上 下
52 / 185

第五十二話:ポテトチップスの袋と古代遺跡

しおりを挟む

今日もまた、賑やかなコンビニのレジに立っていると、騎士エールがやってきた。彼の顔はいつも通り、無駄に真面目で、どこか固い印象だが、その目に今日は明らかに何か違う光が宿っていた。

「店主、ちょっと頼みたいことがある。」エールは、何かを決意したような顔をして言った。

「頼みごと?」私は少し驚きながらも、いつもの調子で答える。「なんでも言ってみてください。」

エールは手をグッと握り、力強く言った。「実は、古代遺跡の探索に行くことになったんだ。そこでだ、どうしても君に手伝ってもらいたい。」

「古代遺跡?」私は一瞬驚きつつも、その響きに興味を引かれた。「それは面白そうですね。でも、なぜ僕に?」

「それがな、実はだ…」エールは少しもじもじしながら言う。「君の店のある物が必要なんだ。」

「ある物?」私は首をかしげながら待った。

エールは視線をそらし、そしてやや恥ずかしそうに小声で言った。「ポテトチップスの袋。」

「ポテトチップスの袋?」私は思わず大声をあげてしまう。「え、なんでそれが古代遺跡に関係あるんですか?」

「実はな…」エールは真面目な顔をして言った。「古代遺跡の入口には、かなり特殊な解錠装置があって、スキャナーに何かをスキャンしないと扉が開かないんだ。そのスキャナーがどうも、ポテトチップスの袋の素材で反応するらしい。」

「な、なんですって!?」私は目を大きく見開いた。「ポテトチップスの袋ですか?」

「そうなんだ。」エールは力強くうなずいた。「その解錠装置、普通の物質では反応しないんだが、どういうわけかポテトチップスの袋の包装が通るらしいんだ。だから、君の店のポテトチップスを持って行こうと思ってな。」

「それ、すごいですね。」私は言葉を失いながらも、ポテトチップスの袋の何がそんなに特殊なのか、全く理解できなかった。

「だろ?」エールは嬉しそうに言った。「ま、君の店にあるだろう?あの、たくさん積まれているやつ。」

「ああ、あれですね…」私は棚の方に目を向けて、一番上の棚に並んでいるポテトチップスを見つけると、少し驚いた。たしかに、あの袋の素材が何か特別なものであるとは考えにくいけど、まさか遺跡の解錠に使われるとは…。

「だから、お願いだ。少し袋を用意してくれ。」エールは期待を込めて私を見つめた。

「わかりましたけど、ポテトチップスの袋がないと遺跡に入れないなんて…本当にそれで大丈夫なんですか?」私はちょっと心配になりながらも、エールの頼みを聞くことにした。

「うん、きっと大丈夫だ。」エールは安心した顔をして言った。「まあ、万が一何かおかしなことがあったら、すぐに引き返すつもりだから。」

「それならいいんですけど…」私は少し考え、ポテトチップスの袋を手に取った。「とりあえず、これでいきますか。」

エールは嬉しそうにうなずいた。「ありがとう!君に頼んでよかった。」

そして、私はエールにポテトチップスの袋を渡し、彼が喜んで店を出て行くのを見送った。なんとも不思議な依頼だったが、無事に解錠できたら、それはそれで面白い体験になりそうだ。

「さて、あとは何かおかしなことが起きないことを祈るだけだな。」私は呟きながら、棚の片づけを再開した。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...