異世界でコンビニ経営したらなんか騎士様やら魔物やらも買い物にきた！？

第百八十話：勇者と魔物のレジバトル！

異世界コンビニ「ワンダー」の店内はいつも騒がしいが、今日の賑やかさは尋常ではなかった。勇者アレクと宿敵である魔王ディアボロが、なんとレジ前で対峙していたのだ。

「先に並んでいたのは私だ、勇者よ！」と、魔王ディアボロがその闇の力を込めた声で主張する。

「いやいや、俺の方が手に取ったのが早かったはずだ！」と、勇者アレクも引かない。彼が手にしているのは期間限定の魔法フルーツジュース。「限定品を買い逃すわけにはいかない」と、彼の目には決意が燃えている。

見守る店員のレオは額に冷や汗を浮かべながら、「お客様、こちらは並んで一人ずつお願いしておりますので…」とおずおずと声をかける。しかし、二人は聞く耳を持たず、その場で魔法バトルのような威圧感が漂い始めた。

騎士団の一人が後ろでため息をつき、「勇者様、魔王様、争うのはやめてください。ジュースなら後ろにまだ山積みですから…」と指差す。

店内が一瞬静まり返り、勇者と魔王はじっと指先を見つめた。すると、勇者アレクは「あ、本当だ」と呟き、魔王ディアボロも「見落としていたわ…」と小さな声でつぶやく。

その後、二人は肩をすぼめて並んでジュースを手に取り、レジに並び直した。周囲は笑いを堪えきれず、店全体が和やかな雰囲気に包まれたのだった。

「次回からはちゃんと確認しような、魔王」と勇者が言うと、「むぅ、次は絶対に負けんぞ」と魔王が応える。

その日、コンビニ「ワンダー」は勇者と魔王が仲良く並ぶという珍しい光景を提供したのだった。