のほほん異世界暮らし

278 冬の農作業と心の余裕

朝食を終え、シャズナが再び眠りに落ちると、僕は準備を整えて農場へ向かうことにした。冬の寒さが肌に刺さるが、静かな朝の光があたり、穏やかな気持ちを与えてくれる。家の中で過ごす温かい時間から一歩外に出ると、空気が澄んでいてひんやりと感じる。それでも、農場へ向かう足取りは軽く、自然と元気が湧いてくる。

冬の農作業は、少しだけ独特なリズムがある。寒さが厳しくなりつつあるとはいえ、作物にとってはまだ育てることができる時間が残っている。農場の一角では、霜が降りた草がきらきらと輝き、冬に向けての準備が進んでいる様子だ。少しずつ枯れ始めた野菜や花を整理し、残った作物が凍らないように工夫しながら作業を進める。

シャズナが家で温かく眠っているのを思うと、また穏やかな気持ちになりながら、農作業に没頭していく。寒い中でも、身体を動かしていると心が落ち着き、また少しずつ気温が冷えていくことさえ心地よく感じられる。土を触り、手を動かしながら、作物に少しでも良い状態で過ごしてもらえるように、僕の心がこもった手入れが続く。

途中で、ふとシャズナのことを考えながら作業を進めていると、足元で何かが動く気配を感じた。振り向くと、シャズナがひょっこりと現れて、嬉しそうにしっぽを振っている。外に出たくてたまらない様子で、足元に駆け寄ってきた。

「今日は一緒に農作業するの？」と声をかけると、シャズナはそのままうれしそうにジャンプして、農場の一角を小さく走り回る。冬の寒さもお構いなしに、元気いっぱいに動き回るシャズナを見ていると、心が温かくなり、自然と笑みがこぼれてしまう。時々振り返っては、僕が作業をしていることを確認するように、目を細めて見つめてくる。

作業を終えた後は、少し休憩を取り、シャズナと並んで座って景色を眺める。冬の日差しは低く、長い影を作りながら、遠くの山々が白く輝いている。寒さを感じるはずなのに、農場の広い空間ではその景色がとても静かで、穏やかな時間が流れているように感じる。

シャズナは、しばらく静かに僕の横に座って、穏やかな視線を向けている。その姿を見るだけで、また元気をもらえる気がして、嬉しくなる。こうして一緒に過ごしている時間が、何よりも大切に思えてくる。

農作業を終える頃には、少し冷えた風が吹いてきて、冬の訪れを確実に感じさせる。シャズナと共に農場を後にし、家へ帰ると、温かいストーブが待っていることを思うと、心が安らぐ。そして、家に着いた後のひとときが、またひとつの楽しみとなる。シャズナと一緒に過ごす時間が、心を温め、日々の忙しさを忘れさせてくれる。

冬が深まる中でも、農場での作業と、シャズナとの穏やかな時間が、心に余裕をもたらしてくれる。この冬も、共に過ごす日々を大切にしていこうと思いながら、ゆっくりと家へ向かって歩いていく。