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第三十九話:サイクロプス、来店!
しおりを挟むいつものように朝の時間帯、コンビニ・ファンタジーは常連客たちで賑わっていた。ゴブリンたちが最新のトレーディングカードを物色し、スライムが店内の冷蔵庫の前で「ぷるぷる」と揺れて涼んでいる中、ドアが突然、ミシミシと軋む音を立てて開いた。
「ん?重そうだな……」
私は視線をドアの方へ向けた。そこには巨大な影が店内に覆いかぶさるように立っていた。目はひとつしかなく、体は岩のように硬そうだ。お客様リストに新しく加わった、サイクロプスだ。
「ここが話題の『いせコン』か?」
サイクロプスの声は低くて重厚で、店全体に響き渡った。店内は一瞬静まり返り、スライムが驚きでぷるんと跳ね、商品棚にぶつかってしまった。
「あ、いらっしゃいませ!ようこそ、コンビニ・ファンタジーへ!ご用件は何でしょうか?」
私は慌てて笑顔を浮かべて出迎えた。こんな巨大な客は初めてだ。棚や商品を潰されないよう気をつけなければならない。
「俺様は腹が減っている。なんかうまい肉はあるか?」
サイクロプスはゴツゴツとした指を舐めながら言った。その目は冷蔵ケースをじっと見つめている。
「肉ですね。えーっと、こちらの『プレミアムビーフジャーキー』や『魔獣ステーキ弁当』がおすすめです!」
冷蔵ケースから商品を取り出して見せると、サイクロプスの目がキラリと輝いた。
「それだ、それ!全部くれ!」
彼は大きな手で冷蔵ケースに手を伸ばし、商品をまとめて抱え込もうとする。棚が揺れ、店全体がきしむ音がした。
「ちょ、ちょっと待ってください!順番にお渡ししますから!」
私は必死に声をかけて棚を守りつつ、商品を一つ一つ丁寧にカウンターへ運んだ。
結局、サイクロプスは満足げに商品を購入し、袋を片手でぶら下げて店を後にした。その大きな背中を見送りながら、他の客たちはほっとした表情を見せた。
「次は何が来るんだろうな……」
私はため息をつきつつも、笑いをこらえきれなかった。これがコンビニ・ファンタジーの日常なのだ。
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