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第十三話:新たな客と迷子の冒険者

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コンビニの扉がカラカラと音を立てて開いた。昨日、今日と多くの常連客が来ていたが、今日は少し様子が違うようだ。入ってきたのは、まだ若い冒険者らしい男の子だ。

「おっ、君は初めてだな?」
俺が声をかけると、男の子は少し驚いた顔をしてから、こくりと頷いた。

「は、はい! 実は…迷子になっちゃって…」
その言葉に、俺は少し驚いた。迷子の冒険者だなんて、珍しい。

「迷子?」
「えっと、ダンジョンの途中で道を間違えちゃって、戻れなくなって…それで、近くの村を探してたらここに辿り着いたんです!」
男の子はちょっと照れくさそうに頭を掻きながら話した。どうやら、ちょっとした冒険の失敗が原因のようだ。

「なるほど、君はダンジョンに挑戦中か。」
「はい! でも、もう少しでモンスターに囲まれそうだったので、逃げてきました…」
その言葉に、俺は少し苦笑いを浮かべながらも、男の子を店の奥に案内した。

「とりあえず、ここで少し休んでいきなよ。飲み物とか、食べ物もあるから。」
「ありがとうございます!」
男の子は目を輝かせて、店の中を見渡した。

「俺は店主、よろしくな。」
「よろしくお願いします!」
そう言って、男の子はさっそく冷蔵庫の方へと歩き出した。

その後、少ししてから騎士様とコボルトがやってきた。いつものように、元気よく店に入ってきて、コボルトはすぐに声を上げた。

「おお! 今日は新しい顔だな!」
騎士様もにこやかに男の子を見て、軽く頷いた。

「確かに、君は見たことがないな。」
男の子は少し緊張した様子で、騎士様とコボルトに挨拶をした。

「えっと、こんにちは。僕、冒険者のリクって言います!」
「おお、リク君か。何か困ってるのか?」
騎士様が優しく声をかけると、リクは少し恥ずかしそうにうなずいた。

「実は、ダンジョンで迷子になっちゃって…ちょっと動揺してて、しばらく休ませてもらってるんです。」
「ほほう、ダンジョンか。」
騎士様はリクに軽く微笑んでから、少し考え込むような顔をした。

「でも、ダンジョンに行くときは、どんな食べ物や飲み物を持っていくんだ?」
「えっと、いつもはポーションとか…でも、持ちきれなくて。」
「それなら、この店で売ってるエナジードリンクとかがいいぞ。」
コボルトが笑いながら言った。どうやら、コボルトもすでにこの店の商品の魅力に気づいているようだ。

「エナジードリンク…それはちょうどいいですね!」
リクは嬉しそうに言うと、すぐに冷蔵庫の前に戻り、エナジードリンクを取り出した。

「これをダンジョンに持っていこう!」
リクは満足そうに笑顔を浮かべ、冷蔵庫から出した飲み物をレジに持って行った。

その後、リクはエナジードリンクとおにぎりを買い、騎士様とコボルトと一緒に店の外へと出て行った。彼らが向かった先は、どうやらリクが迷子になったダンジョンの入り口らしい。

「大丈夫かな?」
俺は少し心配になって、店の窓から彼らの様子を見守っていた。騎士様がリクに軽くアドバイスをしているのが見え、コボルトもおおいに盛り上がっている様子だった。

その後、しばらくしてからリクが無事に店に戻ってきた。顔には少し疲れが見えるものの、無事だったようだ。

「店主、ありがとうございます!」
リクは店に入ると、すぐに礼を言ってきた。

「どうだった? ダンジョンは。」
「はい、無事に出口までたどり着けました! すごく助かりました!」
リクは目を輝かせて、俺に感謝の言葉を述べた。

「よかったじゃないか。」
俺は軽く微笑んで答えた。

その後、リクは「またダンジョンに挑戦する」と言って、再び外へ出て行った。

「今日は面白い一日だったな。」
俺は少し顔を上げ、店の周りを見渡した。新たな冒険者がやってきて、そして少しのアドバイスで彼が成長していく様子を見ることができたことに、少しの満足感を覚えた。

「また明日からも、いろんな客が来るんだろうな。」
俺はそう思いながら、店の整理を続けた。

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