上 下
103 / 185

第百三話:預言者パブテマス

しおりを挟む

その日、コンビニに現れたのは、ひときわ風変わりな人物だった。入口の扉が開くと同時に、店内に一際強烈な風が吹き込んだ。振り返ると、そこには豪華なローブを身にまとった人物が立っていた。

「ふむ…この店か…」と、深いため息をつきながら入ってきたその人物は、周囲の騎士たちから注目されていた。なぜなら、その人物はあまりにも自信満々な様子で、まるで自分が世界の中心であるかのような雰囲気を醸し出していたからだ。

「おや?」と、店員が声をかけると、その人物はゆっくりと顔を上げた。

「私はパブテマス、預言者にして未来を視る者。」と、胸を張って名乗った。

「預言者?」と、店員が首をかしげると、パブテマスはうなずいて続けた。「そうだ、私は未来の出来事を予見し、その運命を切り開く者だ。」

その言葉を聞いた店内の騎士たちは、ざわめきながらも興味津々で話を聞いていた。「おお…未来を視る者だと?それなら、来月の冒険の報酬が倍になるとか、そんな未来を見てほしいぞ!」

「いやいや、私が見えるのは、そういった凡人の未来ではない。」とパブテマスは手を振った。「我が目に映るのは、もっと壮大な未来だ。だが、今はまず、この店に来てしまったのだ…」

「なるほど…」と店員が言うと、「じゃあ、どうしてこの店に?」と尋ねた。

パブテマスは深いため息をつきながら言った。「実は、私の未来を予見する力が…少しだけ乱れているのだ。この店に来た理由も分からぬまま、ただここに足を運んでしまった。」

「そんな時に…食べ物が必要ということですね。」と店員がにっこりと微笑むと、「確かに…そうだな。私の未来を正確に視るためには、まず腹を満たさねばならぬ。」とパブテマスはうなずいた。

店員は少し考えた後、「それなら、こちらの『魔力回復チョコレート』や『エネルギー満タンパウダー』がおすすめですよ。」と手に取って勧めた。

「うむ…」とパブテマスは目を閉じて一瞬考え込み、「それを…ひとつ頼む。」と答えた。

その瞬間、隣に立っていた騎士がパブテマスの背中を叩きながら、「おいおい、未来が見える預言者が、こんなポーションで未来を回復するなんて、意外だな!」と笑った。

「ふむ…未来を予見する力に、エネルギーが足りていないというのも、まったく情けないものだな。」とパブテマスはうなずきながら言った。

その後、パブテマスは無事に商品を手に取ると、店員に支払いをし、再び口を開いた。「さて、これで未来の混乱を収められるだろう。だが、私の予知によると…この店、近いうちに大きな変化が訪れるだろう。」と、謎めいた言葉を残して去っていった。

「えっ?」と店員がその言葉を聞いていると、隣で見ていた騎士が「ああ、あの預言者、昔もそんなこと言ってたな…」とつぶやいた。

「それにしても、未来の預言者がこんな普通のアイテムを買うなんて…ちょっと予想外だな。」と、他の騎士が言うと、店内はまたしばらくその話題で盛り上がった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...