いきなり異世界転生!?~目覚めて始まる異世界生活~

夜色シアン

文字の大きさ
上 下
5 / 23
一章・追放編

クウフウク食堂

しおりを挟む
 五話

「……そ、そうだな……」

 少しの沈黙のあと二人は自身のお腹に手を当てお互いの顔をみて苦笑いします。どうやらグォォォという野獣が吠えたような音は、陸斗とディベント、二人のお腹が大きくなった音だったようです。

「丁度いい、オススメの店あるからそこに連れてってやるよ」

 そう言い放つとついてこいと言わんばかりに、また前をリードして歩き始めました。

 その後、しばらくディベントについて行きたどり着いたのは、日本語でも英語でもなく見たことのない字で、文字が書かれた看板が掲げられた飲食店のようなところでした。そのお店の中から漂ってくる香ばしい匂いでさらに彼らのお腹を空かせてしまいます。

 ただ不思議と見たことのない文字なはずなのに、陸斗は読めました。

「……クウフウク食堂?……え、空腹食堂!?」

「空腹と似た発音だが、そのクウフウクは違うぞ?まあ意味はそっちらしいが、確か理由は「空腹は飯の友だから」だったはずだ……って読めるのか!?この世界の文字を!!」

 さらっとディベントは説明してますが、どうやら店の看板の文字はこの世界の文字のよう。故に陸斗が看板の文字を読めたことに驚きを隠すことができません。

 というか、その理由ならばクウフウクでなくてもクウフクでもいいと思いますが……きっと店主は一捻りした名前にしたかったのでしょう。

 そして「まあ読めるなら色々と楽だ」と彼が言うとすぐに店内に入りますが、店内に入った瞬間、異様な光景を目の当たりにしました。

「……マスター……おかわり、もちろん大盛り」

「本当よく食べるなぁ、まあそうだろうと思ってたぜ、はいよ」

 店内は、まだ昼前なのか、艶のある茶色の髪を後ろで一本に束ね、横顔が可愛い華奢な美少女とカウンターの奥にいるスキンヘッドに鉢巻をした男しかいなく、不思議な口調の見た感じおとなしそうな少女の横には、色々な種類の皿がパッと見ても数えられないほど積まれていました。

 どうやら彼女は華奢な身体に似合わない大食いのようです。

 そして彼女がおかわりと言って、ドンッとカウンターテーブルに置かれたのは、これでもかとはみ出した天ぷらが乗った天丼でした。

「って、食べ過ぎだろ!?」

 と皿の量と、そのおかわりを頼む姿を見て思わずその言葉を口にしてしまいます。

 入店したのが気づいていなかったのか、カウンターの奥にいるスキンヘッドの男と大食いの彼女が彼らのことに気づきました。

「おう、いらっしゃい!カウンターテーブルでいいか?」

「……マスター……モアラ一つ」

「まだ食べるのか!?ってかなにその名前、コアラか、それともモアイか!?」

「天城、ちょっと静かにな?」

 店内が空いてるにも関わらずカウンターテーブルに誘導され、席に座ろうとした瞬間、彼女はいつの間にか特盛天丼をペロリと平らげており、今度はコアラのような、はたまたモアイのような名前の料理を注文していたので、またも驚きの声が口に出てしまいます。

 無論、ここは飲食店。この世界にもマナーがあるためか、驚いて騒ぐ彼をディベントは注意しつつ、やっとの事で彼らは席に着くことができました。

 すると直ぐに店長が目の前にやってきて。

「まあ、美味しく食べてくれれば別に構わねぇよ、でご注文は?」

「俺はツーハンで、天城もツーハンでいいよな?」

「いや、通販って……ここネット繋がってないよな!?」

 お品書きを見てすぐに決めたディベントは陸斗に尋ねました。無論陸斗はお品書きを見ただけでわかるのは料理名のみ。ツーハンという料理や他の料理のことは全く分かるわけもありません。

 ただ、発音が一緒のためか『通販』とツーハンを間違えてしまい、陸斗は通販じゃないのかいいますが、この世界にはネットもなければ、通販もないためディベントは「何を言っているんだい?」と返し、結局ツーハンなるものを二つ頼みました。

 そんな中、注文した料理が来るまでの間、暇なのか大食いの彼女は陸斗の方を向いて話し出します。

「……さっきから、驚いてる、でも、足りない……ここの料理、美味しい、から……」

 横顔もなかなか可愛いのは見て分かりますが、こちらを向いたことで、綺麗に整った顔立ちで色白なのが良くわかります。ただ一つ言うと、ジトっとした目で陸斗達を見ていて、何を考えているのかわからない表情でした。まあ無意識のようなので、生まれつきみたいですが。

「ああ、そいつな、いつだったか店の前でぶっ倒れててな、色々と聞いたら梅坂鈴うめさかりんて名前とニホン?てのしか教えてくれなかったんだ」

「……はあ!?」

 不思議な口調で話す彼女ーー鈴はなんと偶然なのか奇跡なのか陸斗とほぼ同じ境遇の人だったようです。

 そんなことに驚いていたらディベントが注文した料理、ツーハンという料理二つと、それと同時に大食いの彼女が注文していた、モアラという料理がテーブルに置かれました。

「こ、これがツーハン……って炒飯かよっ!」

 ディベントと陸斗の目の前に置かれたツーハン、それは卵を軽くスクランブルエッグの様に炒め、その中に白米を入れてさらに炒めつつ、様々な具材を入れまたも炒めた料理、すなわち炒飯でした。

 そして鈴の目の前に置かれたモアラ。その料理は別にコアラの一部を使っているわけでもなく、モアイの様に石で出来ている訳でもなく、ただ単に麺にスープや大きく二ミリ程にスライスされた肉、ふわっとした柔らかなかまぼこなど、これまた色々な具を使った料理、それはラーメンと瓜二つの料理でした。

「チャーハン?それはツーハンだが?」

「通販は知ってるけど……ここのツーハンて炒飯なのか!?」

 やはり異世界では呼び方が違うようです。その証拠に鈴が注文したモアラを、ラーメンと言うとなんだそれと返されていました。

「……炒飯、知ってる?……君は、日本?……いや中国?」

「いやいや日本でも炒飯知ってる人多いから……まあなんか手違いで召喚されたんだけど、今のところ帰る方法がないらしい」

「……可哀想……今、ご飯食べてる、食べ終わって、色々聞く」

 と急に話を切られ彼女は目の前の料理を食べ始めました。また空腹で、倒れてしまいそうな陸斗もそれが合図だったかの様に炒飯……もといツーハンを食べ始めました。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

『自重』を忘れた者は色々な異世界で無双するそうです。

もみクロ
ファンタジー
主人公はチートです!イケメンです! そんなイケメンの主人公が竜神王になって7帝竜と呼ばれる竜達や、 精霊に妖精と楽しくしたり、テンプレ入れたりと色々です! 更新は不定期(笑)です!戦闘シーンは苦手ですが頑張ります! 主人公の種族が変わったもしります。 他の方の作品をパクったり真似したり等はしていないので そういう事に関する批判は感想に書かないで下さい。 面白さや文章の良さに等について気になる方は 第3幕『世界軍事教育高等学校』から読んでください。

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【完結】世界一無知のリュールジスは秘密が多い

三ツ三
ファンタジー
突如地底深くより出現した結晶異物体。 無差別に人々を襲い続ける存在。 「アンダーズ」 人類はアンダーズの圧倒的な戦力により大陸の半分以上を受け渡すことを余儀なくされた。 物言わぬ結晶体に人類が今もなお抵抗出来ているのは人間の体内にある「魔力」を利用することで稼働する。 対アンダーズ砕鋼器具「ブレイカー」 腰部に装着することで内に秘められている「魔力」を具現化する事が可能となった人類の切り札。 「魔力」を持ち「ブレイカー」を扱う事が出来る限られた者達。 「リベリィ」 彼等がアンダーズを倒す事が出来る唯一の希望であった。 そんな世界で「リュールジス」は一人旅を続けていた。 「探し物・・・」 混沌とした各地を身一つで歩き続けたが、一通の手紙が足を止めさせ彼の旅を終わらせたのだった。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

異世界英雄の学園生活~英雄に休息なんてありません~

パチ朗斗
ファンタジー
魔法が存在する世界リレイリア。その世界には人類の敵である魔王という者が存在した。その魔王はとてつもなく強く、人類は滅亡すると思われた。だが、たった一人の男がいとも容易く魔王を討伐する。その男の名はキョーガ。 魔王討伐という任務を終えたキョーガは自分の元住んでいた世界……"日本"に帰還する。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

処理中です...