のほほん異世界暮らし

ルシファンの行動と注意

夕飯の支度をしようと、ようやく重い腰を上げてキッチンに向かうと、シャズナとルシファンもすぐにその後を追ってくる。彼らにとっては、僕の行動のすべてが興味深い冒険のようだ。特にキッチンは、食べ物の気配が漂う場所だからだろう。

「今日は何を作ろうかな。」
僕が冷蔵庫を開けて中を覗き込むと、シャズナは足元に座り込み、しっぽをゆっくりと揺らしながら見上げている。まるで「美味しいものを期待してるわよ」と言わんばかりだ。一方、ルシファンはカウンターの端に飛び乗り、興味津々で僕の手元を覗き込んでいる。

「危ないぞ、ルシファン。ここは火を使うんだから、あんまり近寄るな。」
そう注意すると、彼は「ち？」と小首をかしげて首を傾けた後、少しだけ後ろに下がった。とはいえ、完全に離れる気はないらしく、依然として僕を見守っている。

今日は簡単にできる煮込み料理にすることにした。昼間に畑で収穫した野菜を使って、温かいシチューを作る。月光じゃがいも、人参、玉ねぎ、そして先日市場で購入した新鮮な鶏肉。それらを鍋に入れてじっくり煮込めば、きっと二匹も満足するだろう。


---

野菜を洗い始めると、シャズナがキッチンマットに座ったままじっと見つめている。彼女の大きな瞳が光を反射して、まるで星空のようにキラキラと輝いているのが目に入る。その視線を感じながら、僕は微笑みつつ包丁を手に取る。

「シャズナ、お前も料理を手伝いたいのか？」
声をかけると、彼女は軽く「にゃあ」と鳴き、しっぽを優雅に振った。その様子を見て、僕は思わず笑ってしまう。もちろん猫が料理を手伝えるわけではないけれど、その存在感だけで十分だ。

野菜を切り終え、鍋に放り込むと、ルシファンがカウンターから降りてきて僕の膝に飛び乗ってきた。

「ちち！ち！」
「お前も食べたいんだろうけど、これはまだできてないんだぞ。」
僕が彼の頭を撫でると、ルシファンは満足そうに目を細める。けれど、そのまま膝の上で動こうとしない。

「ルシファン、今はまだ準備中だから、もう少し待っててくれよ。」
仕方なく彼を抱き上げて床に降ろすと、今度はシャズナの隣に座り込んだ。そして二匹は、まるで相談でもしているかのように顔を見合わせている。


---

しばらくして、鍋からはいい香りが漂ってきた。湯気とともに立ち上るシチューの香りは、寒い夜には最高の癒しだ。二匹もそれに気づいたのか、興奮したように僕の周りをぐるぐると回り始めた。

「分かった分かった。もう少しでできるから、待っててくれ。」
そう声をかけると、シャズナは少し離れて座り直し、落ち着いた態度を見せた。一方で、ルシファンは相変わらずそわそわしている。

夕飯が完成すると、シャズナとルシファンには特製のシチュー風のご飯を用意した。僕のご飯と同じ具材を使っているが、彼らの体に合わせて味付けは極めて薄めにしている。

「はい、お待たせしました。」
それぞれの器を床に置くと、シャズナは品よく近寄り、一口ずつ確かめるように食べ始めた。ルシファンは「ちち！」と声を上げて嬉しそうに食べ始め、すぐに夢中になる。

彼らが満足げにご飯を食べる姿を見ながら、僕もようやく椅子に腰を下ろし、自分のシチューを楽しむ。体が芯から温まり、今日の疲れが一気に和らぐ気がした。


---

食事を終えた後、リビングに戻ると二匹がすぐに寄り添ってきた。シャズナは炬燵の中に潜り込み、ルシファンは僕の膝に飛び乗る。

「今日も一日お疲れさま、みんな。」
静かな夜、温かな部屋で、二匹の温もりに包まれながら僕はそっと目を閉じた。