のほほん異世界暮らし

「シャズナとルシファン──深まる秋と静寂の夜」

翌朝、冷え込みがさらに増していることを感じながら目を覚ました。布団の中では、シャズナが僕の足元に丸まり、ルシファンが胸の上でぴったりと寄り添っている。その温もりが心地よく、ついもう少し布団の中でのんびりしていたくなる。

「お前たち、寒いのか？」
寝ぼけまなこでふたりに声をかけると、シャズナは小さく「にゃ」と返事をし、ルシファンは「ち！」と嬉しそうに鳴いて僕の顔を舐めてきた。

「わかった、起きるよ。今日は少し暖かいものでも作るか」
布団を抜け出し、ふたりを撫でながらリビングへ向かう。朝日が部屋を明るく照らし、深まる秋の気配が家中に漂っていた。


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朝食を作る間、シャズナとルシファンはいつものように僕の足元をうろうろと動き回る。特にルシファンは、台所の匂いに釘付けで、時折立ち上がっては「何を作っているの？」とでも言いたげに僕を見上げてくる。

「今日は野菜たっぷりのスープだぞ。お前たちも食べられる分を用意してやるからな」
鍋から立ち上る湯気に秋の香りが混じり、台所は早くも賑やかだった。シャズナは相変わらず距離を取りつつ、冷静に僕とルシファンのやりとりを眺めている。

「シャズナ、お前ももう少し素直になってみたらどうだ？」
軽く冗談を飛ばすと、シャズナはちらりと僕を見て「ふん」と鼻を鳴らす。


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朝食を終えた後、庭へ出ると、先日植えたハロウィーンソフィの葉がさらに成長しているのに気づいた。その鮮やかなオレンジ色が秋の空気にぴったりと調和している。隣にはクリスティピーナッツの木々も葉を落とし、次の季節への準備を整えていた。

「しっかり育ってくれよ。今年の秋はお前たちのおかげで楽しかったんだからな」
軽く土を触りながら語りかけると、ルシファンがそばに来て僕の手を鼻でつついた。

「お前も手伝いたいのか？」
そう言いながら微笑むと、彼はさらに元気よく尻尾を振った。一方で、シャズナは遠くから眺めているだけだったが、その目にはどこか満足そうな光が宿っていた。


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午後、ふたりを連れて市場へ向かった。最近は納品だけでなく、来年の春に向けた苗や種を探すのが楽しみになっている。市場では行商人たちが僕を見るなり笑顔で声をかけてくれた。

「またいいものを持ってきてくれたな。今日は何か特別なものを探してるのかい？」

「来年に向けて、少し珍しいものが欲しいなと思って」
そう言うと、行商人は奥から小さな袋を取り出した。

「これは『ムーンライトリーフ』の種だよ。夜になると光る不思議な葉をつける植物さ。育てるのは少し手間がかかるが、その分、育った時の喜びはひとしおだ」

興味を惹かれた僕は、すぐにその種を購入した。シャズナとルシファンも袋をじっと見つめていて、特にルシファンは興奮したように「ち！」と鳴いて尻尾を振っている。


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帰り道、ふたりは助手席で大人しく座っていた。市場での賑やかな時間が楽しかったのか、どちらも満足げな表情を浮かべている。家に戻ると、早速新しい種を植える準備を始めた。

シャズナはそばで静かに見守り、ルシファンは手伝いたそうに土を掘り始める。その姿に思わず微笑み、ふたりに感謝の気持ちが湧き上がる。

「お前たちがいるから、毎日がこんなに楽しいんだ」

夜、ふたりを膝に乗せながら、焚き火の前でゆっくりとした時間を過ごした。焔の音に混じって、ルシファンの小さな鳴き声と、シャズナの柔らかな息遣いが聞こえる。

秋の夜は、静けさの中に温もりが溢れていた。ふたりと過ごす時間は何にも代えがたいものだと、改めて感じた夜だった。

そして、星空を見上げながら僕は思った。

「これからも、この幸せが続きますように」

シャズナは小さく「にゃあ」と鳴き、ルシファンは「ちち！」と力強く返事をしてくれた。それが、僕への何よりの応えだった。