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23、切れた者勝ち
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呪いは妖精のせいだった。そして騎士団内でまじないと言う名の呪いが横行しているのも発覚した。
けれど、皆が皆妖精が見える訳ではない。
「妖精が見えないのに、呪えるものですか? 」
素朴な疑問を口にすると、フェリクス様は頷いた。
「恐らく、その妖精が喜ぶ儀式が周知されているんだろう。大方、満月の晩に窓辺にお菓子を置くだとかそんな程度だ。味を占めた妖精は楽しんで皆の頬を腫らしていたのだろう」
「傍迷惑な……」
「妖精に良し悪しの概念は無い。常に自分の思うままに動くだけだ。今回はあの女は波長が合い過ぎて聞こえ過ぎたのだ。そして力も強過ぎた。最悪な組み合わせだったのだろう」
最悪な組み合わせで呪われるなんてたまったものではない。しかも実行犯は間違いなくあの魔導師なのに、既に罰は受けているし、何だか巻き込まれたのに置いて行かれた感が拭えずに、何と言うか……このもやもやをどう取り払えば良いのか分からない。
「今回これだけの騒ぎになったのだ。どう対処すれば良いのか……今後もまじないをする者がいないとは言い切れないのだし」
魔導師長が眉間を揉みながら心底疲れた様にぼやいた。確かに、一人一人を監視出来る訳が無いのだ、再発は免れない。
「ああ、それは簡単な事だ。今度原因不明で頬を晴らした者が居れば、騎士団全員の給金を減額すればよいのです」
「え」
「はぁ、なんと」
「勿論、きちんと原因を探り、それが呪いと判明したら、問答無用で減額です。いっそ半額にすれば良いのでは? 連帯責任を押し付けてしまうのです。一度くらいは再発するかも知れませんが、たった五日頬を腫らす為に給金を削る者はそう居ないかと。寧ろ直接殴った方が罪が軽い」
鬼か。それとも悪魔なのか。ここに働く者全ての懐を操作する敵が居る。しかも本人はきっと給金を減額されても痛くも痒くも無いのがまた酷い。
「流石にそれは行き過ぎかと……」
「周知を徹底するのです。呪うより、殴った方が早いと。恋敵を呪うより、想い人に告白した方が早いと。騎士達も下働き達にも一人も漏らさずに諭す事。流石に頬を腫らした者の減額は考慮しますが、一度でも再発したら、皆身に染みます。二度と無くなるでしょう。犯人が判明した日には血の雨が降るでしょうが、バレないからここまで蔓延したのでしょうから」
「……如何します。団長」
「いや、良いとは思うが……アーガソンどうだ? 」
「経理に徹底させれば良いのではないですか? 騎士団的には運営費が貯まるので、私は構いませんよ? 」
副団長は何でも無い事の様に言う。まさかここにも第二の敵が居るなんて。
「……一度で鎮静化するのに賭けて決めるか。良し、至急各部署の部署長と副長を呼べ。治癒術師長にも今だけは手を休めて貰う」
運営費に揺らいだのか兄よ。
素材を購入する程度にしかお金を使う事が無いので(砦内に住んでいる者は家賃光熱費と食費は自動的に引かれている)、私も今のところ給金減額がピンと来ていないけれど、内容の減った給金袋を受け取ったら切ないだろうとは思う。
出来れば、誰もが呪いに頼らないのを願いながら、私は一番立場が下なのに重役会議に出席し、ひたすらお茶を振る舞うのだった。
最初は難色を示していた砦管理部長やその下のメイド長だったが、治癒術師長が呪いが如何に厄介で外道な物なのかを滔々と語り、納得させていた。フェリクス様の見立ての通り、自然に呪いが抜けるのは十日程掛かるらしい。解呪の魔法を使って、それでも六日程掛かる。今回は妖精の数が多く、特に難解らしかった。
今後も重い症状の者が出ないとも限らないとし、一同は納得していた。
重役会議が終わりを迎える頃には、真夜中になっていた。皆を見送り、会議をしていた部屋に兄と副団長、フェリクス様と四人だけになった。
「……お腹が減りました……。フェリクス様、回復薬でも飲みますか? 」
「……薬師はそんな使い方をしているのか? それともリサだけか? 」
「徹夜の時なんかは皆飲んでますけど……? 」
満月や新月の夜に作る薬もあるのでそう答えたら、フェリクス様はそれはそれは信じられないものでも見るかの様な目を向けて来る。
「……リサ、食事はちゃんと取るべきだ。軽い物なら執務室に置いてあるから、夜食にしよう」
それを聞いて喜んで執務室へ移動する。初めて知ったが、執務室の横の壁を挟んで隠れる様に小さな台所が設置してあった。お茶を一々頼むのが面倒だったらしく、魔導焜炉まである。
「パンとチーズぐらいしか無いが、冷たい物を食べるよりはマシだろう」
兄の言葉に同意しつつ、私は早速パンをフライパンで温めて、焦げ目を付ける。皿に移すと、次はチーズを入れて焦げ付かない様に溶かして、パンの上にかけた。とろりとしたチーズが、食欲をそそる。
お茶を沸かして、牛乳と蜂蜜をたっぷり入れれば、お腹も満足する夜食の出来上がりだ。フェリクス様は少し驚きつつ差し出した皿を受け取った。
「リサは料理も出来るのか」
「このぐらいしか出来ないですよ。薬作りに熱中してご飯を食べ損ねたりした時に、食堂をお借りしたりします……いつも薬ばかり飲んでいる訳ではないですよ? その目を辞めて下さい」
またもや疑惑の目で見て来るので、視線を避けつつ着席した。
「リサの手作りを食べる日が来るとはな……」
「兄様、そんな大袈裟な……」
そんな他愛のないやり取りをして、軽い夜食はあっという間に終わってまう。
皿を片付けようかと立ち上がろうとすると、フェリクス様が手で制した。そして代わりに自身が立ち上がる。何が始まるのかと驚いて様子を見れば、
「この度は妹君を危険に晒して、誠に申し訳ない」
彼は兄に向かって、深々と頭を下げたのだ。
「……先刻謝罪は受けた筈ですが」
「これは、親族である貴方に向けてです。それと、リサ。呪いを受けて不安だっただろう、すまなかった」
「辞めて下さい! 」
私は思わず立ち上がった。そしてぐいぐいと彼を起こそうと下から肩を押す。何故か辞めさせないとと必死になった。この気持ちを説明出来ないが、こんなのは求めていないのだけは分かる。
「結果呪いは掛かっていません! 蔓延しているまじないはきっと無くなります! フェリクス様に謝って貰う必要はございません! 頭を上げて下さらないと、もう口を利いてあげません! 」
言い切って、はたと気付いた。なんだ今のは。子供の喧嘩か何かだろうか。私は顔がどんどんと熱くなるのを感じ、両頬を手で隠した。
「……口を効かない……久しぶりに聞いたな」
ぼそりと兄が呟くと、副団長がぶっ! と吹き出した。更に恥ずかしくなって悶えていると、フェリクス様はやっと頭を上げて、私を見つめて来る。それは、何故か驚きを含んでいた。
「……従者を辞めようとは思わないのか。八つ当たりで呪われた様なものだぞ。しかも、あの者の症状を見ただろう。……怖くはないか? 」
「私が辞めたら、誰が貴方様を止めるのですか? 魔力回復薬が作れる私が居た方が便利だし砦内が平和です! 」
「便利とか自分で言うな」
「それに、何だかこう……フェリクス様に頭を下げられる程謝られると気持ちが悪いのです! 」
「言い方……」
「とにかく、私が良いと言ったら良いのです。分かりましたか? これ以上は討論しても無駄です。以上!! 」
そう言うと私はそそくさと皿を集めると、足早にテーブルを後にした。後ろから、兄と副団長の我慢している様なくぐもった笑い声が聞こえた。
けれど、皆が皆妖精が見える訳ではない。
「妖精が見えないのに、呪えるものですか? 」
素朴な疑問を口にすると、フェリクス様は頷いた。
「恐らく、その妖精が喜ぶ儀式が周知されているんだろう。大方、満月の晩に窓辺にお菓子を置くだとかそんな程度だ。味を占めた妖精は楽しんで皆の頬を腫らしていたのだろう」
「傍迷惑な……」
「妖精に良し悪しの概念は無い。常に自分の思うままに動くだけだ。今回はあの女は波長が合い過ぎて聞こえ過ぎたのだ。そして力も強過ぎた。最悪な組み合わせだったのだろう」
最悪な組み合わせで呪われるなんてたまったものではない。しかも実行犯は間違いなくあの魔導師なのに、既に罰は受けているし、何だか巻き込まれたのに置いて行かれた感が拭えずに、何と言うか……このもやもやをどう取り払えば良いのか分からない。
「今回これだけの騒ぎになったのだ。どう対処すれば良いのか……今後もまじないをする者がいないとは言い切れないのだし」
魔導師長が眉間を揉みながら心底疲れた様にぼやいた。確かに、一人一人を監視出来る訳が無いのだ、再発は免れない。
「ああ、それは簡単な事だ。今度原因不明で頬を晴らした者が居れば、騎士団全員の給金を減額すればよいのです」
「え」
「はぁ、なんと」
「勿論、きちんと原因を探り、それが呪いと判明したら、問答無用で減額です。いっそ半額にすれば良いのでは? 連帯責任を押し付けてしまうのです。一度くらいは再発するかも知れませんが、たった五日頬を腫らす為に給金を削る者はそう居ないかと。寧ろ直接殴った方が罪が軽い」
鬼か。それとも悪魔なのか。ここに働く者全ての懐を操作する敵が居る。しかも本人はきっと給金を減額されても痛くも痒くも無いのがまた酷い。
「流石にそれは行き過ぎかと……」
「周知を徹底するのです。呪うより、殴った方が早いと。恋敵を呪うより、想い人に告白した方が早いと。騎士達も下働き達にも一人も漏らさずに諭す事。流石に頬を腫らした者の減額は考慮しますが、一度でも再発したら、皆身に染みます。二度と無くなるでしょう。犯人が判明した日には血の雨が降るでしょうが、バレないからここまで蔓延したのでしょうから」
「……如何します。団長」
「いや、良いとは思うが……アーガソンどうだ? 」
「経理に徹底させれば良いのではないですか? 騎士団的には運営費が貯まるので、私は構いませんよ? 」
副団長は何でも無い事の様に言う。まさかここにも第二の敵が居るなんて。
「……一度で鎮静化するのに賭けて決めるか。良し、至急各部署の部署長と副長を呼べ。治癒術師長にも今だけは手を休めて貰う」
運営費に揺らいだのか兄よ。
素材を購入する程度にしかお金を使う事が無いので(砦内に住んでいる者は家賃光熱費と食費は自動的に引かれている)、私も今のところ給金減額がピンと来ていないけれど、内容の減った給金袋を受け取ったら切ないだろうとは思う。
出来れば、誰もが呪いに頼らないのを願いながら、私は一番立場が下なのに重役会議に出席し、ひたすらお茶を振る舞うのだった。
最初は難色を示していた砦管理部長やその下のメイド長だったが、治癒術師長が呪いが如何に厄介で外道な物なのかを滔々と語り、納得させていた。フェリクス様の見立ての通り、自然に呪いが抜けるのは十日程掛かるらしい。解呪の魔法を使って、それでも六日程掛かる。今回は妖精の数が多く、特に難解らしかった。
今後も重い症状の者が出ないとも限らないとし、一同は納得していた。
重役会議が終わりを迎える頃には、真夜中になっていた。皆を見送り、会議をしていた部屋に兄と副団長、フェリクス様と四人だけになった。
「……お腹が減りました……。フェリクス様、回復薬でも飲みますか? 」
「……薬師はそんな使い方をしているのか? それともリサだけか? 」
「徹夜の時なんかは皆飲んでますけど……? 」
満月や新月の夜に作る薬もあるのでそう答えたら、フェリクス様はそれはそれは信じられないものでも見るかの様な目を向けて来る。
「……リサ、食事はちゃんと取るべきだ。軽い物なら執務室に置いてあるから、夜食にしよう」
それを聞いて喜んで執務室へ移動する。初めて知ったが、執務室の横の壁を挟んで隠れる様に小さな台所が設置してあった。お茶を一々頼むのが面倒だったらしく、魔導焜炉まである。
「パンとチーズぐらいしか無いが、冷たい物を食べるよりはマシだろう」
兄の言葉に同意しつつ、私は早速パンをフライパンで温めて、焦げ目を付ける。皿に移すと、次はチーズを入れて焦げ付かない様に溶かして、パンの上にかけた。とろりとしたチーズが、食欲をそそる。
お茶を沸かして、牛乳と蜂蜜をたっぷり入れれば、お腹も満足する夜食の出来上がりだ。フェリクス様は少し驚きつつ差し出した皿を受け取った。
「リサは料理も出来るのか」
「このぐらいしか出来ないですよ。薬作りに熱中してご飯を食べ損ねたりした時に、食堂をお借りしたりします……いつも薬ばかり飲んでいる訳ではないですよ? その目を辞めて下さい」
またもや疑惑の目で見て来るので、視線を避けつつ着席した。
「リサの手作りを食べる日が来るとはな……」
「兄様、そんな大袈裟な……」
そんな他愛のないやり取りをして、軽い夜食はあっという間に終わってまう。
皿を片付けようかと立ち上がろうとすると、フェリクス様が手で制した。そして代わりに自身が立ち上がる。何が始まるのかと驚いて様子を見れば、
「この度は妹君を危険に晒して、誠に申し訳ない」
彼は兄に向かって、深々と頭を下げたのだ。
「……先刻謝罪は受けた筈ですが」
「これは、親族である貴方に向けてです。それと、リサ。呪いを受けて不安だっただろう、すまなかった」
「辞めて下さい! 」
私は思わず立ち上がった。そしてぐいぐいと彼を起こそうと下から肩を押す。何故か辞めさせないとと必死になった。この気持ちを説明出来ないが、こんなのは求めていないのだけは分かる。
「結果呪いは掛かっていません! 蔓延しているまじないはきっと無くなります! フェリクス様に謝って貰う必要はございません! 頭を上げて下さらないと、もう口を利いてあげません! 」
言い切って、はたと気付いた。なんだ今のは。子供の喧嘩か何かだろうか。私は顔がどんどんと熱くなるのを感じ、両頬を手で隠した。
「……口を効かない……久しぶりに聞いたな」
ぼそりと兄が呟くと、副団長がぶっ! と吹き出した。更に恥ずかしくなって悶えていると、フェリクス様はやっと頭を上げて、私を見つめて来る。それは、何故か驚きを含んでいた。
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「私が辞めたら、誰が貴方様を止めるのですか? 魔力回復薬が作れる私が居た方が便利だし砦内が平和です! 」
「便利とか自分で言うな」
「それに、何だかこう……フェリクス様に頭を下げられる程謝られると気持ちが悪いのです! 」
「言い方……」
「とにかく、私が良いと言ったら良いのです。分かりましたか? これ以上は討論しても無駄です。以上!! 」
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