のほほん異世界暮らし

みなと劉

文字の大きさ
上 下
401 / 695

「シャズナとルシファン──驚きと笑顔のひととき」

しおりを挟む
いつもと変わらない朝だった。陽光が窓から差し込み、柔らかな光が部屋を包む。シャズナとルシファンは、相変わらず僕の周りをちょこちょこと動き回りながら、朝のひとときを楽しんでいるようだった。

「お前たち、そんなに元気だと朝から疲れちゃうよ」
軽くぼやきながら、朝食の準備をしていると、ルシファンがいつものように僕の足元にまとわりついてきた。

「ち!ち!」
彼の声は「僕も手伝いたい!」と言っているように聞こえるが、実際はただ遊びたいだけだ。僕が振り返ると、彼は嬉しそうに尻尾を振りながら跳びはねる。その様子に思わず笑みがこぼれた。

一方で、シャズナは少し離れた場所から冷静に僕たちのやり取りを見つめている。その目には「またやってるわね」とでも言いたげな光が浮かんでいた。


---

朝食を終えた後、少し時間があったので庭に出ることにした。秋の空気が心地よく、風に揺れる葉の音が穏やかな時間を演出していた。庭先のプランターには、先日植えたハロウィーンソフィとクリスティピーナッツが元気に育っている。

「お前たち、少し走り回りたいだろう?」
僕がそう言うと、ルシファンは尻尾を振りながら全力で庭を駆け回り始めた。シャズナは少し迷った様子を見せながらも、やがて彼を追いかけるように軽やかな足取りで走り出した。その姿は、普段の冷静な態度からは想像もつかないほど無邪気だった。

僕はその様子を微笑ましく眺めていたが、突然、ルシファンがこちらに向かって全速力で駆け寄ってきた。

「ちちち!」
「おい、どうしたんだ?」

そう言った瞬間、彼は勢いよく僕に飛びついてきた。

「きゃ!?」
驚いて声を上げる僕。その拍子にバランスを崩し、尻もちをついてしまった。地面は柔らかかったものの、突然の出来事に頭が一瞬真っ白になる。

「ルシファン、急に飛びついてくるなよ……」
困惑しながら彼を見ると、彼は全く悪びれた様子もなく、尻尾をぶんぶん振りながら僕の顔をペロペロと舐めてきた。その無邪気さに怒る気も失せてしまい、思わず笑ってしまう。

「お前は本当に自由だな」

一方で、シャズナは僕とルシファンのやり取りを少し離れた場所から見ていたが、やがてそっと近づいてきた。そして、僕の足元に座り込むと、小さく「にゃ」と鳴いてこちらを見上げる。

「シャズナ、お前までどうしたんだ?」
その目はどこか心配そうでありながら、同時に「仕方ないわね」と呆れたような気配も含んでいた。


---

その後、ふたりと一緒に庭でのんびりと過ごす時間が続いた。僕はプランターの植物をチェックしながら、ふたりが駆け回る様子を眺めていた。

「シャズナ、ルシファン、これから寒くなるけど、一緒に頑張っていこうな」
ふたりは僕の言葉に反応するように小さく鳴き声を上げ、足元にすり寄ってきた。その温もりは、秋の冷たい風を忘れさせてくれるほどだった。

僕はしゃがみ込んでふたりを撫でながら、心の中で感謝の気持ちを抱いた。この穏やかな時間が、どれほど大切で特別なものなのか、改めて実感した瞬間だった。

そして、僕の隣でルシファンは無邪気に笑い、シャズナは静かに寄り添いながら、また新しい一日が始まっていった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

家ごと異世界ライフ

ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

異世界転生したら何でも出来る天才だった。

桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。 だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。 そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。 =========================== 始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。

処理中です...