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第十話:魔物がまた来た!?
しおりを挟む今日も朝から忙しい一日が始まった。天気も良く、近所の住人や冒険者たちがいつものように店に立ち寄っていく。俺は少し早めに開店し、商品の補充や整理をしていると、ふと扉の音が聞こえてきた。
「カラン…カラン…」
「おっ、いらっしゃい!」
振り返ると、今度は少し違った風貌の客が現れた。それは、ゴブリンとはまた違う、見た目にちょっと強そうな魔物だった。
「おお、なんだこいつは…?」
背が高く、筋肉質な体を持ち、爪が鋭い。一見、怖い見た目の魔物だが、なんだか懐かしい感じがする。
「おい、店主、何か食べ物をくれ!」
その魔物は低い声で、俺に向かっていきなりそう言った。
「うお、いきなりだな…。」
俺は驚きながらも、まずは落ち着いて尋ねた。
「お客さん、何かお探しですか?」
その魔物はむっとした顔をしながらも、少しだけ柔らかい表情を見せた。
「俺はね、ドワー…いや、ドラゴンの子孫だ。最近、食べ物に困っててさ。ここに来てみたんだよ。」
その言葉を聞いて、俺は少しだけ驚いた。ドラゴンの子孫? ということは、普通の魔物よりもかなり強い存在なわけだ。だが、今はその話を置いておこう。
「それで、何を欲しいんだ?」
「肉だ、肉! 牛肉、豚肉、鶏肉! とにかく肉だ!」
魔物は肉が欲しいと言って、俺に迫ってきた。だが、俺が手を挙げると、すぐに冷静さを取り戻し、少し後ろに下がった。
「うーん、肉は冷凍庫にあるけど…」
俺が冷凍庫を指差すと、その魔物はじっとそれを見つめた。ちょっと面白いなと思って、冷凍庫から牛肉を一パック取り出してみせる。
「こいつはどうだ?」
「ん? ああ、これか。」
魔物はじっとその肉を見つめ、しばらく無言だったが、やがて頷いた。
「いいじゃないか。これで我がドラゴンの血も満足だろう。」
「それは良かった。でも…」
俺はちょっと思案しながら言った。
「うち、こんな大きい肉ばかりじゃなくて、調理用に切った肉もあるんだ。切り方とか、君に合った感じで提供できるけど。」
「切り方?」
魔物は眉をひそめた。
「そうだ。例えば、ステーキ用とか、炒め物用とか、用途に合わせて切るんだよ。」
「なるほど…」
魔物は目を輝かせながら言った。
「なら、ちょっと切ってくれ。」
「お、おう。」
俺は冷凍庫から肉を取り出し、包丁を使ってその肉を適当な大きさに切り始めた。魔物はその様子を真剣に見守りながら、口を開いた。
「お前、この店、すごいな。肉だけじゃないぞ、これ。」
「そうか? 他にも色々あるけど。」
「そうだ、俺もさ、ちょっと興味があるんだ。」
魔物はしばらく考え込み、そして俺に向かって言った。
「君、ここに居る間に、ちょっと試してみたいことがある。」
「試してみたいこと?」
「うん。魔法の…アイスクリームを。」
「アイス…?」
「そう、アイスクリームだ! 俺、あの冷たいものが好きなんだ。だが、この世界ではなかなか手に入らなくてな。」
魔物は真剣に頼んできた。その目の輝きが本気で、今度は俺がちょっと困った。
「アイスクリームかぁ、うちにはないなぁ。」
俺が肩をすくめると、魔物は少しがっかりした顔をして、しかしすぐに言った。
「じゃあ、冷凍の魚とかはどうだ? 魚を冷凍するのもすごい技術だろ。」
「冷凍の魚…それならあるけど。」
俺は一瞬、考えたが、冷凍の魚を出すときに他のものも一緒に渡してしまうことに気づいた。
「じゃあ、魚と一緒にアイスもつけていくか? どうせ冷凍庫に入ってるしな。」
魔物は目を見開きながら、頷いた。
「それで、次回こそアイスクリームだ! 今回はこれで我慢してやる。」
そう言って、魔物は肉を受け取ると、誇らしげに店を出て行った。
「なんだか、変わった客が増えたなぁ。」
俺は少し呆れながらも、後片付けをしていると、店の外から再びゴブリンが顔を出した。
「おっ、またゴブリンか?」
「おう! ちょっと魚をもらいに来たんだ!」
「魚か…またか。」
俺は魚を渡しながら、次々に訪れる奇妙な客たちに、少しだけ面白くなってきた。
今日も、賑やかなコンビニは続く。
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