のほほん異世界暮らし

翌日と農作業

朝の空気がしんと静まり返る中、窓の外には柔らかい冬の日差しが差し込んでいた。厚手のコートを羽織り、農場での作業に備えて準備を進める僕の足元では、シャズナが「にゃあ」と短く鳴いて気を引こうとしていた。そのそばでルシファンもぴょんぴょんと跳ねながら「ちち！ちち！」と元気に声をあげる。

「よし、今日は昨日よりも寒いけど、雪見大根の世話をしないとな」
そうつぶやきながら、僕は農具を持ち出して外へ出る。昨日の雪がわずかに残る道を歩いていると、シャズナは器用に足を運びながら僕に寄り添い、ルシファンは雪を踏むたびに「ひんやりする！」と言わんばかりに飛び跳ねていた。

農場に着くと、昨日までの作業が少しずつ形になりつつある様子が目に映る。雪見大根の小さな芽たちは、白い霜に包まれながらもたくましく地面から顔をのぞかせている。その姿を見て、僕は胸の中に静かな達成感を覚えた。

「さて、今日も土を耕して、様子を見てみようか」
鍬を手に取りながら言うと、シャズナが「ふん」と鼻を鳴らして僕のそばで座り込み、一緒に見守る体勢をとる。一方でルシファンは、僕が土を掘り起こすたびに興味深そうにのぞき込み、小さな前足で触ろうとしている。

「ルシファン、土を掘るのはいいけど、芽を踏まないようにな」
注意しながらもその無邪気な姿に笑みがこぼれる。彼は「ちち！」と返事をするように鳴いて、慎重に歩き回るようになった。シャズナはというと、そんなルシファンの行動を「また騒がしいわね」とでも言いたげな表情で眺めつつ、自分は動かず落ち着いている。

土をしっかりと整え終えると、水やりの準備に取り掛かる。寒い中でも苗が枯れないように、魔力式ポンプを使ってぬるま湯を畑全体にまんべんなく撒く。その間、シャズナとルシファンは畑の端で寄り添い合い、僕をじっと見守っていた。

作業が一段落したところで、僕は立ち上がり、手袋を外して二匹のもとへ向かう。
「寒い中、付き合ってくれてありがとう。そろそろ家に戻ろうか」
そう声をかけると、シャズナは「にゃあ」と小さく返事をしながら先に歩き出し、ルシファンは僕の肩によじ登ってきた。彼の体温がじんわりと伝わってきて、冷えた体が少しずつ温かくなっていく。

帰り道、ふと振り返ると、雪見大根の畑が冬の日差しを受けてキラキラと輝いて見えた。あの小さな芽たちが成長し、収穫の日を迎えるまで、シャズナとルシファンと一緒にこの冬をしっかりと乗り越えていこうと思う。

家に戻ると、二匹はストーブの前に陣取り、まるで作業の疲れを癒すかのようにぐっすりと眠り始めた。その穏やかな寝顔を見て、僕はほっと一息つき、温かい飲み物を手に取った。こうしてまた一日、彼らと共に過ごす時間が僕にとって何よりの幸せであると実感するのだった。