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第三十話:新たなる客人、魔界の伯爵登場
しおりを挟むある日の午後、店内が平和に過ごされている中、突如として重々しい足音が響き渡った。ドアベルが音を立てると同時に、見慣れない人物が店内に姿を現した。彼の姿は一目で異様だった。黒いマントをまとい、鋭い目つきと長い銀髪が特徴的なその男は、見るからにただ者ではない。
「ここが例の異世界コンビニか…。噂通りの賑わいだな」
男は店内を見回し、興味深そうに鼻を鳴らした。その声には威圧感があり、周囲の魔物たちは一斉に緊張し、後ずさりする。
「いらっしゃいませ!何かお探しですか?」
俺は勇気を振り絞って声をかけた。相手が一体誰なのかはわからなかったが、店主としての役割を果たさないわけにはいかない。
「ふむ、まずは名を名乗らせてもらおう。私は魔界の伯爵、ヴァルフォル卿だ。ここには特製の菓子があると聞いてな、それを確かめに来た」
そう言いながら、ヴァルフォル卿は優雅に手を振り、魔物たちを押しのけるようにレジへと歩み寄った。
騎士リオネルの勇み足
「おっと、それはさせない!」
突然、店の奥から騎士リオネルが現れた。いつものように勇ましい顔つきで、剣を構えている。魔物たちは「おお、またリオネルの出番か」と期待の目で見つめた。
「リオネルさん、またですか…今回は剣はしまってください」
俺は頭を抱えながら注意するが、リオネルは聞く耳を持たない。彼はまっすぐにヴァルフォル卿に向かって言った。
「伯爵だか何だか知らんが、ここは俺の行きつけのコンビニだ。勝手は許さん!」
リオネルの一言に店内は一瞬、シーンと静まり返る。だが、次の瞬間ヴァルフォル卿は大笑いし始めた。
「ははは!面白い騎士だな。だが、私はただの客だよ。争う気など毛頭ない。ただ、この世界の食文化を楽しみに来ただけだ」
彼は肩をすくめながら、笑顔を浮かべた。その言葉に魔物たちも騎士リオネルも拍子抜けし、場の緊張がふっと和らいだ。
店内の新しい賑わい
結局、ヴァルフォル卿はコンビニ特製の「魔界風チョコレートマフィン」を購入し、満足げに帰っていった。店内には新しい話題が広がり、魔物たちが「伯爵様も常連になるか?」と盛り上がりを見せていた。
「店主、このコンビニは本当に不思議な場所だな…また一つ新しい伝説が生まれたな」
リオネルが呟き、俺は苦笑しながら棚にマフィンを補充した。
この世界のコンビニ経営、次は何が起こるかわからない。だが、それこそがこの店の面白さだ。
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