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第六十九話:今日は何をお探しですか?
しおりを挟む今日もまた、店内は賑やかな魔物たちや騎士たちでいっぱいだ。いつものように、カウンターで飲み物を手にしたり、スナック菓子を物色したりするお客様たち。だが、今日は何か少し雰囲気が違う気がする。
「お、エールじゃないか。」
「おお、久しぶりだな。最近どうしてた?」
今日も元気にやってきたのは、いつもの鎧姿の騎士エール。さすがに少しは疲れているようだが、元気そうだ。
「まあ、相変わらずだよ。」
「そうか、元気があればいいんだ。お前、何か今日も大冒険してきたのか?」
エールは軽く肩をすくめる。
「うーん、今日はそんなに冒険してないんだけど…」
「じゃあ、何か他に探し物でも?」
エールは少し悩んだ後、目を輝かせて言う。
「実はさ、この店でしか買えないっていう『魔法のクッキー』があるって聞いて、今日はそれを買いに来たんだ。」
「魔法のクッキー?」
「そう。食べると、ほんの少しだけ魔法が使えるようになるらしいんだ。」
「おお、それは便利そうだな。」
「でも、実際に使えるかはわからないんだけどね。」
それを聞いて、私はちょっと疑問に思う。
「どうして、そんなものが必要なんだ?お前、別に魔法は使えないだろ?」
エールはにやりと笑う。
「いや、ちょっとしたアクセントとして試してみたくてさ。」
その言葉に、私はなんとなく納得した。エールは大冒険家だから、少しでも自分を強化しようという気持ちがあるんだろう。
「それじゃ、魔法のクッキー、探してみよう。」
私は店の棚を見回す。すると、ちょうどいいタイミングで、他の魔物たちも来店した。
「おっと、みんなも来たな。」
入ってきたのは、オークのタロー、そして先日ポテトチップスを大量に買って行ったワプスさんだった。二人は軽く挨拶をしながら、店内を見渡す。
「おお、エールか。今日も元気そうだな。」
「うん、元気だよ。実はさ、魔法のクッキーを探しているんだけど。」
「魔法のクッキー?それって、効くのか?」
「どうだろうね、使ったことがないからわからないけど、少しだけ魔力を感じるって話だ。」
「まあ、買ってみるか。」
ワプスさんが棚を確認し、魔法のクッキーを見つけると、ちょっと不安そうに顔をしかめた。
「うーん、これって本当に効くのか?」
「だからこそ、試してみようじゃないか。」
結局、エールとタロー、ワプスの三人が魔法のクッキーを手に取り、カウンターに並んだ。私はそれを一つずつ袋に入れながら、ふと気づいた。
「でもさ、魔法のクッキーって、食べてからどうするんだ?」
エールがにっこりと笑いながら答えた。
「うーん、それは試してみてからのお楽しみってことで。」
私たちがそのまま楽しげに雑談していると、さらに店内に騎士や魔物たちが集まってきて、賑やかな雰囲気が広がる。何だか、今日はみんなが集まる理由があるようだ。
「そういえば、他のお客さんたちも今日はなんだか疲れているみたいだな。」
「うん、どうやらみんな、日々の冒険で疲れが溜まっているようだ。」
その後、エールたちは魔法のクッキーを持って帰って行った。そして、魔力を少し感じるかもしれないという期待を胸に、それぞれの冒険へと向かっていった。
「さて、今日も一日が始まったな。」
私は改めてそう思いながら、カウンターに座り、次のお客様が来るのを待った。店内はいつも通り、賑やかな魔物たちや騎士たちで溢れ、毎日が少しずつ特別なものになっていくのだと感じる。
魔物たちの、そして騎士たちの小さな冒険の中で、少しでも役立てるように。そんな思いを胸に、私は今日もお客様を迎える準備をしていた。
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