のほほん異世界暮らし

農場の到着と三匹の歓迎ダンス

農場の駐車敷地に魔力式トラックを停めると、三匹は待ちきれない様子で扉が開くのをじっと見つめている。

「ほら、降りていいぞ。」

その一言で、彼らは一斉に飛び出した。シャズナは優雅な身のこなしで、助手席から軽やかに降りる。一方、リッキーとルシファンは後部座席から競うように地面へ飛び降り、僕の周りをくるくると回り始めた。

「おいおい、そんなに嬉しいのか？」

彼らの足音と楽しげな鳴き声が、朝の静かな農場に響き渡る。リッキーは「ぴぃぴぃ！」と小鳥のような声で鳴きながら小さなステップを披露し、ルシファンは尻尾を大きく振りながら飛び跳ねるように僕の足元を行き来している。そしてシャズナは、少し距離を取りつつも、気品ある姿勢で僕をじっと見つめていた。

「さて、まずは荷物を下ろさないとな。」

三匹の視線を背中に感じながら、トラックの荷台を開ける。中には今日の作業に必要な道具や材料が積み込まれている。鍬や軍手、肥料、それに収穫用のカゴも忘れずに入れておいた。

「シャズナ、ちょっと手伝ってくれないか？」

もちろん冗談だが、シャズナは「にゃっ」と短く鳴いて応えると、僕のそばで静かに座り込む。その様子に思わず笑みがこぼれた。

一方でリッキーとルシファンは、荷台の中を覗き込んだり、興味津々にカゴを引っ張ったりしている。

「お前たち、壊さないようにな。」

そう言いながら荷物をすべて降ろし、倉庫に運び入れる。ここで道具を整理し、作業の準備を整えるのが僕の毎朝の日課だ。

「さあ、今日も頑張るぞ。」

鍬を持ち、畑の方へと向かうと、三匹も一緒についてくる。彼らにとっては、ここもまた遊び場の一つだ。

シャズナは遠くの畑を見渡しながら、どこか自分の領地を見守る女王のような佇まいで歩いている。その背中には風格すら感じられる。一方、リッキーは畑の端に咲く花を見つけては飛び跳ね、ルシファンは草むらの中を駆け回っている。

「ルシファン、そこはまだ植えたばかりの苗だぞ！」

慌てて声をかけると、彼は申し訳なさそうに耳を伏せて戻ってきた。その仕草があまりに愛らしくて、叱るのも忘れてしまう。

畑の土を耕す音が静かに響く中、三匹は相変わらず元気いっぱいだ。リッキーは空に飛ぶ蝶々を追いかけてピョンピョン跳ね、ルシファンは地面を掘り返して何かを探している。そしてシャズナは、そんな二匹を見下ろしながら優雅に座っていた。

「お前たち、いい加減にしないと手伝わせるぞ。」

冗談混じりに声をかけると、シャズナだけが「にゃー」と鳴き、まるで「彼らに期待しても無駄よ」と言いたげな顔をする。その態度に思わず苦笑した。

朝の作業が進む中、ふと顔を上げると、三匹が僕のそばに集まっていた。リッキーとルシファンは疲れたのか、足元に丸くなって眠り始め、シャズナは僕を見上げながら、静かに寄り添っている。

「ありがとうな。お前たちがいると、何だか頑張れるよ。」

そう呟くと、シャズナが優しく目を細めて「にゃん」と短く鳴いた。その声が、いつもより少しだけ温かく感じられた。

農場の空は高く澄み渡り、僕と三匹の一日はまだまだこれからだ。