64 / 185
第六十四話:異世界のコンビニ、今日も賑わい
しおりを挟む今日もまた、私の小さなコンビニは異世界の住人で賑わっている。魔物たちや騎士様、そして時々神様までもが訪れて、毎日が一種の冒険のようだ。さて、今日はどんな出来事が待っているのだろうか…。
店内にまず現れたのは、よく見かける「ダークエルフ」のカミラさんだ。彼女はいつもクールで少し謎めいた雰囲気を漂わせながらも、必要なものはちゃんと買いに来てくれる。
「店主、今日のおすすめは?」カミラさんがカウンター越しに質問してきた。
「今日は、魔界産のチーズが入荷しました。すごく濃厚で、パンにもぴったりですよ。」私は自信満々に答える。
「チーズか…悪くないわね。」カミラさんは頷き、しばらく棚を眺めてから、「じゃあ、それと赤ワインもください。」と頼んだ。
「赤ワインですね、魔界産のものが入っていますので、少し高めですが、非常に美味しいです。」私は商品を手渡しながら、値段を伝えた。
「問題ないわ。何なら、チーズと一緒に楽しむわ。」カミラさんはお金を支払いながら、さっさと袋に物を入れていった。
「ありがとうございました!」私は元気よく見送る。
その直後、ドアのベルが鳴って、今度は「ゴブリン」のトムが入ってきた。彼は少し小柄で、顔にやんちゃな笑みを浮かべている。
「おーい、店主!今日はどんな面白い商品があるんだ?」トムはカウンターに手をついて、期待の眼差しを向けてきた。
「今日は新商品があるんですよ、トムさん。『魔界流・超激辛スナック』。これ、食べたらどんな魔物でも汗だくになること間違いなしです。」私は袋を取り出して見せた。
「おお、それはいい!さっそく買うぜ!」トムは興奮気味に商品を受け取り、手に持っていたお金をカウンターに放り投げた。
「ありがとうございます、トムさん!お気を付けて!」私はすぐに会計を済ませ、トムが去って行くのを見送る。
その後、次に来たのは「サキュバス」のリリィさんだ。彼女はいつもどこか楽しげに歩いているが、今日は少し落ち着いた様子だ。
「こんにちは、リリィさん。今日は何をお探しですか?」私はカウンター越しに声をかけた。
「店主、今日はちょっとリラックスしたい気分なの。お香とか、リラックスできるものがあったら教えて。」リリィさんは微笑みながら言った。
「リラックスですね。じゃあ、こちらの『魔界産ラベンダーの香り』はいかがですか?リラックス効果抜群ですよ。」私はお香のパッケージを手に取って見せた。
「いいわね、それをもらうわ。それと、甘いお菓子も。」リリィさんは少し考えてから、手に取ったのは「魔界産ハニーキャンディ」。
「これで、ゆっくりお昼寝ができそう。」リリィさんはニッコリと微笑んで会計を済ませる。
その後、店内に入ってきたのは、見たことがあるが、少し不安そうな顔をしている「スライム」のジューシーだった。
「ジューシーさん、どうしたんですか?いつも元気なあなたが元気ないですね。」私は心配そうに声をかけた。
「実は…ちょっと悩んでるんだ。」ジューシーはぽつりとつぶやいた。「最近、体が少し乾燥してきてて…」
「乾燥ですか?」私は驚きながらも、「それなら、こちらの『魔界潤いジェル』がおすすめですよ。スライムさんにはぴったりです。」と、特製のジェルを差し出した。
「おお、これなら乾燥も防げそう!ありがとう、店主!」ジューシーは元気を取り戻し、笑顔で会計を済ませる。
その後も次々と常連たちが来店し、私のコンビニは今日も賑やかだ。皆、それぞれに異世界の住人としての悩みや楽しみを持っているけれど、こうして私の店で彼らの笑顔を見られるのは本当に嬉しい。
さて、次に来るお客様はどんな人たちだろう?どんな商品が求められるのか、少し楽しみな気持ちが湧いてきた。
1
お気に入りに追加
357
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる