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色々企画外です

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ギルド長室から出た千秋は、換金所へ向かった。詳しくは分からないが、恐らくゴブリンの石やら爪やらを預けた窓口だろう。

階段を降りて一階へ到着すると、パウロが千秋へ寄って来た。

「良かった、嬢ちゃん無事に終わったか? 」

「冒険者登録は終えましたが、ギルド長が換金所へ行けと言ってました。あ! 後、パウロさんに面倒見て貰えって」

「そうか、なら指示があるまで俺と一緒にいよう」

そう言うと、パウロは千秋の頭をわしわしと撫でた。

(…………)

「どうした? 」

千秋は思考を飛ばしていたが、慌ててパウロに笑顔を向けた。

「あ! 頭を撫でられるの初めてだったので、何だかくすぐったくて……ふふっ」  

その言葉に、パウロは気の毒そうに眉を寄せたが、それが何に対するものなのか千秋は気付かない。

「換金所? へ行ったら、ご飯食べたいんです。元々お腹ぺこぺこで……。果物は食べてたんですけど」

「なら、換金所で金を受け取ったら、ギルドの食事処で何か頼むか」

「早く食べたいです! 」

そう言って駆け出す千秋に続くネッロ。

「…………」

パウロは何か思う所があるのか、黙って後から続いた。



✴︎



(硬貨の価値が分からない……)

換金所へ向かい、受付にびくびく怯えられながら、千秋は小さな麻袋に入った硬貨に首を傾げた。説明によれば、銀貨5枚に銅貨20枚。高いか安いか分からないが、まだ自分のゴブリンアイテムを売っていない事に気付いて、テーブルの上にざらざらと石やら爪やらを広げた。

「……はい、承りました。暫く時間がかかりますので、この番号札をお持ちになってお待ち下さい。完了致しましたら番号をお呼び致しますので、札は無くさない様にして下さい」

「はい、宜しくお願いします」

転生人が溢れているお陰か、システムがスムーズで千秋は上機嫌で札をリュックへしまった。何故か受付の表情が強張っていたが、この際無視である。決して、ゴブリン30匹より量が多いとか、石が大きいのも混ざってるとか気にしてはいけない。

「良いか? 食事処はこっちの扉だ」

背の高いパウロに続き、千秋は簡易なカフェの様な部屋へと足を踏み入れた。木製のテーブルに椅子、壁にはこれまた木製のメニュー表が掛けられている。部屋の奥にはカウンターが有り、奥には厨房が続いている。

(建物もそうだけど、流石に近代っぽい。ご飯も期待出来るかも)

そう思いながら席へ着くと、ネッロはがたがたと空いているテーブルや椅子を追いやり、千秋の横へ伏せた。

「そう言えば、動物も大丈夫なんですか? 」

「ああ、冒険者にはテイマーが居るからな。他の飯屋は分からんが、ギルドの食事処は大丈夫だ」

「良かった」

千秋はほっとしつつ、壁のメニュー表を見る。冒険者登録もそうだったが、字も言葉も問題なく通じる。何故自分にこんなにもご都合主義な特典が付いているのか。まるで、この世界で違和感なく溶け込めと言われている様にも思えるが、言葉が通じないのは大変だろうし、力を与えてくれた謎な相手に軽く感謝しておいた。余計な余生を与えられたので、あくまで軽くだ。

「ここは、猪が取れるから猪のカツとか甘辛炒めが人気だぞ」

「へぇ、猪……オークじゃないですよね? 」

異世界と言えば豚肉=豚顔オークだと、小説や漫画で刷り込まれた千秋は恐る恐る聞いたが、聞かれたパウロがあからさまにドン引きしていたので、違う事にほっとした。

「いや、オークは……魔物だから倒せば消えるし、あれは食べたいと思わないぞ……」

「良かった、私もです。因みに、魔物が居るのに動物は無事に生きられるんですか? 」

「それは……ああ、記憶が無いんだったか。食いながら説明するから、注文するか」

「あ、ネッロはステーキで良い? 20枚で足りるかなぁ? 」

それを聞いて、パウロは頬を痙攣らせた。千秋が不思議に思って問いかけると、奢ろうと思っていたから量に慄いたと正直に告げられ、ここまで世話になったのに必要ないと笑ったが……

「あ、でもステーキっていくらですか? これで足ります? 」


と、先程の換金した硬貨をパウロへ寄越すので、その無防備さに呆れられるのだった。そんなパウロに苦笑いを返しつつ、千秋は猪の甘辛炒めを注文し、大丈夫だと言われたのでネッロにステーキを20枚頼んだ。

千秋は本当にパウロに世話になっているのだ。依頼人の商人から庇ってくれたり、ギルド長への報告も千秋寄りに証言してくれた。何より、鑑定で見たパウロのステータスを千秋用に擬態させて貰い、騒ぎがこれ以上大きくならなかったから(既に騒ぎの大きさは手遅れな感じがするが、そこは見て見ぬ振りだ)、全てパウロのお陰だ。

偽装ではなく、擬態と名の付いたスキルは鑑定とセットらしい。自分の思う様にステータスを弄れない代わりに、鑑定したステータスを自分に寄せて作成出来る。作成出来ると言っても、擬態と念じるとオートモードでステータスが変化しただけで、千秋が弄った訳でもない。試す暇が無かったが、テンセイビトと聞いた時点で嫌な予感がした千秋は、予め鑑定していたパウロのステータスを真似たのだ。危機回避能力様々である。擬態していなければ、人族かも怪しい千秋はもっと疑わしかったに違いない。しかも、森の主の従僕も知られる訳にはいかない。立場が従僕となると、制御出来ないのではと思われたら、ネッロがどうなるのか分からないからだ。

(猫は飼うんじゃなくて、猫様をお世話させて頂くってよく言うし、従僕は寧ろ嬉しいんだけどねぇ……)


パウロの説明を話半分で聞いていた千秋の前に、明らかに生姜焼きだろう料理が運ばれてきた。醤油も存在しているのか、日本人の千秋の味覚にぴったりな美味しさだった。


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