上 下
7 / 185

第七話:遺跡の前でドタバタ

しおりを挟む

騎士と一緒に向かっているのは、俺の店から少し離れた森の奥にあるという遺跡。正直、俺はあまり冒険とか、危険な場所に行きたくなかったが、もう後には引けない。

「遺跡に着いたら、どうするんですか?」
俺は騎士に尋ねた。騎士はどこか頼もしい雰囲気を漂わせながら、真顔で答える。

「まずは遺跡の入り口を調べる。おそらく、何かしらの仕掛けがあるはずだ。」
その言葉に、俺は冷や汗が出る。仕掛けって…まさか罠とかだよな。俺、そんなの避けられる自信ないんだけど。

「仕掛けとか…無理だろ、俺。」
「心配無用。君の店の商品があれば、きっと解決する。」
騎士はそう言って、俺を安心させようとしたが、その表情にまったく安心感がなかった。

「その商品って…何かあるのか?」
「もちろん。君のコンビニで売っているお菓子、あれはただのお菓子じゃない。」
俺は一瞬、何を言っているのか理解できなかったが、騎士が指差す先を見ると、確かにコンビニの棚には色とりどりのお菓子が並んでいた。

「まさか、あのお菓子が…?」
「そうだ。君の『チョコレートバー』、それを使えば、遺跡の入口の封印を解くことができる。」
「いや、そんな馬鹿な…」
俺は思わず突っ込みたくなったが、騎士は真剣そのものだった。どうやら、俺のコンビニのお菓子には、この世界の遺跡の仕掛けを解く力があるらしい。

「それ、どんな原理で解けるんだよ?」
俺が疑問に思っていると、騎士は一歩前に出て、しっかりとした足取りで遺跡の前に立った。そして、ちょっと不安げに俺を見た。

「君、今からチョコレートバーを渡すんだ。そうすれば、封印は解ける。」
「いや、まさか…そんな方法で?」
俺は本当にこれが大丈夫なのかと疑った。チョコレートバーで封印を解く…なんか聞いたこともない方法だ。

でも、騎士の真剣な顔を見ると、もう反論する気にもならない。俺は一つ、チョコレートバーを取り出し、遺跡の扉に向かって差し出した。

「さあ、これでどうだ?」
俺が言った瞬間、遺跡の扉に何かが反応したのか、突然、ゴゴゴゴゴ…と音を立てて、扉が開き始めた。

「おい、マジで開いた!」
俺は驚きの声を上げた。騎士も不安げに目を丸くしていたが、確かに扉はゆっくりと開いていった。まさか本当にお菓子で解けるとは思ってもみなかった。

「なんでだ…?」
俺が呆然としながら聞くと、騎士は少し照れくさそうに言った。

「実は、あのチョコレートバー、異世界では非常に珍しい甘味の一種なんだ。少し不思議な力を秘めていて、特定の封印に反応するんだよ。」
「そんな理由かよ…」
俺は頭を抱えた。こんなふざけた方法で解けるとは、ちょっと笑うしかない。だが、どうやらこの世界では、この程度のことは普通らしい。

「とりあえず、遺跡に入るぞ。」
騎士は一歩踏み込んだ。その後に続くように、俺も足を踏み入れる。

遺跡の中は薄暗く、空気がひんやりとしている。お世辞にも、快適な場所とは言えない。しかし、俺はもう覚悟を決めている。

「さて、何が待っているんだろうな。」
俺は少しテンションが上がってきた。冒険とか、こんなふざけた方法で始まるとは思わなかったが、いざ入ってみると少し興奮してきた。

「まずはあの部屋を調べる。」
騎士が指差した先には、何か金色の光を放つ扉が見えた。どうやら、そこが次の目標らしい。

だが、その前に突然、異音が聞こえてきた。

「何だ?!」
俺は身構える。すると、そこから現れたのは…なんと、巨大な魔物だった。

「うわ、ちょっと待って!これって、戦うの?!」
俺は一瞬で緊張したが、騎士は余裕の表情で剣を抜いた。

「大丈夫、君が出したチョコレートバーの力で、こいつもすぐに退散するさ。」
「は?!」
またしても予想外の展開に、俺は目を見開いた。

本当にこの世界、何でもありだな…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪を掛けられて大切な家族から見捨てられた

ああああ
恋愛
優は大切にしていた妹の友達に冤罪を掛けられてしまう。 そして冤罪が判明して戻ってきたが

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐

当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。 でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。 その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。 ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。 馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。 途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...