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Re:Memories of summer
常夏の恋-Re:Memories of Summer-⑤
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「……ところで先輩。来週の花火大会の日……空いてますか?」
「来週?まぁ……空いてなくはないけど」
「なら一緒に見ませんか!?」
途中清宮は透也の顔を見ながら問いかける。
その問いかけは来週の花火大会の日は空いているかというもの。だが、その日は和香羽と約束をしている。しかしながら先程嘘をついてしまったためか、彼は再び嘘をついてしまう。
「お願いします!」
「えぇ……」
「ダメ……ですか?」
「いや、ダメとは言ってないが……」
彼女はどうしても一緒に見たいらしく、頭を下げてお願いし始める。このまま放っておけば頭を下げるに留まらず土下座もしそうな勢いだ。
流石にここまでして頼まれたら断るのに抵抗してしまい、和香羽と約束を交わしているにも関わらず、清宮と一緒に花火を見る約束を交わすことに。
「ありがとうございます!」
何度も頭を下げるため、頭を下げることをやめさせると今度は嬉しさのあまり自然と笑顔になっていた。その無邪気な笑顔を見ると再び罪悪感に襲われる彼だが、嘘だと言った後の清宮の悲しい顔が目に浮かび、結局言えなくなってしまう。
「あ、もう夜遅いし送ってくよ」
「え、いいんですか?」
「まぁ、こんな夜遅くに女一人が出歩いてたら危険だからな」
今は月明かりと街灯しか道を照らさない夜。流石に夜道を女性ひとりで歩かせるのは色々と危険だと心配し、清宮を送る。
清宮宅は、以前清宮が風邪を引き、見舞いに行ったことがあるため場所を把握済み。森からさほど離れていないが、田舎の町といえど舐めてはいけない。田舎だって夜だからこそ外をうろつく不良だっているのだから。
故に彼は彼女を送ることにしたのである。
ーー十分後、よく見るような二階建ての家へとたどり着く。その家は派手でもなくされども地味でも無い少しオシャレな家。さらに築五十年とは思えない程綺麗な家だ。しかしまだ二十時だと言うのに家の照明は付いていない。聞けば親が帰ってくるのは一時間後だという。
「なんか送ってもらってありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃあな」
「あ、はい!おやすみなさい!」
まだそんな時間ではないが、そう言い放ち家へと戻っていった。
「さてと俺も帰るか」
彼も自宅へと帰宅すると、やることも無いためかそのまま眠りに……付けなかった。
いや、正しくは寝すぎて頭が冴えてしまい夢の中に向かうことができなかった。というのが正しいだろう。
そうなってしまうと暫くは眠りにつく事は出来ない。彼は仕方なく風呂を焚き、勉学に努め、夜食を食べる。と寝ずに普通に生活するのだった。
ーーそして朝。
いつも通りカンカンに晴れ暑い日……ではなくかなり強い雨が降っていた。テレビ予報によれば一日雨。
「ってまじかよ……」
しかし風も強く、雨を窓へと打ち付け、もはや台風並の天気。窓から外を覗けば近くの川が氾濫しかけているのがわかる程、かなりの量が降っているのが見てとれる。
また湿度により平日よりも暑さは感じ取れるが、じめっとしてるためいつもより居心地が悪く、普段外に出ない透也もさらに出たくないと思わせた。
そんな中、突然彼のの携帯の着信音ーーデフォルトの為か、ヨハネのカノンであるーーが雨の音に紛れつつも鳴り響いた。
ぱっとみると画面には『清宮』と表示さている。一体こんな天気の悪い日になんなのか。短いため息を吐きつつも電話を拒否する理由は無いため“通話”のボタンに触れる。
「もしもし?」
『あ、繋がったー!』
「初めて携帯電話持って電話かける子供じゃねぇんだから……それでなんか用か?」
『先輩!あそ……じゃなくて勉強教わりに行ってもいいですか!』
「いや、外見ろよ。てか清宮お前遊びに来たいだけだろ」
『なんでわかったんですか!?天才ですか!?』
相変わらず元気がいい清宮だが、実は成績が少し悪い。彼がある程度教えているためなんとか赤点は免れてはいるが、もし教えていなければ赤点を連続して取ってしまうほどだ。
それに勉強を教えてくださいと言われ、断ったことがあるが何故かその場で泣かれてしまったと言う過去がある。
しかし、今は状況が状況だ。こんな天気の荒れた日に外に出ようなど、戦場に死に行く兵士同然。
なのに。
『じゃあ今から向かいますね!』
外の天気など知らんとばかりに嬉しそうな声で、かつ頭に残るような透き通った声で言い清宮は電話を切った。
「来週?まぁ……空いてなくはないけど」
「なら一緒に見ませんか!?」
途中清宮は透也の顔を見ながら問いかける。
その問いかけは来週の花火大会の日は空いているかというもの。だが、その日は和香羽と約束をしている。しかしながら先程嘘をついてしまったためか、彼は再び嘘をついてしまう。
「お願いします!」
「えぇ……」
「ダメ……ですか?」
「いや、ダメとは言ってないが……」
彼女はどうしても一緒に見たいらしく、頭を下げてお願いし始める。このまま放っておけば頭を下げるに留まらず土下座もしそうな勢いだ。
流石にここまでして頼まれたら断るのに抵抗してしまい、和香羽と約束を交わしているにも関わらず、清宮と一緒に花火を見る約束を交わすことに。
「ありがとうございます!」
何度も頭を下げるため、頭を下げることをやめさせると今度は嬉しさのあまり自然と笑顔になっていた。その無邪気な笑顔を見ると再び罪悪感に襲われる彼だが、嘘だと言った後の清宮の悲しい顔が目に浮かび、結局言えなくなってしまう。
「あ、もう夜遅いし送ってくよ」
「え、いいんですか?」
「まぁ、こんな夜遅くに女一人が出歩いてたら危険だからな」
今は月明かりと街灯しか道を照らさない夜。流石に夜道を女性ひとりで歩かせるのは色々と危険だと心配し、清宮を送る。
清宮宅は、以前清宮が風邪を引き、見舞いに行ったことがあるため場所を把握済み。森からさほど離れていないが、田舎の町といえど舐めてはいけない。田舎だって夜だからこそ外をうろつく不良だっているのだから。
故に彼は彼女を送ることにしたのである。
ーー十分後、よく見るような二階建ての家へとたどり着く。その家は派手でもなくされども地味でも無い少しオシャレな家。さらに築五十年とは思えない程綺麗な家だ。しかしまだ二十時だと言うのに家の照明は付いていない。聞けば親が帰ってくるのは一時間後だという。
「なんか送ってもらってありがとうございます」
「どういたしまして。それじゃあな」
「あ、はい!おやすみなさい!」
まだそんな時間ではないが、そう言い放ち家へと戻っていった。
「さてと俺も帰るか」
彼も自宅へと帰宅すると、やることも無いためかそのまま眠りに……付けなかった。
いや、正しくは寝すぎて頭が冴えてしまい夢の中に向かうことができなかった。というのが正しいだろう。
そうなってしまうと暫くは眠りにつく事は出来ない。彼は仕方なく風呂を焚き、勉学に努め、夜食を食べる。と寝ずに普通に生活するのだった。
ーーそして朝。
いつも通りカンカンに晴れ暑い日……ではなくかなり強い雨が降っていた。テレビ予報によれば一日雨。
「ってまじかよ……」
しかし風も強く、雨を窓へと打ち付け、もはや台風並の天気。窓から外を覗けば近くの川が氾濫しかけているのがわかる程、かなりの量が降っているのが見てとれる。
また湿度により平日よりも暑さは感じ取れるが、じめっとしてるためいつもより居心地が悪く、普段外に出ない透也もさらに出たくないと思わせた。
そんな中、突然彼のの携帯の着信音ーーデフォルトの為か、ヨハネのカノンであるーーが雨の音に紛れつつも鳴り響いた。
ぱっとみると画面には『清宮』と表示さている。一体こんな天気の悪い日になんなのか。短いため息を吐きつつも電話を拒否する理由は無いため“通話”のボタンに触れる。
「もしもし?」
『あ、繋がったー!』
「初めて携帯電話持って電話かける子供じゃねぇんだから……それでなんか用か?」
『先輩!あそ……じゃなくて勉強教わりに行ってもいいですか!』
「いや、外見ろよ。てか清宮お前遊びに来たいだけだろ」
『なんでわかったんですか!?天才ですか!?』
相変わらず元気がいい清宮だが、実は成績が少し悪い。彼がある程度教えているためなんとか赤点は免れてはいるが、もし教えていなければ赤点を連続して取ってしまうほどだ。
それに勉強を教えてくださいと言われ、断ったことがあるが何故かその場で泣かれてしまったと言う過去がある。
しかし、今は状況が状況だ。こんな天気の荒れた日に外に出ようなど、戦場に死に行く兵士同然。
なのに。
『じゃあ今から向かいますね!』
外の天気など知らんとばかりに嬉しそうな声で、かつ頭に残るような透き通った声で言い清宮は電話を切った。
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