34 / 185
第三十四話:またしても新規顧客が!しかも、変わり種?
しおりを挟む今日もコンビニは平和だった。いつものように騎士様たちや魔物たちが買い物に来て、私はレジで注文を捌いていた。
「コボルトさん、また肉ですね。昨日も食べたばかりじゃないですか?」
「肉は毎日食べるものだろ!」と、いつものように元気よく返事するコボルト。
そんな和やかな空気の中、突如として店の扉が開いた。「ガラガラ」と軽快な音とともに、現れたのは…一風変わったお客様だった。
そのお客様は、何と「カメ」。カメと言っても、普通のカメではない。全身が輝くような金色に光っていて、甲羅の上には小さな宝石のようなものが散りばめられている。しかも、そのカメが…歩いている!? 普通なら、カメはゆっくりとしか歩けないが、このカメは堂々と店内に入ってきて、なんと人間のようにレジカウンターを目指しているではないか。
私は思わず目を見開いて、「あれ?」と口に出してしまった。
「う、うわ! こ、これは…まさか?」
「なんだ、店主、驚いているようだな」とリオネルが、ニヤニヤしながら言う。
「ちょっと待って…なんでカメが…しかも、立ってる?」
私は驚きのあまり、言葉が詰まってしまう。
そのカメは何も言わず、まっすぐに私に向かって来て、ついにレジカウンターの前に到達した。
「おや、こんにちは!」と、私はやっと我に返って、カメに声をかけた。「何かお探しですか?」
カメは「フー」と深いため息をつきながら、ゆっくりと口を開いた。
「どうも、実は最近ダイエットをしているんだ。」
「ダイエット?」
「そうだ。いや、元々、太り気味でな。最近は歩く練習をしているが、もう少し栄養を摂りたいと思ってな。」
「それで、コンビニに?」
「うむ。こういうお店は便利だし、たまには何か特別なものを買いたくてな。」
私はカメの言葉に驚きながらも、すぐに状況を理解した。どうやら、ダイエット中のカメが特別な食材を探して来たらしい。
「そうなんですね! それなら、健康食品をいくつかご紹介できますよ。例えば、こちらの低カロリーのスナックや、こちらの新作のサラダなどはどうですか?」
「うむ…スナック、サラダか… まあ、何でもいいが、ちょっとだけ味見させてくれ。」
カメは興味深そうにスナックを手に取った。「味見か…。さすがに食べ物に対して厳しい選択眼をお持ちだ。」
店内の魔物たちもその様子を見て、口々に声を上げていた。
「おいおい、あのカメ、すげー歩いてるぞ!」「あれって、もしかしてカメのダイエットなのか?」
「動物ってダイエットするんだな、意外だな…」
「で、どうだ、味は?」
私は期待を込めてカメに問いかけた。
すると、カメはスナックを食べてからゆっくりと顔を上げ、「うむ、なかなか悪くないな。よし、これを買おう。」
そして、驚くことにカメはそのスナックの袋を買って、さらにサラダまで購入してくれた。支払いを終えた後、カメは堂々と店を出て行った。
「これ、また新しいお客様だな」
リオネルがにやりと笑いながら言った。
「カメさんが常連になるとはな…」
コボルトも驚いた様子で呟いた。
その後、店内には他の魔物たちも集まり、「あのカメって本当にダイエットしてるんだろうか?」と話題にしていた。
そんな中、私は一つ思った。「異世界のコンビニは、毎日が新しい発見の連続だな…」
今日もまた、予想外の展開が待っているのかもしれない。それにしても、カメのダイエットが本当に続くのか、少し気になったのは私だけだろうか。
13
お気に入りに追加
359
あなたにおすすめの小説
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる