のほほん異世界暮らし

みなと劉

文字の大きさ
上 下
481 / 669

大晦日の夜、魔力式テレビの前で

しおりを挟む
夕食を終え、部屋の中は静かに暖かな空気に包まれていた。シャズナとルシファン、そして新しく仲間になったリッキーもお腹を満たし、満足そうにくつろいでいる。リビングの中央には、魔力式テレビが鎮座しており、普段は控えめなそれも、大晦日の特別な番組が映し出される準備を整えていた。

僕はカーペットの上に座り、リモコンを手に取る。ボタンを押すと、テレビのスクリーンがふわっと光を放ち、穏やかな音楽とともに年越し特番が始まった。画面の中では、各地の風景が次々と映し出され、人々が新しい年を迎える準備に忙しく動いている。

「ほら、今年最後の番組だよ。」

僕が声をかけると、シャズナはすぐに反応して、僕の膝の上に飛び乗ってきた。ふわふわの白い毛が触れるたびに、柔らかさと温もりが伝わってくる。シャズナは僕の膝の上で丸くなりながら、テレビの画面をじっと見つめていた。

ルシファンは少し離れた場所からテレビを覗いていたが、興味が湧いたのか「ちちっ!」と短く鳴きながら、僕の横にちょこんと座る。そしてリッキーも、興味津々といった様子で耳をぴくぴく動かしながら画面を見つめている。

テレビの中の世界

「次は、大晦日の特別コーナー、年越しカウントダウン!」

司会者の明るい声が響くと、画面には華やかなイルミネーションに包まれた街並みが映し出された。人々が手を振り、笑顔で新年を迎える瞬間を楽しみにしている様子が伝わってくる。その映像に釘付けになったルシファンは、テレビに近づいて「ちっち!」と声を上げた。

「そんなに近づくと目が悪くなるぞ。」僕が注意すると、ルシファンは少しだけ後ろに下がり、再び画面を見つめる。

シャズナはというと、僕の膝の上で気持ちよさそうに喉を鳴らしている。その音が心地よく、僕もつい、シャズナの頭を撫でる手に力が入る。

リッキーも画面をじっと見つめていたが、突然「ぴっ」と鼻を鳴らし、僕の肩に飛び乗ってきた。軽やかな動きに思わず驚くが、リッキーは満足そうに肩の上で座り込み、再び画面に視線を向ける。

カウントダウンの瞬間

そして、いよいよカウントダウンが始まった。画面の中の人々が声を合わせて「10、9、8……」と数を数え始める。僕もシャズナ、ルシファン、リッキーと一緒に、その声に合わせて小さく口ずさんだ。

「3、2、1……ハッピーニューイヤー!」

画面が花火で彩られ、鮮やかな光が部屋の中にも広がった。シャズナが驚いて顔を上げ、ルシファンは「ちちっ!」と嬉しそうに跳ね回る。リッキーも「ぴっ!」と鼻を鳴らしながら、肩の上で小さな足をばたつかせていた。

「今年もよろしくな、みんな。それとリッキー!今年からよろしくな」

僕は三匹をそっと抱き寄せた。シャズナの柔らかい毛並み、ルシファンの温かさ、そしてリッキーの軽やかな重みが、一つになって僕の胸の中に収まる。この瞬間が、何よりも幸せだと思えた。

新しい年が、三匹と共に始まる。そんな未来に思いを馳せながら、僕は静かに目を閉じた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

移転した俺は欲しい物が思えば手に入る能力でスローライフするという計画を立てる

みなと劉
ファンタジー
「世界広しといえども転移そうそう池にポチャンと落ちるのは俺くらいなもんよ!」 濡れた身体を池から出してこれからどうしようと思い 「あー、薪があればな」 と思ったら 薪が出てきた。 「はい?……火があればな」 薪に火がついた。 「うわ!?」 どういうことだ? どうやら俺の能力は欲しいと思った事や願ったことが叶う能力の様だった。 これはいいと思い俺はこの能力を使ってスローライフを送る計画を立てるのであった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

幼女に転生したらイケメン冒険者パーティーに保護&溺愛されています

ひなた
ファンタジー
死んだと思ったら 目の前に神様がいて、 剣と魔法のファンタジー異世界に転生することに! 魔法のチート能力をもらったものの、 いざ転生したら10歳の幼女だし、草原にぼっちだし、いきなり魔物でるし、 魔力はあって魔法適正もあるのに肝心の使い方はわからないし で転生早々大ピンチ! そんなピンチを救ってくれたのは イケメン冒険者3人組。 その3人に保護されつつパーティーメンバーとして冒険者登録することに! 日々の疲労の癒しとしてイケメン3人に可愛いがられる毎日が、始まりました。

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

処理中です...