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一章・追放編
相棒
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六話
それからは何も無く数分経って、食事を終えた彼らは鈴に本題となる話を持ちかけます。
ちなみに鈴は短時間で、二十皿の大盛り料理食べ終わってました。まさに飲食店泣かせです。
「ところで鈴は相棒いないのか?」
「……相棒?……いない」
「なら、同じニホンから来たもの同士、天城の相棒にならないか?……いや、これを逃すと天城の相棒はもう見つからないだろうし決定だな」
勝手に決められました。本人の意思なんて彼は受け付けないようです。どう考えてもいい迷惑です。
「ってちょっと待て、まず何で相棒を決めないといけないんだ?」
「それは長くなるけどいいのか?……本当にいいのか?本当に!?」
「何度も確認しなくていいから!?」
必要以上に確認してきましたが、相棒を作る理由を聞かなくてはまず話になりません。そのため何度も確認して来る彼に説明を迫ります。
「はぁ、本当は説明が面倒くさいんだがな……」
「おい」
どうやら何度も確認したのは説明するのがとても面倒で避けたかったためのようです。だからといって説明を聞き逃すと相棒を作る理由が分からなくなります。なので早く理由を教えろと言い迫ることでようやく話が進みました。
「……この世界には魔物がいるんだ。勿論手馴れなら大体のやつは一人で狩ることもできる。だが、天城みたいに初めて魔物と戦うとなると一人じゃ危ないって事で国が定めたんだ。一人より二人、二人より三人。数が揃えば死者は減るってな」
「……それだと相棒より、パーティーが、正しい。それに、私は、一人でやった」
「まぁ、無理強いはしてないから定めても一人で行く奴もいるわな。てことでこんな感じだ理由は」
説明に疲れたと言わんばかりにセルフの水をコップ一杯飲み干し短く溜息をつきます。
しかしながら、確かに相棒を作る理由は今ので十分ですが、勝手に相棒にした理由は述べていません。
「理由はわかったけど、勝手に相棒を決める理由を教えろよ!?俺と鈴の意見もあるだろ!?」
「まぁ、確かに勝手に決めたのは悪かったが、同じ所の出身なら相棒に向いてると思っただけだ。で、鈴はどうなんだ?」
「……私で、いいなら、相棒、いいよ」
鈴はあっさりと承諾しました。疑問などは抱かないどころか、否定もしませんでした。
というかそんなのでいいのでしょうか?相棒になれば、相棒としての責任というものもありますし、第一ずっと相棒としている可能性もあります。
「だからってーー」
やはり鈴が認めたことに引っかかってしまい、その場でちょっとした言い争いが始まろうとしていましたが、陸斗の言葉を遮ってマスターと呼ばれてるスキンヘッドの男は言葉を発します。
「まぁまぁ、この世の中何が起こるかわからねぇ、だったら自分の背中を守ってくれる奴がいたら助かるだろう? まあ嫌ってんなら断ってもかなわねぇ。それに強制的とも言ってねぇし、パーティー感覚でしばらく付き合ってみて、その後に決めることだってできる。そうだろ?」
「あぁ、国が定めたと言っても王が推薦してるだけで、強制的とは言ってないからな。でも二人一組になって損は無いと思うぞ?」
店内で喧嘩されては客が集まらないからと思って喋ったのでしょう。
それに彼の、マスターの言葉はどうも説得力が高く、返す言葉が全くありません。更にはディベントも陸斗の方を見て「どうするんだ?」と伺いを立て始めたため、彼はとうとう決断することとなります。
「……わかったわかった、そこまで言うなら相棒になってやるよ!俺は天城陸斗、これからよろしくな鈴」
「……よろしく、陸斗」
互いの意思を確認した所で握手をかわして、本当に二人一組の相棒というパーティーが成立しました。
その後会計を済ませ、店から出ると。
「よし、天城の相棒も決まったことだし、俺は帰るな」
ディベントは何処かへと走り出していました。
彼は足が速く一、二分で五百メートル程遠くまで行き……というかもはや豆粒のようにしか見えないほど距離を離していました。
急なことで陸斗は呆然となってましたが、鈴はまるで見慣れていーーいや、彼女はいつも無表情のため、内心呆然としています。ただ単にそれを外には出さず手を振っていました。
その後彼女は陸斗を見て質問していました。
「……そういえば、陸斗、魔物見たことーー」
「ーーないな。てか本当にいたんだな」
当たり前な返事でした。来たばかりの為魔物なんて見たこともありません。まあゲームなどで魔物はよくみるからこそ、この世界にもいるとは思っていたのですが、本当にいるとは思いもしないようです。
「……私、ここ来て、一年、経つ……でも、スライムとか、弱いのしか、見てない」
「え、一年もこの世界に?」
「……まあ」
と言葉を発してから、踵を返し、それと同時に後ろで一本に束ねた細い髪が宙に浮きました。
そして彼の顔を見てからついて来てと彼女は独特な口調で発言し、歩き出します。
ご飯を食べてから少し時間がたっているからか、それともこの世界での昼間の時間帯だからか広場に人混みができており彼は逸れないよう必死について行きました。
ーー暫くついていくとあまり人が通らないような場所……というか、ガラの悪い人がたむろしてそうな路地裏を通って行きます。
「……ん、着いた」
それからまもなくして、剣や槍などが箱に入れられたものが置いてある一つの店にだどりつきました。近くには看板が立てかけてあり、その看板には飲食店同様、この世界の文字でシェラ武具店と書かれていました。
その店の隣には“シェラ工房/修復屋”と書かれた看板があり、それが示すのは、隣のむき出しになった部屋のことを指しているようでした。
外から見える修復屋は、金床など鍛冶に必要な道具がおかれている工房で、看板を見ずとも工房だと見て取れるほど立派なもの。
「で、何で武具店?」
「……魔物、戦う」
「はぁ⁉︎魔物と戦う!?」
「‥‥‥魔物、倒せない、稼げない」
「な、なるほどな」
この世界では魔物を倒し街に貢献することでこの世界の通貨が貰え、生活しています。
ただこれはお店を持たない人、仕事がない人が主にすることでお店を持つ人はもちろん魔物を倒さなくても生計を立てることができます。
勿論彼らはお店を持っていないため、魔物を倒して貢献し生活していかなくてはなりません。故に武器が必要だと言って彼女はここに連れてきたのです。
そして扉を開け店に入ると、チリーンと客が来たことを伝える鈴が鳴ったのと同時に、槍や剣、斧などの武器がずらっと並んでいるのが直ぐに目につきました。鎧も多少ながら並んでいます。さすが武具屋といったところでしょうか?
「あ、鈴、いらっしゃーーって、鈴が男連れてる!……ははーん、もしかして彼?彼氏なの!?」
「……違う」
並べられた武器に見とれていると、奥から店員が出て来ました。恐らく扉についた鈴が鳴った為出てきたのでしょう。
その人はつなぎのような服を着ていますが、上を脱いでいて、それの袖と袖を腰に結びつけています。その為上着の下に着ていたであろう黒い染みがかなり目立つ薄着の白い服が露わになっていました。
また、女性特有の膨らみがあり、スタイルもよく、見ただけで女性とわかります。それに顔立ちも整っており、赤みがかった短めの髪と透き通った紅い瞳が特徴的で遠くから見ても美人とわかるほどに綺麗でした。
ーーただ彼女はなぜか左目だけ閉じていました。
「またまたぁー、隠しても無・駄・よ!」
「……違う、あんまり言うと、怒る」
「なあ、話の最中悪いんだが……誰?」
そのままほっとくと喧嘩が始まりそうだったので陸斗はその会話を止めてから彼女のことを聞きました。
「……この人はーー」
「あ、初めまして!私はシェラ・グライヴ。この武具店と隣の工房の店長をしてるんだ!といっても店員は私だけなんだけどね。とりあえずよろしく、鈴の彼氏さーー」
その瞬間、鈴は杖をどこからか取り出してシェラと名乗った人の頭を思いっきり殴っていました。
その時の鈴の目は殺気に満ちている様な冷たい目線……いえ、いつも無表情でしたが、今回は完全に殺気というオーラが出ていました。
勿論シェラは頭から血を出してしまいます。
「っておい!何で殴ってんの!?」
「……馬鹿なこと、言ったから」
「いやいや、そういう問題かよ⁉︎」
それでも大丈夫、と彼女は言い杖をしまいます。しかしながらどこにしまっているのかは全くわかりません。なぜなら一瞬にして杖が消えるのですから。
シェラの方を見ると結構鈍い音がしたのにも関わらず、普通に見れば大丈夫ではないのに平気な顔をしています。
「冗談で言ったのに殴るなんて酷いなぁー……で私の店に何用かな?いつもの?」
「……違う……この人、合う武器、探す」
「あーなるほど、“私の目”にご用ね」
つなぎのポケットからハンカチを取り出して流れた血を拭い、閉じていた左目をゆっくりと開きました。
その瞳は右目とは違って紅くはなく、とても印象強い金色に輝いた瞳でした。そんな瞳で陸斗の事をジッと見つめています。
「な、何で俺を見てるんだ?」
と鈴に聞きますが、見ててと言わないばかりに何も言わず、結果を待ちました。
「ーーこれは神の……なるほどね……陸斗は瞬発力が結構あるね。接近型だから剣系統が合いそうだね」
少しの間見つめられてるとシェラは陸斗の名前を口に出していました。もちろん彼は自身のことをまだ言ってません。なのにまるで今までのことを知っているかのように名前などを言い当ててました。
「……って、俺まだ名前言ってないよな!?」
「あぁ、私の左目は右目とは違う色してるでしょ?オッドアイって言うらしいけど、これ生まれつきでね。この目を通して見たものは大体わかるんだ」
「……だから、一部の人は、変態、言う」
「変態言わないの!そもそも変態じゃないよ!」
絶対……とは言いませんが一部の人と言うのは鈴のことでしょう。ただ喧嘩するほど仲がいいと言いますし、このやり取りから察するに一年前から知り合いなのは明らかです。
まだ彼女たちは変態という一言で言い争っていましたが、左目を閉じ直ぐに話を戻します。
「話がそれたね、えーと……そうだなぁ」
そう言うと飾られている武器を……剣系統で、二つ。一つはよく切れそうな刃が短く付いた短剣、そしてもう一つは長剣を持ってきました。
「武器っていうのは暫くは使うものだし、陸斗は慎重にどっちか選んで、そのあと早速作業にとりかかるかな」
「この二つからか……てか絶対持たないといけないのか?」
「……絶対、持つ、じゃないと、死」
「マジか……」
それからは何も無く数分経って、食事を終えた彼らは鈴に本題となる話を持ちかけます。
ちなみに鈴は短時間で、二十皿の大盛り料理食べ終わってました。まさに飲食店泣かせです。
「ところで鈴は相棒いないのか?」
「……相棒?……いない」
「なら、同じニホンから来たもの同士、天城の相棒にならないか?……いや、これを逃すと天城の相棒はもう見つからないだろうし決定だな」
勝手に決められました。本人の意思なんて彼は受け付けないようです。どう考えてもいい迷惑です。
「ってちょっと待て、まず何で相棒を決めないといけないんだ?」
「それは長くなるけどいいのか?……本当にいいのか?本当に!?」
「何度も確認しなくていいから!?」
必要以上に確認してきましたが、相棒を作る理由を聞かなくてはまず話になりません。そのため何度も確認して来る彼に説明を迫ります。
「はぁ、本当は説明が面倒くさいんだがな……」
「おい」
どうやら何度も確認したのは説明するのがとても面倒で避けたかったためのようです。だからといって説明を聞き逃すと相棒を作る理由が分からなくなります。なので早く理由を教えろと言い迫ることでようやく話が進みました。
「……この世界には魔物がいるんだ。勿論手馴れなら大体のやつは一人で狩ることもできる。だが、天城みたいに初めて魔物と戦うとなると一人じゃ危ないって事で国が定めたんだ。一人より二人、二人より三人。数が揃えば死者は減るってな」
「……それだと相棒より、パーティーが、正しい。それに、私は、一人でやった」
「まぁ、無理強いはしてないから定めても一人で行く奴もいるわな。てことでこんな感じだ理由は」
説明に疲れたと言わんばかりにセルフの水をコップ一杯飲み干し短く溜息をつきます。
しかしながら、確かに相棒を作る理由は今ので十分ですが、勝手に相棒にした理由は述べていません。
「理由はわかったけど、勝手に相棒を決める理由を教えろよ!?俺と鈴の意見もあるだろ!?」
「まぁ、確かに勝手に決めたのは悪かったが、同じ所の出身なら相棒に向いてると思っただけだ。で、鈴はどうなんだ?」
「……私で、いいなら、相棒、いいよ」
鈴はあっさりと承諾しました。疑問などは抱かないどころか、否定もしませんでした。
というかそんなのでいいのでしょうか?相棒になれば、相棒としての責任というものもありますし、第一ずっと相棒としている可能性もあります。
「だからってーー」
やはり鈴が認めたことに引っかかってしまい、その場でちょっとした言い争いが始まろうとしていましたが、陸斗の言葉を遮ってマスターと呼ばれてるスキンヘッドの男は言葉を発します。
「まぁまぁ、この世の中何が起こるかわからねぇ、だったら自分の背中を守ってくれる奴がいたら助かるだろう? まあ嫌ってんなら断ってもかなわねぇ。それに強制的とも言ってねぇし、パーティー感覚でしばらく付き合ってみて、その後に決めることだってできる。そうだろ?」
「あぁ、国が定めたと言っても王が推薦してるだけで、強制的とは言ってないからな。でも二人一組になって損は無いと思うぞ?」
店内で喧嘩されては客が集まらないからと思って喋ったのでしょう。
それに彼の、マスターの言葉はどうも説得力が高く、返す言葉が全くありません。更にはディベントも陸斗の方を見て「どうするんだ?」と伺いを立て始めたため、彼はとうとう決断することとなります。
「……わかったわかった、そこまで言うなら相棒になってやるよ!俺は天城陸斗、これからよろしくな鈴」
「……よろしく、陸斗」
互いの意思を確認した所で握手をかわして、本当に二人一組の相棒というパーティーが成立しました。
その後会計を済ませ、店から出ると。
「よし、天城の相棒も決まったことだし、俺は帰るな」
ディベントは何処かへと走り出していました。
彼は足が速く一、二分で五百メートル程遠くまで行き……というかもはや豆粒のようにしか見えないほど距離を離していました。
急なことで陸斗は呆然となってましたが、鈴はまるで見慣れていーーいや、彼女はいつも無表情のため、内心呆然としています。ただ単にそれを外には出さず手を振っていました。
その後彼女は陸斗を見て質問していました。
「……そういえば、陸斗、魔物見たことーー」
「ーーないな。てか本当にいたんだな」
当たり前な返事でした。来たばかりの為魔物なんて見たこともありません。まあゲームなどで魔物はよくみるからこそ、この世界にもいるとは思っていたのですが、本当にいるとは思いもしないようです。
「……私、ここ来て、一年、経つ……でも、スライムとか、弱いのしか、見てない」
「え、一年もこの世界に?」
「……まあ」
と言葉を発してから、踵を返し、それと同時に後ろで一本に束ねた細い髪が宙に浮きました。
そして彼の顔を見てからついて来てと彼女は独特な口調で発言し、歩き出します。
ご飯を食べてから少し時間がたっているからか、それともこの世界での昼間の時間帯だからか広場に人混みができており彼は逸れないよう必死について行きました。
ーー暫くついていくとあまり人が通らないような場所……というか、ガラの悪い人がたむろしてそうな路地裏を通って行きます。
「……ん、着いた」
それからまもなくして、剣や槍などが箱に入れられたものが置いてある一つの店にだどりつきました。近くには看板が立てかけてあり、その看板には飲食店同様、この世界の文字でシェラ武具店と書かれていました。
その店の隣には“シェラ工房/修復屋”と書かれた看板があり、それが示すのは、隣のむき出しになった部屋のことを指しているようでした。
外から見える修復屋は、金床など鍛冶に必要な道具がおかれている工房で、看板を見ずとも工房だと見て取れるほど立派なもの。
「で、何で武具店?」
「……魔物、戦う」
「はぁ⁉︎魔物と戦う!?」
「‥‥‥魔物、倒せない、稼げない」
「な、なるほどな」
この世界では魔物を倒し街に貢献することでこの世界の通貨が貰え、生活しています。
ただこれはお店を持たない人、仕事がない人が主にすることでお店を持つ人はもちろん魔物を倒さなくても生計を立てることができます。
勿論彼らはお店を持っていないため、魔物を倒して貢献し生活していかなくてはなりません。故に武器が必要だと言って彼女はここに連れてきたのです。
そして扉を開け店に入ると、チリーンと客が来たことを伝える鈴が鳴ったのと同時に、槍や剣、斧などの武器がずらっと並んでいるのが直ぐに目につきました。鎧も多少ながら並んでいます。さすが武具屋といったところでしょうか?
「あ、鈴、いらっしゃーーって、鈴が男連れてる!……ははーん、もしかして彼?彼氏なの!?」
「……違う」
並べられた武器に見とれていると、奥から店員が出て来ました。恐らく扉についた鈴が鳴った為出てきたのでしょう。
その人はつなぎのような服を着ていますが、上を脱いでいて、それの袖と袖を腰に結びつけています。その為上着の下に着ていたであろう黒い染みがかなり目立つ薄着の白い服が露わになっていました。
また、女性特有の膨らみがあり、スタイルもよく、見ただけで女性とわかります。それに顔立ちも整っており、赤みがかった短めの髪と透き通った紅い瞳が特徴的で遠くから見ても美人とわかるほどに綺麗でした。
ーーただ彼女はなぜか左目だけ閉じていました。
「またまたぁー、隠しても無・駄・よ!」
「……違う、あんまり言うと、怒る」
「なあ、話の最中悪いんだが……誰?」
そのままほっとくと喧嘩が始まりそうだったので陸斗はその会話を止めてから彼女のことを聞きました。
「……この人はーー」
「あ、初めまして!私はシェラ・グライヴ。この武具店と隣の工房の店長をしてるんだ!といっても店員は私だけなんだけどね。とりあえずよろしく、鈴の彼氏さーー」
その瞬間、鈴は杖をどこからか取り出してシェラと名乗った人の頭を思いっきり殴っていました。
その時の鈴の目は殺気に満ちている様な冷たい目線……いえ、いつも無表情でしたが、今回は完全に殺気というオーラが出ていました。
勿論シェラは頭から血を出してしまいます。
「っておい!何で殴ってんの!?」
「……馬鹿なこと、言ったから」
「いやいや、そういう問題かよ⁉︎」
それでも大丈夫、と彼女は言い杖をしまいます。しかしながらどこにしまっているのかは全くわかりません。なぜなら一瞬にして杖が消えるのですから。
シェラの方を見ると結構鈍い音がしたのにも関わらず、普通に見れば大丈夫ではないのに平気な顔をしています。
「冗談で言ったのに殴るなんて酷いなぁー……で私の店に何用かな?いつもの?」
「……違う……この人、合う武器、探す」
「あーなるほど、“私の目”にご用ね」
つなぎのポケットからハンカチを取り出して流れた血を拭い、閉じていた左目をゆっくりと開きました。
その瞳は右目とは違って紅くはなく、とても印象強い金色に輝いた瞳でした。そんな瞳で陸斗の事をジッと見つめています。
「な、何で俺を見てるんだ?」
と鈴に聞きますが、見ててと言わないばかりに何も言わず、結果を待ちました。
「ーーこれは神の……なるほどね……陸斗は瞬発力が結構あるね。接近型だから剣系統が合いそうだね」
少しの間見つめられてるとシェラは陸斗の名前を口に出していました。もちろん彼は自身のことをまだ言ってません。なのにまるで今までのことを知っているかのように名前などを言い当ててました。
「……って、俺まだ名前言ってないよな!?」
「あぁ、私の左目は右目とは違う色してるでしょ?オッドアイって言うらしいけど、これ生まれつきでね。この目を通して見たものは大体わかるんだ」
「……だから、一部の人は、変態、言う」
「変態言わないの!そもそも変態じゃないよ!」
絶対……とは言いませんが一部の人と言うのは鈴のことでしょう。ただ喧嘩するほど仲がいいと言いますし、このやり取りから察するに一年前から知り合いなのは明らかです。
まだ彼女たちは変態という一言で言い争っていましたが、左目を閉じ直ぐに話を戻します。
「話がそれたね、えーと……そうだなぁ」
そう言うと飾られている武器を……剣系統で、二つ。一つはよく切れそうな刃が短く付いた短剣、そしてもう一つは長剣を持ってきました。
「武器っていうのは暫くは使うものだし、陸斗は慎重にどっちか選んで、そのあと早速作業にとりかかるかな」
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