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63 夏の静けさと秋に近づく
しおりを挟む僕の特技は、道案内。
というのも、僕ってすごく親切そうなオーラが出ているみたいで、よく人に道を聞かれるんだよね。
それで何回も道を教えていたら、いつのまにか案内が得意になっちゃってたんだ。
この町のことだったら、もうどこにでも案内できちゃうよ。
ほら、噂をすれば、向こうで道に迷っていそうな人がいるよ。
あ、やっぱり僕の顔を見たらこっちに近づいてきた。オーラが出ちゃってるんだなあ。
「あの、すみません、この辺りにお葬式の会場はありますか?道に迷ってしまって……」
それを聞いて、ぼくは待ってましたとばかりに答えた。
「ここの奥の道をまっすぐ行って、つきあたりで右に曲がると看板が出ているはずですよ」
「ありがとうございます! 助かりました」
そう言って、その人は安心したように歩いていった。
こんな風に、道案内のことなら僕にお任せってわけ。
しばらくすると、またしても声をかけられた。さっきとはちがう人だ。
「あの、すみません、道をお聞きしたいのですが」
一日に二回も聞かれるのは珍しいけど、慣れたものさ。僕は答えた。
「いいですよ。どこに行きたいんですか?」
「私のお葬式会場なのですが、この辺りにありますかね?」
「ああ、お葬式会場ならそこのつきあたりを右に行けば、看板がありますよ」
僕がそう言って道を教えてあげると、その人は嬉しそうにお礼を言って、そちらの方に向かっていった。
うん、やっぱり僕にかかればどんな人でも案内できちゃうな。
いやー、人のためになることをするって気持ちがいいなあ。
道案内をするためだけに、宿題もやらずに何キロも歩き回っているから、困っている人がいてよかった。
聞いてくれる人がいるかは分からないけど、明日学校で自慢しちゃおっと。
(↓解説はこのまま下にスクロールしてね↓)
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解説
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道を聞いてきた二人目の発言に注目。
探している場所は「私の」葬式会場らしいね。
つまり、この人は葬儀で別れを惜しまれる側の人だということ。
早く自分の棺を見つけられるといいね。
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