いきなり異世界転生!?~目覚めて始まる異世界生活~

夜色シアン

文字の大きさ
上 下
15 / 23
二章・魔界ファーステリア編

初代魔王・リィール

しおりを挟む
 十五話

「その方はこの城の主でもあり初代魔王でもある方です。お忘れなき様お願い致します。それではおやすみなさいませ」

 ぺこりと頭を下げた龍人ーードランはその場を後にしその場に残された彼らは各部屋でその日丸々身体を休めました。

 勿論食事も取らねばという事でスクルドが見かけによらず料理を振る舞いその日が終わりました。

 翌日。

「グォオオオオオオオオ!」

 と、どでかいいびきと言いますか、何かの鳴き声と言いますかともかくその鼓膜が破けてしまいそうな音が彼らの耳を刺激し、直ちに夢から覚醒させました。

「うっさい!って確かに朝だから動物の鳴き声で起きるのは良く聞くことだろうけど、そこ龍じゃなくて鳥だろ普通!?」

 驚きで飛び起き廊下に出るとそこにはまるでずっとそこにいたかのような雰囲気を出しているドランが立っていました。

 というのも先程の声はドランの声。ぐっすりと寝ている彼らを起こす為にわざと大きく口を開けて遠吠えのように声を出したのです。

 朝早くからそんな事をやってると普通は近所迷惑と思いますが、陸斗達はここに来たばかりのためこれが魔界の習慣になっていると言うことは全く知りません。

「おはようございます、いかがでしたか?私の鳴き声は」

「ああ、おはようドランーーってさっきのお前の鳴き声なのかよ!?」

「ええ、今回は張り切りましたので」

 直後乃亜と鈴も先程の声で起き、なんの騒ぎなのかとすぐさま陸斗の部屋へとやって来ました。

「おや、皆様お揃いですか」

「……音、でかい、起きた」

「わ、私も耳鳴りする程の音聞こえて起きたんですけど……」

「張り切ったのですが……お気に召さなかったようですね……」

 張り切りすぎて乃亜も鈴も驚いてしまうほど大きな声だと気づいた彼はしょぼんっと悲しげな顔を見せ落ち込んでるのではないかと思うほど雰囲気が暗くなりました。

 しかしなぜ彼がこうなったのか、はたまた先程の声はなんなのかは知らない彼女たちにとって頭の上にクエスチョンマークが幾つも出てしまうほどーーいや、実際はでてないですが、その表現がぴったりと当てはまってしまうほど彼のしょんぼり顔が不思議で仕方がありません。

 そこでこの中で唯一ドランがしょんぼりとしている理由を知っている陸斗は彼女たちにこうなった理由をこと細かく伝えました。

「……なるほど、ありがとう」

「私からもありがとうございます。……でも次は普通に起こしていただければ……」

「私目を許してくれるのですか!流石乃亜ど……いいえ魔王様!」

「その……できれば殿も魔王様もやめて欲しいです。普通に乃亜って呼んでください」

「了解しました。しかし殿だけは妥協できません。乃亜殿は魔王で私達の目上でもありますし……ところで先日も申しあげた通り今日は合わせたい方がいます。なのでお早めの御支度お願い致します」

 とドランが礼儀良く頭を下げつつそう言ってから一時間ほど時が経ち。彼らは魔城を後にしました。

「改めて魔界を見ると平和だな」

 人間が入ってきても決して襲うことも無く、魔物もまるで人のように優しい者が多く、彼等に会う度に歓迎するかの如く挨拶を交わしていました。それも言葉を話せる魔人以外で、かつあの丸く青いスライムですらも目線で挨拶を行うほどでした。

「ここは乃亜殿達からするととても珍しい敵対しない魔界ですのでいつも平和でございます。しかし絶対にという訳ではなく問題もございますし……言うなればここファーステリアは人が住む街と同じかもしれませんね」

「へぇ……って向こうに見えるボロ家は誰か住んでるのか?」

「あれこそ乃亜殿とそのご友人に合わせたい方がいらっしゃる家でございます」

 街から少し離れた先にある丘の上に一つのボロい家を見つけますが、彼等はそこが現在の目的地。とりあえずそこへ向かってしばらく歩き、数分の時を経てようやくたどり着きました。

 遠くから見えていたその家は少し大きく、さらに木造で出来ており、今にも崩れるんじゃないかと思うほどに傷んでいていました。なぜここに家があるのか不思議になってしまいますが、それよりもボロボロなのに平然と建っていられるのが一番不思議です。

「ここに会ってもらいたいお方がいらっしゃいます」

「え、この中にいるのか!?危ないだろ!?」

「……きっとスリル、寒天」

「なぜ食べ物になる……寒天じゃなくて満点な?」

 そんな感想なんて構わずにドランは扉を開けます。

 ギギギと言う木がしなるような嫌な音を立てて扉が開くとその先に一人の幼女……いや少女が元気ありありな顔をして仁王立ちで立っていました。



「うむ、待っておったぞ!そこのドラグニルから聞いておる、お主らが新魔王とその仲間だな!」

 少女は左右のちょこんとした角や尻尾が普通の人ではないと語るほどに目立ち、鮮やかな紅の髪を結んでいる漆黒のリボンが特徴的な可愛らしい少女。

 そんな少女は華麗に光で紫に透ける黒ワンピースをふわりと舞わせたかと思うと、ずいっと彼らに近づいて一人づつ挨拶がわりの握手をします。しかし見かけによらずかなりの力を持っていて腕がちぎれるかと思う程力強く腕を振りました。

 ただ、新魔王となった乃亜にだけは陸斗達よりも大きく更に強く握手を交わします。

「そんなに振らないでください!腕痛いですから!?」

「って合わせたいやつってこんなに小さいやつの事か!?」

「なんと、ドランから我の事聴いとらんのか?」

「初代魔王だってことだけは聞いたがそれ以外はなにも」

「いや、二人とも普通に話する前にこれを止めてくださいぃぃぃ!」

 ずっとぶんぶんと、音がならないばかりに無意識に腕を振っていた少女はまるで正気に戻ったかのようにパッと手を離して話を続けます。

「すまぬつい嬉しくてな。……ではなくドラグニル!なぜ我のことをきちんと伝えぬ!」

「説明してもしきれませんので実際にあった方が早いかと思いまして。お楽しみにさせてもらいました」

「たわけ!お主は何故いつも……っとここで揉めても何も始まらんな。ではお主らに教えてやろう我が名はーー」

「リィール様でございます」

「……ドーラーグーニールー?もしやお主また我を面白がっておるな!?これでも魔王なのだぞ!?」

「今の魔王は乃亜殿でございますよ?」

「ぐっ……確かにそうだが我も魔王の血を引くものだということをだな!……はぁ……もう良い」

 名乗る直前にドランが少女の名を口に出した事で彼女はにっこりと目が笑ってない笑顔で起こりますが正論を言われ反発するのを諦めることに。

 しかし魔王の血を引くと言っても少女ことリィールのその可愛らしい行動からか、はたまた幼き少女の姿をしているからか、まるで魔王という感じは全くと言っていい程感じません。

「我が魔王だと信じておらぬな?ならばーー」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

異世界英雄の学園生活~英雄に休息なんてありません~

パチ朗斗
ファンタジー
魔法が存在する世界リレイリア。その世界には人類の敵である魔王という者が存在した。その魔王はとてつもなく強く、人類は滅亡すると思われた。だが、たった一人の男がいとも容易く魔王を討伐する。その男の名はキョーガ。 魔王討伐という任務を終えたキョーガは自分の元住んでいた世界……"日本"に帰還する。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...