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第七十一話:魔力回復トローチ登場!

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今日も賑やかな店内。あちこちで騎士たちや魔物たちが談笑しながら商品を選んでいる。その中で、特に注目を集めているのは、つい最近新たに取り入れた「魔力回復トローチ」だ。

「これ、魔力がどんどん回復するって本当か?」
「うん、実際に試してみたんだが、結構効果があるんだよ。」

と、店内で騎士たちが話している。魔力回復トローチは、最近話題になり始めたアイテムで、特に冒険者や魔物たちに大人気だ。小さなキャンディのような形をしており、口に入れるとほんのり甘い味が広がる。これで魔力が回復するというから、試してみない手はない。

「うーん、でもどうしてトローチなんだろう?魔法の薬とかじゃダメなのか?」
「ああ、魔力回復薬だと、どうしても味が苦かったり、持ち運びに不便だったりするだろ?トローチだと、ちょっと舐めてるだけで魔力が回復するし、しかも味が美味しいから、癖になるんだ。」

なるほど。そういう点でトローチは、魔力回復の新しい形としてヒットしたわけだ。だが、ここで気になるのは、さっきから店の奥で騎士エールがもじもじしていることだ。

「エール、どうした?」
「うーん、実は…」

エールがやっと口を開いた。

「最近、ダンジョンで魔力が足りなくなった時があってさ。その時に、この魔力回復トローチを試したんだ。」
「うん、それでどうだった?」
「いや、効果はあったんだ。でも、ちょっとな…」

エールがちょっと恥ずかしそうに言う。

「なんだよ、気になるじゃないか。」
「実は、舐めた後に…もう一個舐めたくなっちゃってさ。結局、三つぐらい舐めちゃったんだよ。」
「おいおい…それ、さすがにやりすぎだろ。」
「いや、だって美味しいんだもん…」

その話を聞いた他の客たちも、思わず笑いをこらえきれなかった。エールのリアクションが妙におかしくて、店内が一瞬笑いに包まれる。

「三つ舐めるとどうなるんだ?」
「いや、特に何も起こらなかったんだが、次の日、異常に魔力が多すぎて、ちょっとした魔法を使うたびに大爆発しちゃったんだよ!」

「おいおい、大爆発って…」
「まあ、幸い誰も怪我はしなかったんだけど、周りの草木が全部吹き飛んでしまって…」

エールは照れくさい顔をして続ける。

「だから、トローチは一日一個までだなって、今は決めてるんだ。」

その後、魔力回復トローチの販売がさらに好調になった。もちろん、エールのように、つい過剰に舐めないように注意書きが添えられることになったのは言うまでもない。

「お前も気をつけろよ、エール。」
「うるさいな、俺はもう大丈夫だって。」

その後も店内では、魔力回復トローチを手にした冒険者たちが楽しそうに買い物をしていった。
この新アイテム、やっぱりみんなの役に立ってるんだな、と感じつつ、私はまた一つ、新しい商品が店の人気アイテムになったことに満足感を覚えるのだった。

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