のほほん異世界暮らし

284 猫と鼠の愛情

朝の光が薄く部屋に差し込み、僕は穏やかに目を覚ました。外の景色はまだ静かで、薄い霧がかかっている。ベッドから起き上がり、眠気を払いながら台所に向かう。朝食を作るのは、僕にとって一日の大切な始まりの儀式だ。エプロンを身に着け、手早く調理道具を取り出して準備を整える。

卵を割り、泡立て器で軽くかき混ぜているときだった。突然、“ごとん！”という音が背後で響いた。驚いて振り返ると、床に小さな鼠が倒れているのが見えた。弱々しい体を震わせ、まるで力尽きたかのように動かない。緊張が走り、「だ、大丈夫？」と思わず声をかける。鼠はか細い鳴き声をあげるだけで、動くことができないようだった。

シャズナも音を聞きつけて、すぐにキッチンに駆け寄ってきた。大きな目を丸くし、倒れている鼠を心配そうに見つめる。いつもは俊敏に動き回るシャズナが、今日は別人のように静かだった。彼はそっと鼻を近づけ、鼠に顔をすりすりと優しく押し当てる。まるで鼠が無事かどうか確かめるように、その動きはとても愛おしかった。

僕は息を呑みながらその光景を見守る。猫と鼠という自然界では本来敵対するはずの関係が、ここではまるで家族のように寄り添っている。シャズナのしっぽがゆっくりと動き、彼の温かい気持ちが鼠に伝わっているのがわかる。

「本当に大丈夫か…？」と僕は再び心配そうに尋ねる。すると、鼠は弱々しくも小さく動き、シャズナの温もりに応えるかのように体を震わせた。シャズナは目を細め、鼠にもう一度そっと顔をすり寄せた。その姿は愛そのものだった。

この瞬間、僕は猫と鼠の愛情の深さを実感した。種族の違いを超えて、助け合う姿は何とも言えない感動を呼び起こした。キッチンに漂う朝食の香りが優しく部屋を包み込む中、僕はシャズナと鼠が共にいるその平和な光景に胸が温かくなった。