のほほん異世界暮らし

みなと劉

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267 市場への道とシャズナの高揚

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市場への道をトラックで走るのは、いつもとは違った静けさと興奮が混じり合う時間だ。魔力式トラックのエンジンは、低く心地よい音を響かせて僕たちを運んでいく。その音は、どこか鼓動のように感じられ、一歩一歩進む道に合わせて心も弾む。助手席に座るシャズナは、いつも以上にうきうきとした様子を見せていた。窓から差し込む日差しに体を温められ、耳をピクピクと動かしながら市場の風景を想像しているのだろう。

シャズナは市場に行くことが大好きだ。広場には様々な人々が集まり、行商人たちの声や野菜、果物、花の香りが混じり合って賑やかだ。彼はこの騒がしい空気を楽しんでいるようで、トラックが市場に近づくにつれてしっぽを左右に揺らしている。僕はその様子を見て思わず笑みを浮かべた。シャズナの喜びは、僕にとっても特別なものだった。

市場に到着すると、僕たちは納品の準備を始めた。シャズナは飛び跳ねるように助手席から降り、足元をくるくると駆け回っては僕を見上げて、声にならない小さな声で鳴いた。その顔はまるで、「早く行こう!」と催促しているようだった。僕は荷台から野菜の詰まったカゴを降ろし、穏やかな笑顔で彼に応じた。「よし、行こうか、シャズナ。」

市場の広場に足を踏み入れると、いつもの活気が僕たちを迎えた。行商人たちはそれぞれの商品を誇らしげに並べ、客たちが立ち寄っては話し声が交わされている。シャズナはその中を、鼻をひくひくさせながら歩き回り、まるでこの空間全体を自分のものとして楽しんでいるかのようだ。

「今日は何を納品だい?」と声をかけてきたのは、長年お世話になっている行商人だった。彼の顔は日に焼け、笑うとしわが深く刻まれるが、その笑顔はどこか温かい。僕はトラックからカゴを持ち上げ、野菜やハーブ、ナイトフィーンなどを見せる。「今日はこれを持ってきました。評判も良いんですよ。」

「おお、それは楽しみだ。ナイトフィーンは特に人気が出てるからね。」行商人は目を細め、興味深そうにカゴを覗き込んだ。シャズナもその様子を見て、まるで自分の誇りを共有するかのように耳をピンと立てていた。

納品が終わり、しばらく市場の喧騒の中で過ごす。シャズナはあちこちの行商人や客たちの足元を駆け回り、楽しげに過ごしていた。その姿を見ていると、僕もいつも以上に市場の活気を心地よく感じることができた。

やがて日が傾き始め、市場の賑やかさが少しずつ夕方の静けさへと移り変わっていく。その空気の中で、シャズナのはしゃいだ様子は少し落ち着きを見せ始め、僕の足元でしっぽをゆっくりと揺らしている。市場を後にし、トラックへ戻る僕たちは、また新しい一日が始まる予感を胸に秘めていた。

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