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第二十話:騎士と魔物、カードバトルで友情を深める
しおりを挟むある日、店の前に長蛇の列ができていた。列を作っていたのは騎士やらゴブリン、オークなどの魔物たち。彼らが共に並ぶ光景は異様だが、この世界ではもはや日常の一部だ。理由は一つ、新たに入荷した『異世界トレーディングカードゲーム』だ。このカードゲームは、バトルを通じて実際に戦闘経験や技を学べるという画期的なものだった。
「おい、俺の番だ! 早くしろ!」
ゴブリンが興奮気味にオークを押しのけようとするが、オークは冷静に自分の順番を守っている。
「騎士リオネル様まで来てるってよ。」
列の後方から囁き声が聞こえ、周りがざわめく。俺は店のレジでその様子を眺めながら、思わずため息をついた。こんな混雑した日には、大変なことが起きるのが常だ。
「やあ、店主。今日はこのトレーディングカードというものを試してみたいと思ってな。」
その声に振り向くと、鎧の輝きもまばゆい騎士リオネルがそこに立っていた。店内の客たちはその威風堂々とした姿に一瞬で静まり返り、ゴブリンもオークもピタリと動きを止めた。
「い、いらっしゃいませ、リオネル様! トレーディングカードですね? 今すごく人気で…」
俺が話す前に、リオネルはすでに手に取っていたカードパックをじっと見つめていた。その表情は戦場で敵を見極めるときのように真剣だ。
「どれ、試してみるか。おい、コボルト、勝負だ。」
リオネルが店内にいたコボルトに声をかけると、コボルトは一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに笑顔を浮かべてカードを握りしめた。
「騎士様とバトルできるなんて、夢みたいっす! お手柔らかにお願いします!」
周りの客たちは興味津々で二人のカードバトルを見守ることに。まるで見世物小屋が開かれたような賑わいだ。
「行くぞ、『伝説の聖剣士』カードを召喚!」
リオネルはカードを場に出し、堂々と宣言した。カードから輝かしい光が放たれ、幻想的な戦士が姿を現した。その瞬間、店内の魔物たちから感嘆の声が漏れた。
「さすが騎士様だ、迫力が違う!」
ゴブリンたちが口々に叫ぶ。
「負けないっす! オレはこの『怒れる火の精霊』カードを出します!」
コボルトも負けじとカードを場に置いた。途端に炎の精霊が立ち上がり、周囲に小さな熱気を放つ。
カードゲームは白熱し、リオネルとコボルトの真剣勝負は観戦する魔物や騎士たちをますます引き込んでいった。誰もがカードの駆け引きに目を奪われ、勝負の行方に固唾を飲む。
「ここで必殺技、『勝利の一閃』を発動!」
リオネルがカードを掲げると、店内の雰囲気が一瞬にしてピークに達した。だが、そのとき――
「ちょ、ちょっと待って! このカードが間違ってるっす! バグがある!」
コボルトが指摘すると、店内は一瞬の沈黙に包まれた後、どっと笑い声が広がった。バグがあるとは異世界らしいギャグである。
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