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第二十一話:カードゲームが引き起こした大騒動

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店を開けると同時に、俺はすでに異世界の騎士や魔物たちの熱気を感じていた。いつもは静かな朝の空気が、今日は異様な熱気に包まれている。その原因は明白だった。前日に発売した『異世界トレーディングカードゲーム』が、想像を超える大ヒットとなり、騎士たちも魔物たちも一度触れてしまったその魅力に取り憑かれていたのだ。

「店主! もうカードパックは残っているか?」
騎士リオネルが、開店と同時に店に駆け込んでくる。その後ろには、オークやゴブリン、さらには一匹のサラマンダーまでが順番を待ちながら続いている。朝からこんなに賑わうのは、この異世界コンビニでも初めての経験だった。

「いらっしゃいませ、リオネル様! カードパックは残り少ないですが、まだ在庫はありますよ。」
そう言いながら、俺は棚の最後のパックを指差した。すると、騎士リオネルはまるで戦場での突撃命令を受けたかのように飛びついて、そのパックを手に取った。

「よし、これで今日の勝負は決まった!」
リオネルは勝ち誇った笑みを浮かべて言う。周りのゴブリンたちが「ズルいぞ、俺たちも欲しい!」と騒ぎ出したが、リオネルはその視線に動じることはなかった。

「お前たち、騎士の名にかけて公正な勝負を挑むのだ。それに勝てば、お前たちにもカードが手に入るかもしれんぞ。」
その言葉に、店内は一瞬の静寂に包まれたかと思うと、次の瞬間には「よし、やってやる!」と魔物たちの歓声で満ちた。どうやらリオネルの一言でカードバトル大会が即席で始まることになったらしい。

テーブルの上に、異様な真剣さでカードを並べるリオネル。その向かいに座るのは、意外にもオークの大男だった。見た目は無骨だが、手に持つカードを見つめる目はまさに職人のそれだった。

「俺のターン、ここで『烈風の双剣士』を召喚する!」
リオネルが宣言すると、カードから青白い光が放たれ、まるで実体化したかのような双剣士の幻影が現れた。店内の他の魔物たちが「おおっ」と感嘆の声を上げる。

「だが、俺も負けねぇぞ!」
オークは手持ちのカードを1枚バンと置いた。「ここで『呪いの炎魔』を召喚だ!」と叫ぶと、カードから黒煙が立ち上り、炎の魔物が姿を現した。

カードバトルが進むにつれ、店内の緊張感は高まっていく。あちこちで観客が歓声を上げたり、呟きあったりして、もはやここはコンビニというより、カード大会の会場そのものだった。


熱戦が続いた数十分後、勝敗が決した。リオネルが最後の一手を打ち、オークが驚愕の表情を浮かべたまま「完敗だ……」と呟く。その瞬間、店内の歓声が天井を突き抜けんばかりに響き渡った。

「さすがリオネル様! 強すぎる!」
ゴブリンたちが拍手を送る中、リオネルは満足そうに頷き、カードを丁寧に片付けた。

「だが、面白かった。これからはこのカードゲームを通じて、我々はもっと互いを理解し合えるかもしれん。」
リオネルの言葉に、魔物たちも騎士たちも頷き合った。

それから数日後、このカードバトル大会の噂は瞬く間に広がり、俺のコンビニは異世界でのカードバトルの聖地として有名になった。その人気に押され、俺は在庫管理に追われる日々を過ごすことになるのだった。

「まったく……コンビニ経営ってこんなに大変なのか?」
そう呟きながらも、俺は笑いをこぼした。この異世界では何が起こるかわからない。それが、面白い。

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