6 / 110
第六話:新たな契約と計画
しおりを挟む翌朝、店が開店する前に、騎士が再び店に訪れた。今日は少し早めの時間で、空は薄明かりに包まれ、静けさが漂っている。
「おはようございます。」
俺は騎士を迎え入れ、店内へと案内した。騎士はいつも通りの鎧姿で、少し身を屈めながら店内に足を踏み入れた。昨夜の話が頭に残っている。
「おはよう。」
騎士は目を輝かせて周囲を見回し、軽くうなずいた。「ここが噂の店か…」
「噂、ですか?」
俺は少し驚いて尋ねた。どうやら、俺の店はこの異世界でも何かしらの話題になっているらしい。魔物の言葉や騎士の言動からも、ただのコンビニ経営以上の何かがあると感じていたが、どうやらそれが実際に周囲で広まっているらしい。
「うん。君が提供している商品には、ただの食べ物だけでなく、異世界の人々が求めている何かが隠されている。私たちの団体でも、君の店の存在について調査を始めている。」
騎士は続けた。「だから、私は君に協力をお願いしたい。」
「調査…ですか。」
俺は少し警戒した。魔物の疑念に続き、騎士の言葉もどこか重く、意味深に感じた。しかし、ここで断るわけにはいかないだろう。
「もちろん、協力します。」
俺は答えたが、その言葉の裏には、少しの不安もあった。しかし、それ以上に好奇心と、何か大きなことに巻き込まれている予感が勝っていた。
「よし、では始めよう。」
騎士はすぐに意気込みを見せ、机に置いた大きな袋から何かを取り出した。それは古びた巻物のようだった。
「これが、私たちが手に入れた情報だ。」
騎士は巻物を広げ、その中身を俺に見せた。中には、精緻な図面や、何かの遺跡のような絵が描かれていた。それを見て、俺は少し目を見張った。
「これは…?」
「これは、君が持っている商品と関係があると思われる遺跡の位置だ。」
騎士の言葉に、俺はさらに驚いた。「遺跡?一体、何のことだ?」
「お前が販売している商品、特に保存食品や薬草、特殊な調味料などは、この遺跡から得られた技術に関わりがあると思われる。」
騎士は巻物を閉じて、俺の方を真剣に見つめた。「君の店が持っているものは、単なる食材以上のものだ。この世界に存在しないものが、君の店に並んでいる。それに、君が異世界から来た可能性が高い。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は心の中でガクンと膝が崩れそうになった。異世界から来た可能性、か。騎士の言葉が正しければ、俺はただの異世界の住人ではなく、もっと深い秘密を持っているということだ。
「俺は、異世界から来た…?」
「それが本当かどうかはまだ分からないが、私たちの団体が調査を進めることで、明らかになるだろう。」
騎士は少し立ち上がり、周囲を見渡した。「だが、君が持っている商品には、間違いなく異世界の技術が関与している。だからこそ、私たちの計画には君の協力が必要だ。」
俺はその言葉を噛みしめながら、しばらく黙っていた。騎士の言う通り、俺の店で売っているものは、この世界では見たこともないようなものばかりだ。保存食、薬草、調味料…どれも、異世界のどこかで見たことがあるような気がする。
「分かりました。協力します。」
俺は意を決して答えた。その答えを聞いた騎士は、ようやく満足そうに微笑んだ。
「ありがとう。では、次の段階に進もう。」
騎士は少し前かがみになり、低い声で続けた。「君には、この遺跡を調査するために、私たちの一員として参加してもらう。」
「遺跡…」
俺はその言葉に少し不安を覚えた。未知の遺跡、そしてその先に待っているであろう危険。だが、俺の店が巻き込まれている以上、避けて通れない道だろう。
「君の店が持っているものが、きっとこの遺跡に関係している。それを探ることが、私たちの目的だ。」
騎士は言葉を続け、深刻な表情を浮かべた。
「そして、この遺跡に隠された力を手に入れることができれば、君の店は、この異世界でさらに重要な位置を占めることになるだろう。」
その言葉に、俺は少しの興奮とともに、決意を新たにした。どうやら、この冒険はただのコンビニ経営では終わらなさそうだ。
俺の店が、これからどうなるのか。俺の選択が、何を生み出すのか。すべてがこれから始まる。
「さあ、行こう。」
騎士の言葉に導かれ、俺は一歩踏み出した。
未知の遺跡、そして待ち受ける新たな試練。
この先、どんな冒険が待っているのか、俺にはまだ分からない。だが、もう後戻りはできない。
17
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。
みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ!
そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。
「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」
そう言って俺は彼女達と別れた。
しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。
私の代わりが見つかったから契約破棄ですか……その代わりの人……私の勘が正しければ……結界詐欺師ですよ
Ryo-k
ファンタジー
「リリーナ! 貴様との契約を破棄する!」
結界魔術師リリーナにそう仰るのは、ライオネル・ウォルツ侯爵。
「彼女は結界魔術師1級を所持している。だから貴様はもう不要だ」
とシュナ・ファールと名乗る別の女性を部屋に呼んで宣言する。
リリーナは結界魔術師2級を所持している。
ライオネルの言葉が本当なら確かにすごいことだ。
……本当なら……ね。
※完結まで執筆済み
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
自重知らずの転生貴族は、現在知識チートでどんどん商品を開発していきます!!
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
無限の時空間の中、いきなり意識が覚醒した。
女神の話によれば、異世界に転生できるという。
ディルメス侯爵家の次男、シオン・ディルメスに転生してから九年が経ったある日、邸の執務室へ行くと、対立国の情報が飛び込んできた。
父であるディルメス侯爵は敵軍を迎撃するため、国境にあるロンメル砦へと出発していく。
その間に執務長が領地の資金繰りに困っていたため、シオンは女神様から授かったスキル『創造魔法陣』を用いて、骨から作った『ボーン食器』を発明する。
食器は大ヒットとなり、侯爵領全域へと広がっていった。
そして噂は王国内の貴族達から王宮にまで届き、シオンは父と一緒に王城へ向かうことに……『ボーン食器』は、シオンの予想を遥かに超えて、大事へと発展していくのだった……
幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する
あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。
俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて
まるでない、凡愚で普通の人種だった。
そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。
だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が
勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。
自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の
関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に
衝撃な展開が舞い込んできた。
そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる