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第五十一話:神界からの使者
しおりを挟む今日はいつもと少し違う予感がした。店内はいつも通りに騎士様や魔物たちがひっきりなしに出入りしているけれど、空気がどこかピリッとしている。そんな中、レジに立ちながらも、少しだけ胸騒ぎがする。
「ふーむ、今日も賑やかだなぁ。」私はひとりごち、棚を整理していた。
その時、店の扉が開く音が聞こえた。見ると、見たことのない服装をした人物が入ってきた。白いローブに金の刺繍が施されており、髪は長く、なぜか周囲に微かに光を放っている。まるで神々しい存在だが、今までの魔物たちとは何かが違う。
「いらっしゃいませ!」私は無意識に声をかけるが、その人物は目を細めて、私に向かって歩いてきた。
「ふむ…」その人物は私をじっと見つめてから、少しだけ微笑んだ。「貴様がこの異世界のコンビニを経営している者か。」
「えっ、はい。そうですけど…」私は少し困惑しながら答える。「あなたは…?」
その人物はゆっくりと口を開いた。「私は神界からの使者。名をアルファリオンと言う。」
「神界から…!?」私は目を見開く。「す、すみません、ちょっと驚いています…」
アルファリオンは手を軽く振って、気にするな、と言わんばかりに微笑んだ。「いや、驚くのも無理はないだろう。だが、急な話で申し訳ないが、貴様に頼みがあってきたのだ。」
「頼み、ですか?」私はもう一度アルファリオンを見つめた。
「うむ、実は我々神界には…新たな商品を開発しようという案があり、その試作品を貴様の店で売り出して欲しいのだ。」
「新たな商品?」私は少し考えてから、少し警戒した。「でも、神界の商品って…かなり特殊じゃないですか?」
アルファリオンはニヤリと笑った。「もちろん、普通の商品ではない。だが、心配無用だ。これはとても便利で、むしろ貴様の店にぴったりだろう。」
私はその言葉に心がちょっと躍る。でも、ちょっと警戒もした。「どんな商品ですか?」
アルファリオンは一歩前に進み、神々しい光を放ちながら、手をひらひらと振った。その手のひらに浮かび上がったのは、何か小さな球体のようなものだった。
「これだ。」アルファリオンが言った。
「それは…?」私は目を凝らして見た。その球体は、光を放ちながらも不安定な感じで揺れ動いている。
「これは、神界の最新技術で作られた『自己調整型おにぎり』だ。」アルファリオンは得意げに言う。
「え?」私は一瞬耳を疑った。「おにぎり?」
「うむ。」アルファリオンはうなずいた。「普通のおにぎりだと思うなよ。このおにぎりは、食べる者に合わせて具材を変化させるという素晴らしい魔法がかかっているのだ。」
「具材を変化…?」私はちょっと理解できなかった。「それって…どういうことですか?」
「例えば、貴様がこれを食べるとしよう。すると、このおにぎりは貴様の体調や気分に合わせて、具材を自動的に変えてくれるのだ。体調が悪いときは消化に良いもの、元気なときは栄養が豊富なもの、さらには気分が落ち込んでいる時にはおにぎりの中身が笑顔を引き出すための具材に変わるのだ。」
「それ、すごすぎませんか!?」私は思わず声を上げてしまう。「でも、なんでそんなすごい商品がここに…」
「それが問題なんだ。」アルファリオンは少し表情を険しくした。「実は、このおにぎり、まだ完全に調整が終わっていなくて…たまに具材が全然関係ないものに変わってしまうことがあるんだ。」
「全然関係ないもの…?」私は少し不安になる。「例えば?」
「例えば…この間、食べた者が激辛唐辛子を大量に食べたと思ったら、突然おにぎりの具材が完全に唐辛子だらけになって、食べるのが大変だったとか。」アルファリオンが少し苦笑いをしながら言う。
「それって…」私は心配になりつつも、少し笑ってしまった。「うーん、それは確かに大変だ…」
「だから、今度は貴様の店で実験的に販売して、正確な調整を行いたいのだ。もちろん、少しリスクはあるかもしれんが、問題があればすぐに取り換えさせていただく。」
私は一瞬考え、そして口を開いた。「うーん、確かに興味深いですけど、リスクもあるし、まずは試験的に少量から販売しませんか?」
「そうだな、それが賢明だろう。」アルファリオンは満足げにうなずいた。「では、少量をお渡しするので、うまく調整して売り出してくれ。」
そして、アルファリオンは小さな箱を私に渡してきた。「これで試してくれ。」
「わかりました。」私はその箱を受け取りながら、少し戸惑いつつも決心した。「それでは、さっそく試してみますね。」
「頼んだぞ。」アルファリオンはにっこりと笑い、神々しい光の中で店を出て行った。
「さて、どうなることやら…」私は箱を見つめながら、思わず少し笑ってしまうのだった。
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