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二章・魔界ファーステリア編
暴走
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ーー魔力暴走の対応は魔力を使い切らせる。もしくは血を流すことだーー
数時間前、リィールは魔力暴走の対処方法。彼女曰くこの方法をもってすれば魔力暴走は収まる……と彼女は言ってました。
「〈終焉ノ刃〉!」
バンッと地面を強く叩くと漆黒かつうっすらとした鮮やかな紅色の小刀を召喚します。
というのも現時点で光線を放つ者の魔力は少なからず尽きることの無い魔力を一時的に所持していると考え、消極的に傷を与え暴走を収める他ありません。
一方で光線を放つ者も先程よりも高火力の光線を放つべくと大きな光線の種の様な光の弾を作り始めたかと思いきや、攻撃する間を与えないようにまた別の光線を次から次へと放ち始めます。
「無詠唱かつ速さを重視した魔法か……だが甘い!」
間を詰められつつあるもののその距離はほぼ二百メートル。その距離を僅か一秒から二秒程で駆け抜ける緑色の光線は普通の人間ならまともに避けることも不可能です。
しかしそれは普通の人間ならの話。現在魔王の力を高ぶらせた初代魔王ならば避けることも、ましてや後ろにいる陸斗達を守る事など容易く、光線の発射と同時に防御魔法を無詠唱で使用し見事無傷の状態を保ちます。
「す……すげぇ……本当に魔王だったんだな……」
「最初からそう言っておる。……さて、こちらも仕掛けるとするか……時間もないしな」
静かくされども豪快に〈終焉ノ刃〉を雲の向こうまで届く程天高く投擲し、たった一言「堕ちろ」という言葉でそれが光線を放つ者に向かって落ちていきます。
それも一本しか投げていないというのに数百もの刃が雨のように降り注ぎました。
そして光線を放つ者が何故か“防御もせず全て食らった”後のことでした。
その場に鮮やかな紅色の“華”が広がりつつ咲き誇り、初代魔王魔王の立派な角や髪、呼び出した刃が燃え盛っている業火の如く更に紅く変化し始めたのです。
「……もう終わりか?つまらぬ……さて次はお主か?それともお主か?」
変化が止まると共にいつになく殺気に満ちた雰囲気のリィールが踵を返して唖然としていた陸斗達を鋭い目付きで睨み付けます。
それに留まらず展開していた防御魔法も解き、強烈な殺気とともに彼らに近づいて行き。
「名乗り出ぬのなら我が指名しよう……お主、我の血肉の糧となれ」
「……おいおいおい!本気で言ってるのかリィール!」
「我の名を容易く呼ぶな、して、相手をしてくれるのか?勿論拒否は許さんが」
「……陸斗、それリィール、違う……やるしかない」
「ほう?貴様は物わかりが良いな。ならば貴様も一緒に来い。先程のやつにこやつだけじゃ物足りぬしな」
気高き魔王のような凛とした話し方に、まるで友人になった陸斗達を忘れたかのような言い方と、どうやら先程までのリィールとは全く別人の何かが彼女を支配しているような不思議な感覚が彼らを襲います。
「本当にどうしたんだよ!お前は友達をそんな簡単に殺すとかできるやつなのかよ!」
「友達?ハッそんなもの我には要らん。我は……我は血を、肉を、人間の死を求むそれだけだ。それに貴様と話していると変な気持ちが襲う……あぁ、目障りだ……貴様は一刻も早く殺さねばならぬな!〈終焉の双刃〉!」
「本当にやらないとダメなのかよ……くそっ!」
魔王だと言いつつもいい人だと思っていたからこそ、彼は剣を抜くことに抵抗が生じることとなりますが、彼女のとてつもない殺気で剣を抜かねば死ぬと悟ると嫌々ながらシェラから貰った剣を引き抜ーーけませんでした。
いや正しくはその貰った剣を、あろう事か魔城リンドヴルムで宿泊した際に置いてきてしまったのです。
「どうしよう鈴……剣忘れてきた……」
「…………馬鹿、阿呆、マヌケ……ドラン、支度して、言った。もう一度言う、馬鹿」
「仕方ないだろ!?まさか戦うなんて思ってもなかったし話するだけだと思ったからな!?」
忘れた理由は明白でした。というのも彼が一番その理由を知っているわけですが、つまるところ“油断”というものです。
外には魔物がいるというのにリィールと話すだけだと油断した結果こうなってしまったのです。
その結果、様子がおかしくなったリィールですら呆れてしまっていました。
「………………はぁ、貴様は本当の馬鹿だ。剣を忘れ命を落とすこととなるとはな……仕方ない、せめてもの救いだ、遺言はあるか?」
ジャキっと呼び出した二つの刃〈終焉の双刃〉を今にも突き刺すかのように彼に切っ先を向けその言葉を発しました。
数時間前、リィールは魔力暴走の対処方法。彼女曰くこの方法をもってすれば魔力暴走は収まる……と彼女は言ってました。
「〈終焉ノ刃〉!」
バンッと地面を強く叩くと漆黒かつうっすらとした鮮やかな紅色の小刀を召喚します。
というのも現時点で光線を放つ者の魔力は少なからず尽きることの無い魔力を一時的に所持していると考え、消極的に傷を与え暴走を収める他ありません。
一方で光線を放つ者も先程よりも高火力の光線を放つべくと大きな光線の種の様な光の弾を作り始めたかと思いきや、攻撃する間を与えないようにまた別の光線を次から次へと放ち始めます。
「無詠唱かつ速さを重視した魔法か……だが甘い!」
間を詰められつつあるもののその距離はほぼ二百メートル。その距離を僅か一秒から二秒程で駆け抜ける緑色の光線は普通の人間ならまともに避けることも不可能です。
しかしそれは普通の人間ならの話。現在魔王の力を高ぶらせた初代魔王ならば避けることも、ましてや後ろにいる陸斗達を守る事など容易く、光線の発射と同時に防御魔法を無詠唱で使用し見事無傷の状態を保ちます。
「す……すげぇ……本当に魔王だったんだな……」
「最初からそう言っておる。……さて、こちらも仕掛けるとするか……時間もないしな」
静かくされども豪快に〈終焉ノ刃〉を雲の向こうまで届く程天高く投擲し、たった一言「堕ちろ」という言葉でそれが光線を放つ者に向かって落ちていきます。
それも一本しか投げていないというのに数百もの刃が雨のように降り注ぎました。
そして光線を放つ者が何故か“防御もせず全て食らった”後のことでした。
その場に鮮やかな紅色の“華”が広がりつつ咲き誇り、初代魔王魔王の立派な角や髪、呼び出した刃が燃え盛っている業火の如く更に紅く変化し始めたのです。
「……もう終わりか?つまらぬ……さて次はお主か?それともお主か?」
変化が止まると共にいつになく殺気に満ちた雰囲気のリィールが踵を返して唖然としていた陸斗達を鋭い目付きで睨み付けます。
それに留まらず展開していた防御魔法も解き、強烈な殺気とともに彼らに近づいて行き。
「名乗り出ぬのなら我が指名しよう……お主、我の血肉の糧となれ」
「……おいおいおい!本気で言ってるのかリィール!」
「我の名を容易く呼ぶな、して、相手をしてくれるのか?勿論拒否は許さんが」
「……陸斗、それリィール、違う……やるしかない」
「ほう?貴様は物わかりが良いな。ならば貴様も一緒に来い。先程のやつにこやつだけじゃ物足りぬしな」
気高き魔王のような凛とした話し方に、まるで友人になった陸斗達を忘れたかのような言い方と、どうやら先程までのリィールとは全く別人の何かが彼女を支配しているような不思議な感覚が彼らを襲います。
「本当にどうしたんだよ!お前は友達をそんな簡単に殺すとかできるやつなのかよ!」
「友達?ハッそんなもの我には要らん。我は……我は血を、肉を、人間の死を求むそれだけだ。それに貴様と話していると変な気持ちが襲う……あぁ、目障りだ……貴様は一刻も早く殺さねばならぬな!〈終焉の双刃〉!」
「本当にやらないとダメなのかよ……くそっ!」
魔王だと言いつつもいい人だと思っていたからこそ、彼は剣を抜くことに抵抗が生じることとなりますが、彼女のとてつもない殺気で剣を抜かねば死ぬと悟ると嫌々ながらシェラから貰った剣を引き抜ーーけませんでした。
いや正しくはその貰った剣を、あろう事か魔城リンドヴルムで宿泊した際に置いてきてしまったのです。
「どうしよう鈴……剣忘れてきた……」
「…………馬鹿、阿呆、マヌケ……ドラン、支度して、言った。もう一度言う、馬鹿」
「仕方ないだろ!?まさか戦うなんて思ってもなかったし話するだけだと思ったからな!?」
忘れた理由は明白でした。というのも彼が一番その理由を知っているわけですが、つまるところ“油断”というものです。
外には魔物がいるというのにリィールと話すだけだと油断した結果こうなってしまったのです。
その結果、様子がおかしくなったリィールですら呆れてしまっていました。
「………………はぁ、貴様は本当の馬鹿だ。剣を忘れ命を落とすこととなるとはな……仕方ない、せめてもの救いだ、遺言はあるか?」
ジャキっと呼び出した二つの刃〈終焉の双刃〉を今にも突き刺すかのように彼に切っ先を向けその言葉を発しました。
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