のほほん異世界暮らし

みなと劉

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209 頑張ったシャズナと鰆の塩焼き

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市場からの帰路、少しの休憩を経て無事に自宅に戻った僕とシャズナ。門をくぐると、シャズナは疲れた様子も見せずにまっすぐ駆け出し、家の中へと先導していく。その先はもちろん、キッチンだ。「にゃー」と響く鳴き声が耳に届き、シャズナが食欲を示しているのがすぐにわかる。まるで「お腹が減ったよ、早くご飯にしてくれ」と言っているかのようだ。僕は思わず微笑みを浮かべ、彼の健気な姿に胸が温かくなる。

「今日は特別だよ、シャズナ」と声をかけながら、僕は行商人から買い付けた新鮮な鰆をキッチンの調理台に置く。鰆は今日一日を頑張った彼へのご褒美だ。塩をふり、しばし待ってから、炭火でじっくりと焼き上げる。鰆が焼ける香ばしい香りがキッチンに立ち込め始めた瞬間、シャズナはキッチンの入り口にじっと座り、しっぽをゆっくりと揺らしながら待っている。その動きは、期待感を全身で表現しているようだ。

やがて、鰆の塩焼きが黄金色に焼き上がり、香ばしい匂いがさらに強く漂うと、シャズナはもう我慢できないとばかりに「にゃー」と短く鳴き、しっぽを勢いよく振った。食卓に料理を運ぶと、シャズナはすでに目を輝かせて座っていた。僕が「さあ、今日は特別なご褒美だよ」と声をかけてお皿を置くと、彼はそっと前足を揃えて姿勢を正し、丁寧に食事を始めた。

僕もシャズナと一緒に夕食をとりながら、彼の食べる様子を見守る。パリッとした皮に歯を当て、身をほぐしながら満足そうに食べる姿に、今日の疲れも自然と消えていく。鰆の身が口の中でほどけるたびに、シャズナは「にゃー」と時折小さく鳴き、嬉しさを表現しているかのようだ。

食事が終わると、シャズナはしばしその場でゆっくりと背を伸ばし、大きな伸びをした。その後、ふわっと僕の足元に歩み寄ってきて、「にゃー」と甘えるように一声。まるで「ありがとう、美味しかった」と感謝の気持ちを伝えているようだった。その姿に、僕はまた微笑み、シャズナの頭を優しく撫でた。彼は目を細め、しっぽを軽く一振りして幸せそうにしている。

夜の帳が降り始める頃、僕たちは満ち足りた気持ちで心地よい疲れに包まれ、穏やかな夜を迎える準備をしていた。今日も一緒に過ごした時間は、何よりもかけがえのないものだと感じながら、僕はシャズナに「おやすみ」と声をかける。シャズナは軽く「にゃー」と返事をして、満足そうにその場に丸くなった。

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