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二章・魔界ファーステリア編
友達
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十六話
「ならばとっておきのものを見せてやろう……暗き淵に立つ黒き命は渾沌の世界に降りたちて光を闇に、希望を絶望に、全を虚無に塗りつぶす……〈漆黒堕落者ノ暴食〉!空腹という絶望を味わうが良い!」
「地味な黒魔法だな!?」
魔王の威厳を保つためにと唱えた魔法は、ただ相手をまるで三日以上何も食べてないと思う程に空腹に襲わせ、餓死へと誘う本当に地味な黒魔法。ですが実際にこの魔法で餓死した人はいないほど成功率はゼロに近い魔法のため、勿論といっていいほど彼等に何かしらの影響はありませんでした。
「じ、地味でないわ!手加減したのだ手加減!このような魔法でぽっくり行かれては困るからな!」
「かなりの確率で失敗する魔法だから手加減なんて要らないだろ?」
「す、スクルド!?お、お主いつから……って余計なことはいわんで良い!」
陸斗達の後ろから声がし振り向くと、この家に来る時はいなかったスクルドが大きな荷物を持ってそこに居ました。
勿論、彼等に近づいてくる際に足音が鳴っていましたが陸斗達はリィールの低確率の魔法に気を取られ気づくことなく、ましてやリィールはスクルドがガタイがでかいのにも関わらず普通に気づかなかったようです。
「で結局の所その初代魔王が俺らに会いたいってなんでだ?」
「あぁ、それはお主らに頼みたいことがあって呼んだのだ」
「頼みたいこと……家の中で一人きり……あーなるほど、もしかして寂しいから俺らと友達にでもなって欲しいってことか?」
「うむ、そうじゃ。我は友達が少なくて寂しくて寂しくて……って、たわけ!そんなことではないわ!……ま、まぁお主らがどうしても名誉たかき我と友達になりたいと言うならば?友達になってやらんこともないがなっ!」
そう言ってそっぽを向き、同時に赤い髪が揺れました。横から覗く顔には少し赤みがあり、横目ながらもチラッっと何回も何回も陸斗たちを見ています。
言っていることとやっている事が矛盾してなくもないですが、こう見えてリィールは友人という存在がいなく、また無意識に強気なことを言って後々後悔するツンデレ。だからこそぷいっとそっぽを向いても彼らのことを気にしているのです。
しかし、リィールは彼らが発した期待外れな思ってもいない言葉を耳にして呆気なく心を折られることに。
「なら遠慮する」
「……友達、なりたくない」
「いや二人とも冗談ですよね!?可哀想……というか泣きそうですよ!?と言うか泣いちゃってますよ!?」
「……お、おお、おぬ、お主ら……それでも人の子かぁぁぁぁぁ!!」
元々リィールは魔王。だからこそかあまり街の人と関わることがなく過ごしている為友人が少なく、実の所これを機に陸斗達と友人になりたいと彼女は思っています。
ですがなにかと強気にかつツンツンしてしまうのが元魔王リィール。故に「友達になる」というたった一言が遠回しに伝えようとしてしまうのです。まあその結果、乃亜以外の二人から発せられた冗談を真に受け涙を流してしまうのですが。
「わ、悪い悪い冗談だって!友達が欲しいんだろ?」
「……おなじ冗談。でも、陸斗、獣、友達オススメしない」
「何吹き込んでんだよ!?」
「ひぐっ……ま、まあそれでもどうしてもという事だ、仕方ない友達になってやろう……」
リィールは元魔王に似合わない涙を未だに流しますが、それでもなお強気な性格と言葉を突き通し、未だに流れる涙を拭いました。
というかリィールが泣いたのにも関わらず、ドランとスクルドはただただ見てるだけ……案外この二人とリィールの関係はそうでもないのかも知れません。
いや、実際の所リィールとドラン、スクルドは上司部下という立場の為ドラン達は心配するのが自然的なのですが、彼女は元魔王。元魔王といえど一人の魔王。その威厳を守るためあえて心配せずただ見守っていたのです。
「俺は陸斗、一応言っておくが獣じゃないからな」
「……鈴、よろしく」
「私は乃亜です!よろしくお願いします!」
「の、乃亜は知っておる……だが皆よろしくな……」
ーーそれから数分後。リィールの涙の勢いは完全に止まり、ようやく彼女が本当に彼等に頼みたいといっていた本題へと入りました。
「ならばとっておきのものを見せてやろう……暗き淵に立つ黒き命は渾沌の世界に降りたちて光を闇に、希望を絶望に、全を虚無に塗りつぶす……〈漆黒堕落者ノ暴食〉!空腹という絶望を味わうが良い!」
「地味な黒魔法だな!?」
魔王の威厳を保つためにと唱えた魔法は、ただ相手をまるで三日以上何も食べてないと思う程に空腹に襲わせ、餓死へと誘う本当に地味な黒魔法。ですが実際にこの魔法で餓死した人はいないほど成功率はゼロに近い魔法のため、勿論といっていいほど彼等に何かしらの影響はありませんでした。
「じ、地味でないわ!手加減したのだ手加減!このような魔法でぽっくり行かれては困るからな!」
「かなりの確率で失敗する魔法だから手加減なんて要らないだろ?」
「す、スクルド!?お、お主いつから……って余計なことはいわんで良い!」
陸斗達の後ろから声がし振り向くと、この家に来る時はいなかったスクルドが大きな荷物を持ってそこに居ました。
勿論、彼等に近づいてくる際に足音が鳴っていましたが陸斗達はリィールの低確率の魔法に気を取られ気づくことなく、ましてやリィールはスクルドがガタイがでかいのにも関わらず普通に気づかなかったようです。
「で結局の所その初代魔王が俺らに会いたいってなんでだ?」
「あぁ、それはお主らに頼みたいことがあって呼んだのだ」
「頼みたいこと……家の中で一人きり……あーなるほど、もしかして寂しいから俺らと友達にでもなって欲しいってことか?」
「うむ、そうじゃ。我は友達が少なくて寂しくて寂しくて……って、たわけ!そんなことではないわ!……ま、まぁお主らがどうしても名誉たかき我と友達になりたいと言うならば?友達になってやらんこともないがなっ!」
そう言ってそっぽを向き、同時に赤い髪が揺れました。横から覗く顔には少し赤みがあり、横目ながらもチラッっと何回も何回も陸斗たちを見ています。
言っていることとやっている事が矛盾してなくもないですが、こう見えてリィールは友人という存在がいなく、また無意識に強気なことを言って後々後悔するツンデレ。だからこそぷいっとそっぽを向いても彼らのことを気にしているのです。
しかし、リィールは彼らが発した期待外れな思ってもいない言葉を耳にして呆気なく心を折られることに。
「なら遠慮する」
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「いや二人とも冗談ですよね!?可哀想……というか泣きそうですよ!?と言うか泣いちゃってますよ!?」
「……お、おお、おぬ、お主ら……それでも人の子かぁぁぁぁぁ!!」
元々リィールは魔王。だからこそかあまり街の人と関わることがなく過ごしている為友人が少なく、実の所これを機に陸斗達と友人になりたいと彼女は思っています。
ですがなにかと強気にかつツンツンしてしまうのが元魔王リィール。故に「友達になる」というたった一言が遠回しに伝えようとしてしまうのです。まあその結果、乃亜以外の二人から発せられた冗談を真に受け涙を流してしまうのですが。
「わ、悪い悪い冗談だって!友達が欲しいんだろ?」
「……おなじ冗談。でも、陸斗、獣、友達オススメしない」
「何吹き込んでんだよ!?」
「ひぐっ……ま、まあそれでもどうしてもという事だ、仕方ない友達になってやろう……」
リィールは元魔王に似合わない涙を未だに流しますが、それでもなお強気な性格と言葉を突き通し、未だに流れる涙を拭いました。
というかリィールが泣いたのにも関わらず、ドランとスクルドはただただ見てるだけ……案外この二人とリィールの関係はそうでもないのかも知れません。
いや、実際の所リィールとドラン、スクルドは上司部下という立場の為ドラン達は心配するのが自然的なのですが、彼女は元魔王。元魔王といえど一人の魔王。その威厳を守るためあえて心配せずただ見守っていたのです。
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「の、乃亜は知っておる……だが皆よろしくな……」
ーーそれから数分後。リィールの涙の勢いは完全に止まり、ようやく彼女が本当に彼等に頼みたいといっていた本題へと入りました。
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