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めぐ、助けてぇ〜?!
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あの後、直樹君は居酒屋のバイトがあると言って、ペロリとハンバーグセットを食べ終えると、きっちりお代を置いて去ろうとした。ここは私が奢ると言ったのだけれど、頑なに拒否され、仕方なく貰ったお金は葵君が受け取っていた。
「じゃあ、デートにお邪魔してすいませんでした! こんな奴ですけど、宜しくお願いしますね、真奈美さん」
「あ、のっ! だから私達そんなんじゃ」
「直樹にお願いされる筋合い無いから! 早く行かないと遅刻するよ? じゃあ、また休み明けに」
「おう、じゃーなー! 真奈美さんも、また! 」
爽やかな笑顔を見せて、彼は颯爽と去って行ってしまった。
「または無いけどね」
葵君がボソッと言っていたけど、それ私の台詞だからね?! 何も知らない直樹君は勘違いしたまま行ってしまい、胸が痛いわ!! 私は空かさず葵君を睨む。大事な話はまだ終わってはいないのだ。
「……真奈美さん、怖いですよその目つき……」
「私もしたくてしてるんじゃないんだぁ。何でだと思う? 葵君? 」
「えっと……マジで怒ってます? 」
その言葉に私は脱力してしまった。これをどう見て怒ってないと思えるんだ、君は!
「怒らない人は少ないと思うんだぁ。とにかく、私ロリコンとか不名誉な称号欲しくないし、葵君のガールフレンドが何より怖い。関わりたくないの」
「ロリコンって、僕20歳過ぎてますよ?! それに、問題のそれを終息させる為に、お願いしたいんですってば。僕に彼女が居るって分かれば、大人しくなってくれると思うんですよね、彼女達」
「だから何で私ぃ? 私、君に何かした? 店で迷惑掛けたかなぁ? 」
存外に迷惑だと言っているのだけれど、葵君は気付いているのかいないのか困った様に眉尻を下げるだけだ。
「迷惑なんてとんでも無い! 真奈美さんは可愛らしくて良い人だと思うんです」
「煽てれば助けてくれるとでも? 」
「そうは言ってません! でも、きっと最後には助けてくれたと思うんです。例えば、こんな事しなくても、彼女達がお店に迷惑をかけ続けていたら、真奈美さん黙って居られないでしょう? 」
……確かに、酔いに任せて一言二言言いそうでは……ある。
「まあ……多分? 」
私は曖昧に首を傾げてみた。本当のところ、9割方そうに違いないと思っているけど。
「そんな危ない事になる前に潰しておきたかったんです。僕が真奈美さんと仲良くしていても違和感なく、彼女達を追い払えるなら、このぐらいした方が言いかと思って……」
そう言って葵君は困り顔を崩さない。正直その顔は辞めて欲しい。私が虐めてるみたいじゃない!
……それにしても、私どうしてこんなに拘っているのかな?
別に会社で会う訳でもない人達に嘘を流されたって痛くも痒くも無い。
葵君だって相当なイケメンだ。寧ろラッキー! ぐらいの気持ちで居ても良いぐらい。
軽く遊んだって良いじゃないか。清い交際も楽しいかも知れない。
彼女達の事は怖いけれど、あの黒さを隠しもしなかった葵君の事だ。何とかするのだろう、きっと。
「……真奈美さん? 」
黙ってしまった私を不審に思ったのか、葵君が顔を覗いてくる。辞めて! イケメン顔を近付けないで! 周りを気にしてー!
「……葵君」
「はい」
「私何でこんなに怒ってるって言うか、むかむかしてるのかな? 」
「えっ?! ええっと、それは僕が勝手をしたからで……」
「そうだけれど、私、この前の彼氏だって飲み会からの勢いで付き合って直ぐに別れたでしょ? 」
「ええと……はい、聞きました」
「その前にも何となく良いなと思って、付き合って……だから、私の付き合うって凄くハードルが低いと思うんだよね」
「……」
あ、何て答えて良いのか分からなくて困ってる。まあ、いきなりこんな話になったら誰も答え辛いよね。
「葵君はイケメンだし、お店だって頑張ってるし……年下ってのが引っかかってるんだけど、それ以外は鴨葱でしょう? 私達年上女から見たら」
「鴨葱……」
「あ、棚ぼたでも良いよ? 」
「いえ、意味は分かりますから……」
「そう? だからね、私、何でこんな事ぐらいで、怒ってるのかなと自分で自分が良く分からないって言うか……。蔑ろにされたから当然なのかも知れないんだけれど……なんだろ、そう考えたら馬鹿馬鹿しくなって来ちゃった」
「……はあ」
ここで、私は有り得ない事を口にしようとしていた。でも自分でも良く分からないのだ。
「だから、付き合いごっこ。やっても良い」
「あー! 葵君こんな所で何してるのー? 偶然ー! 」
……またなの?! 今日の私は出鼻を挫かれる運勢なの?? そう思って声をした方を睨みつけると、そこには……
「え、て言うか誰ー? 葵君のお姉さん? 」
「あれ、なんか見た事あるっぽくない? 」
ちょっと今時にしては派手めな女の子達が、私達のテーブルの側まで来て見下ろしていた。
……もしかして、過激派の子達じゃないよね?! あれ、この顔触れお店来てたっけ? 興味ないから見てなかったよー!!
まだ答えても無いのに、いきなり最大のピンチじゃない? この状況!! これを回避する為に馬鹿げた事したんだよね、葵君は!?
そう思って葵君を見れば、……今まで見た事も無い程の無表情で彼女達を見つめていた。
こ、怖い……ここでいきなり修羅場は嫌あぁぁっ!! めぐ、助けてぇ~!!
私は居もしないめぐに向かって、心の中助けを求めて叫ぶしか無かった。
「じゃあ、デートにお邪魔してすいませんでした! こんな奴ですけど、宜しくお願いしますね、真奈美さん」
「あ、のっ! だから私達そんなんじゃ」
「直樹にお願いされる筋合い無いから! 早く行かないと遅刻するよ? じゃあ、また休み明けに」
「おう、じゃーなー! 真奈美さんも、また! 」
爽やかな笑顔を見せて、彼は颯爽と去って行ってしまった。
「または無いけどね」
葵君がボソッと言っていたけど、それ私の台詞だからね?! 何も知らない直樹君は勘違いしたまま行ってしまい、胸が痛いわ!! 私は空かさず葵君を睨む。大事な話はまだ終わってはいないのだ。
「……真奈美さん、怖いですよその目つき……」
「私もしたくてしてるんじゃないんだぁ。何でだと思う? 葵君? 」
「えっと……マジで怒ってます? 」
その言葉に私は脱力してしまった。これをどう見て怒ってないと思えるんだ、君は!
「怒らない人は少ないと思うんだぁ。とにかく、私ロリコンとか不名誉な称号欲しくないし、葵君のガールフレンドが何より怖い。関わりたくないの」
「ロリコンって、僕20歳過ぎてますよ?! それに、問題のそれを終息させる為に、お願いしたいんですってば。僕に彼女が居るって分かれば、大人しくなってくれると思うんですよね、彼女達」
「だから何で私ぃ? 私、君に何かした? 店で迷惑掛けたかなぁ? 」
存外に迷惑だと言っているのだけれど、葵君は気付いているのかいないのか困った様に眉尻を下げるだけだ。
「迷惑なんてとんでも無い! 真奈美さんは可愛らしくて良い人だと思うんです」
「煽てれば助けてくれるとでも? 」
「そうは言ってません! でも、きっと最後には助けてくれたと思うんです。例えば、こんな事しなくても、彼女達がお店に迷惑をかけ続けていたら、真奈美さん黙って居られないでしょう? 」
……確かに、酔いに任せて一言二言言いそうでは……ある。
「まあ……多分? 」
私は曖昧に首を傾げてみた。本当のところ、9割方そうに違いないと思っているけど。
「そんな危ない事になる前に潰しておきたかったんです。僕が真奈美さんと仲良くしていても違和感なく、彼女達を追い払えるなら、このぐらいした方が言いかと思って……」
そう言って葵君は困り顔を崩さない。正直その顔は辞めて欲しい。私が虐めてるみたいじゃない!
……それにしても、私どうしてこんなに拘っているのかな?
別に会社で会う訳でもない人達に嘘を流されたって痛くも痒くも無い。
葵君だって相当なイケメンだ。寧ろラッキー! ぐらいの気持ちで居ても良いぐらい。
軽く遊んだって良いじゃないか。清い交際も楽しいかも知れない。
彼女達の事は怖いけれど、あの黒さを隠しもしなかった葵君の事だ。何とかするのだろう、きっと。
「……真奈美さん? 」
黙ってしまった私を不審に思ったのか、葵君が顔を覗いてくる。辞めて! イケメン顔を近付けないで! 周りを気にしてー!
「……葵君」
「はい」
「私何でこんなに怒ってるって言うか、むかむかしてるのかな? 」
「えっ?! ええっと、それは僕が勝手をしたからで……」
「そうだけれど、私、この前の彼氏だって飲み会からの勢いで付き合って直ぐに別れたでしょ? 」
「ええと……はい、聞きました」
「その前にも何となく良いなと思って、付き合って……だから、私の付き合うって凄くハードルが低いと思うんだよね」
「……」
あ、何て答えて良いのか分からなくて困ってる。まあ、いきなりこんな話になったら誰も答え辛いよね。
「葵君はイケメンだし、お店だって頑張ってるし……年下ってのが引っかかってるんだけど、それ以外は鴨葱でしょう? 私達年上女から見たら」
「鴨葱……」
「あ、棚ぼたでも良いよ? 」
「いえ、意味は分かりますから……」
「そう? だからね、私、何でこんな事ぐらいで、怒ってるのかなと自分で自分が良く分からないって言うか……。蔑ろにされたから当然なのかも知れないんだけれど……なんだろ、そう考えたら馬鹿馬鹿しくなって来ちゃった」
「……はあ」
ここで、私は有り得ない事を口にしようとしていた。でも自分でも良く分からないのだ。
「だから、付き合いごっこ。やっても良い」
「あー! 葵君こんな所で何してるのー? 偶然ー! 」
……またなの?! 今日の私は出鼻を挫かれる運勢なの?? そう思って声をした方を睨みつけると、そこには……
「え、て言うか誰ー? 葵君のお姉さん? 」
「あれ、なんか見た事あるっぽくない? 」
ちょっと今時にしては派手めな女の子達が、私達のテーブルの側まで来て見下ろしていた。
……もしかして、過激派の子達じゃないよね?! あれ、この顔触れお店来てたっけ? 興味ないから見てなかったよー!!
まだ答えても無いのに、いきなり最大のピンチじゃない? この状況!! これを回避する為に馬鹿げた事したんだよね、葵君は!?
そう思って葵君を見れば、……今まで見た事も無い程の無表情で彼女達を見つめていた。
こ、怖い……ここでいきなり修羅場は嫌あぁぁっ!! めぐ、助けてぇ~!!
私は居もしないめぐに向かって、心の中助けを求めて叫ぶしか無かった。
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