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43話

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「当たり前じゃないか。君は今代の『勇者』であるミコト様の専属従者だろ? それに、君はあの有名な『白銀の獅子王団団長兼王国騎士副騎士団長』のゼフ殿とも友人らしいね。そんな君のことを、知らない方がおかしいんじゃないかな?」
「そういうことなら確かにそうだ。というより、むしろなんで俺の名前が有名じゃないのか不思議なくらいだけどな」
俺は肩をすくめながら言うとルークも同感だと言わんばかりに大きく何度も首を上下させた。
すると、ここでずっと俺たちの会話を聞いてくれていたアリサさんから声を掛けられた。どうやら終わったようなので話しかけに来たみたいだ。
俺とルークはすぐに彼女のところに向かった。
そして改めて今回の試験についての結果を言い渡されることになった。
正直かなりドキドキしているのだが、隣にいるアリスは余裕たっぷりの様子なのできっと問題ないだろうと思うことにした。
それにしても、俺とアリシア以外の全員がAクラスになるとは……少し驚いた。だがよく考えてみれば俺が入学試験を受けに行った時にはすでに全員集まっていて、その時点で合格が決定してしまっていた。
俺だけが取り残されて不合格になっていた可能性も十分にあったということだろう。
そんなことを考えていると、ついに彼女が口を開いた。
「みなさま、お疲れさまでした! 無事試験に合格されましたことを、ここに報告させていただきます。そして、このクラスの代表としてこれからも頑張ってください。私から言えることはそれだけです。みなさんの今後の活躍を期待しています」
どうやら、俺の不安は全く必要のない心配だったようだ。こうして俺達は無事に入学試験を終えたのであった。
ちなみに、このあと行われた表彰式では、アリスが一位、俺が二位で、ルークが三位だった。
このことでルークはかなり落ち込んでいた。俺はそんな彼を励ましながら一緒に寮に戻った。それから二人で部屋に戻って、お互いに今日のことについて話をしていた。
そして話題が尽きかけたところで突然ルークが何かを思い出したかのように話し出した。
「そういえば、まだ伝えていなかったことがあったよ。この前君の師匠であるアルスネルド殿と会った時に、一つだけ教えてもらったことがあるんだ。なんでも、『賢者』には特殊な力が備わっているらしい。そしてそれは……他人の心を読み取ることができる能力なんだってさ」
……なるほど、それなら俺の心の中を読んでいても何もおかしくないわけだ。
「そっか、じゃあ俺が『勇者』だってこともわかっていたんだろうな。俺がそのことを知っているっていうのも……」
俺はそこまで言いかけて言葉を詰まらせた。というのも……
「ああ、僕もそのことが気になって本人に直接尋ねてみたよ。でも答えてくれなかった。だから、今は聞かない方がいいと思ったんだ。いずれわかる日が来るはずさ。それこそ……近い将来、必ずね」
そう言って微笑むルークを見て俺は思った。こいつは……どこまで鋭い奴なんだろうか。おそらく俺の心の内を読んだわけではない。俺の表情を見て察してくれたのだ。本当に凄い男だと思う。俺はこの時初めて彼に対して尊敬の念を抱いた。
それと同時に、俺とルークは絶対に負けられないライバルだと確信した瞬間でもあった。
そしていつかはこいつに追いつきたいと思いつつ……俺達の学院生活は始まった。
「うわっ!」
いきなり背後から大声が聞こえてきたものだから、びっくりして振り返ってしまった。
「ど、どうかしましたか!?」
私は急いで彼の下へ駆け寄っていきながら問い掛けると、彼はゆっくりと立ち上がってから私の方を見た。
「……すみません、実は……その……」
そう言った彼はとても申し訳なさそうな顔をしていた。
(えっ? どうして謝られているんですか?)
そう思いながらも私が首を傾げていると、彼はさらにこう言葉を続けた。
「驚かせてしまってごめんなさい。それと……その……実は、今朝はあなたと待ち合わせをしていなかったことに気が付いてしまいまして……。それで慌てて追いかけてきてしまいました」
そう言われた瞬間、ようやく彼が何を言おうとしていたのか理解することができた。そして、その理由も何となくわかった。
要するに彼は私に早く会いたかったということなのだ。しかし、それを素直に言えないためにあんなに焦ったような態度を取っていたということになる。
その事実に気付いた時、私の中で彼に抱き着きたいという気持ちが強くなっていった。ただ、ここでいきなり行動に移すのは恥ずかしすぎる。なので、まずは冷静になることにしよう。そう思ったのだが……なぜか、身体の震えが止まらなかった。そして顔が熱い。まるで熱に浮かされているみたいに頭がボーっとする。もしかするとこれは恋の病なのかもしれない。私は思わずそんなことを考えてしまうほどだった。そしてしばらくそのままの状態で固まっていた。すると今度は心臓の鼓動が速くなってきた。今にも爆発してしまいそうだ。そこでふと、こんな疑問が頭を過る。
もし、このままだと彼と目が合ってしまうのではないか? そんなことになればもう二度と立ち直れないだろうということは考えるまでもなかった。
なので必死に落ち着こうとするもののなかなか治まる気配がない。それでも何とか頑張ろうと試みたものの……やっぱり駄目だった。
なので結局は諦めていつものように彼から話しかけてもらうことにしたのだが、どうやら今回は上手くいったようだ。なぜなら、目の前の彼が少し困り顔でこちらを見つめてきているのだから。
「えっと……大丈夫ですか?」
「だ、だだだだだだだだだいじょうぶれす!」
噛んでしまった。しかも変な声で。するとそんな私を心配するような目で見てくるものだから、いよいよ耐えられなくなってしまった。
私は咄嵯の判断で彼の腕にしがみつく。そうすることでどうにか平静を保つことができた。
すると、ここでまたしても予想外なことが起きた。
それは……
「ちょ、ちょっと! どこ触っているのよ!?」
なんと、突然私の胸を鷲掴みしてきたのだ。いくら何でもそれはやりすぎだ。私は文句を言わずにはいられなかった。
すると、彼は慌てた様子で手を離すと再び頭を下げ始めた。そして、またもや謝罪の言葉を口にしてくる。
(あぁ……違うのに。悪いのは勝手にパニックになってしまった私の方なのに)
心の中ではそんなことを思っていても、いざ口に出してしまうと今のこの状況について説明しなければいけなくなる。
それは嫌だったので、私はあえて口を閉ざした。
それから、私達は無言のまま街に向かって歩いていた。
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