上 下
67 / 185

第六十七話:お買い物の新常識

しおりを挟む

「いらっしゃいませ!」
今日もいつものように平穏無事な一日が始まり、私はコンビニの入り口でお客様を迎える準備をしていた。その時、扉が開いて、新しいお客様が入ってきた。

「オホホホホ!これが噂の異世界コンビニですね!」
声の主は、豪華なローブを身にまとった魔法使い風の女性だ。エレガントな装いに、長い白髪が特徴的で、魔法の杖をしっかり握っている。周囲には、ちょっとしたオーラが漂っているようにも見える。

「いらっしゃいませ!」私は笑顔で迎えた。「ご来店ありがとうございます。どうぞごゆっくりご覧ください。」

その女性は、辺りを見渡すと、突然大きな声で叫んだ。
「ふふふ…これが魔物や冒険者が集うコンビニ…面白いですね。では、まずは私の魔法を試してみましょうか!」

「え?」
思わず驚きの声を上げる私に、その女性はニヤリと笑った。

「何事も挑戦ですからね。これが私の魔法、"空間歪曲(アーク・ワーニング)"!」

そして彼女は魔法を唱え、杖を一振りした瞬間、店内の床がひび割れ、空間が歪み始めた。まるで、天井が少しずつ下に下がってきたかのような錯覚に陥る。

「うわっ、何ですかこれ!?」

周囲が一瞬でぐるぐる回り出す中、私は反射的に後ろに飛び退いた。魔法が一段落した後、無事に空間が元に戻ると、女性は楽しそうに拍手をしていた。

「オホホホ!どうだ!驚いたかしら?」

「ちょ、ちょっと待ってください!店舗に魔法を使うのは…!」
私は必死に手を振りながらその女性に説明を試みたが、彼女は平然としていた。

「大丈夫よ、心配しないで!私が使ったのは"空間修復魔法"だから、ちょっとだけ試しただけ。これくらいなら店内の魔力供給装置で修復できるわ。」

「魔力供給装置!?」

「はい、あそこの棚にちょっとした魔法装置があるから、実際には問題ないわよ。」彼女は店内の棚を指さした。その棚には確かに、見慣れない装置が置いてあったが…。

「…これ、いくらなんでも力強すぎませんか?」
私は頭をかきながら、思わず不安な顔をしてしまった。

その女性は、私の困惑を見て、にっこりと笑って言った。
「オホホホ!あまり驚かないで。私は"アナスタシア・ウィンダーリス"、魔法の使い手としても有名な人物なのよ。何せ、こうして空間を歪めるくらいは日常茶飯事!」

「も、もしかして、"空間歪曲"って…普段からやってるんですか!?」

「もちろんよ!空間の歪みを使えば、どんなに遠くのものでも手に入るし、物理的な障害を無視できるからとても便利。試しに見てみる?」

「いや、見たくないです!」

私は心の中で叫びながらも、必死に女性の魔法を抑え込もうとしていた。

その後、アナスタシアさんは無事に店内の商品を見て回り、結局、何も壊さずに買い物を終えた。彼女は魔法に頼りすぎず、普通にコンビニの商品を気に入ったようだった。

「オホホホ、面白い店だわ。じゃあ、これを頼むわね。」

彼女が指差したのは、先日新しく入荷した「魔王の絶品ポップコーン」。

「それ、実は少し辛いので注意してくださいね…」

「あら、それもまた挑戦ね!ポップコーン、頂きますわ!」

アナスタシアさんは満足そうにポップコーンを手に取り、すぐに袋を開けた。すると、ぽつりと一言。

「…まあ、こんなに辛いのもなかなか面白いわね。魔王の癖をわかっているのかしら?」

「す、すみません。私たち、あくまで"異世界のコンビニ"なので…」

アナスタシアさんは、わずかに笑いながら私に言った。

「フフフ、よく分かってるわね。でも、私は楽しんだわ!また来るわよ、店主!」

そう言って、アナスタシアさんは再び魔法の杖を使って空間を歪め、店を去っていった。

その後、店内に戻った私は、しばらく放心状態になり、何が起きたのかを整理することにしばらく時間がかかった…。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...