑う黒髪ロングが追撃する。
あーあーやだやだ。貴族の面倒なことを、まだ少女の内からしないといけないなんて。
「まあ……酷いですわ。ベッテン嬢」
「そうでなくとも、エリザベス嬢はエイドール様とも親しい間柄。婚約者がいないとはいえ、男性と親しくし過ぎるのは如何なものでしょう?」
エイル様がなんですって?
「いやだ、親戚相手に何を仰っているんでしょう」
あ、思わず口が滑ってしまった。
「……貴女。発言は許可してないのだけど?」
すかさず金髪縦ロールが睨みを効かせてくる。
少女の睨みなんて、角熊に比べたら余裕しかない。
「私、カーベニオン家に仕えておりますレナと申します。僭越ながら申し上げれば、学園では身分の貴賤はなく、誰しもが平等で切磋琢磨しあうべし。と教えられているかと存じますが、それを無視しろという発言でよろしいでしょうか?」
「貴女が……。でもお生憎様。学園から出ればまた家格が付き纏いますのよ?平等など、下々の者の言い逃れでしょう」
「それは面白くないじゃないですか」
「何なの、この人っ」
茶髪ポニーテールは血気盛んね。まあ、待ちなさい。
「家格を見てへこへこ付き添う人なんて信用出来るわけないじゃないですか。平等ということは、己の価値を信じて学園生活を送り、己の魅力と観察眼を研ぎ澄まして、より良い友人と付き合う技量が問われるんではないですか?それを、何も持ってない内から虎の威を借るーーー」
「ちょっ、ちょっとあなた……都会の貴族にそれは無理よ。派閥とかあるんだから」
エリザベス嬢が耳打ちしてくるけど、多分聞こえてますよ?それ。
「あ、あなたね」
「あー!!危ない!!」
途端に坊ちゃんの声がして、振り向くと、一目散に駆け込んでくるフェンが見えた。
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