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56 ムサイと廃墟都市

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「おお!ユウキくんではないか!」
「こんにちは」
「久しぶりだねぇ」
「はい」
「今日は何しに来たんだい?」
「えっとですね、新しい仲間ができたんで登録をお願いします」
「ほぉ、どんな子だい?」
とムサイを見せると
「え!?コボルトじゃないか」
「ぼくはだめなの?」
お願いできませんか?
「んー、大丈夫だが」
「よかったな」
「うん」
「ところで、そのコボルトはどこから来たんだ?」
「え?」
「ん?どうした?」
ムサイは怯えてるのか震えている
「ムサイ?」
ムサイのこの怯え方は尋常ではないと思い
頭を撫でてあげると落ち着いてきたのか
「廃墟都市」
と答えた
廃墟都市図鑑でも見たが
確か魔族に支配された街だったはずだ
そんなところになぜいるのだろうか
気になるところではあるが
聞いてしまうとまた怖がらせてしまうかもしれないので
聞かないことにした
そのまま受付の人に説明して
無事に登録を済ませた
依頼達成の手続きも終わらせ
金貨50枚の報酬を得ることが出来たので
酒場へ行くことに

酒場でも
「コボルト!?」
と騒がれたけど
俺がムサイを撫でているのを見て
この子はいいこなんだと理解してくれた
「ムサイ?なに食べるお兄ちゃんに言ってね」
んとねという仕草をみて
「くぅ、かわいい」
と言ってしまう
「お兄ちゃんぼくこれ食べたい」
えーと
タンボルチーニか
タンボルチーニ図鑑によると
茹でられたキノコのようだ
俺はタンボルチーニは好きじゃないんだよな
いろんな意味で
コボルトって雑食なのかな?
まあ、ムサイが食べたがっているので注文する
俺は野菜たっぷりトマトスープにパンを頼んだ しばらくして運ばれてきた料理を食べるが
「んん、美味しいよお兄ちゃん」
と嬉しそうにしていたので良かったと思う
すると他の客が俺を
「姉ちゃん、今日も来たのかい?お?コボルトまでいるのか
おい、この姉ちゃんの事好きか?」
俺を指差す
姉ちゃんじゃねーよ
「え?お姉ちゃん??」
「ちげーよ!お兄ちゃんだって!」
「あ、お兄ちゃん、、か」
「ああ、そうだよ、こいつはお兄ちゃんだよ」
とレナードはムサイの頭を撫でる
が、まだこの客は
「へぇ、この姉ちゃんが気に入ったのか?この、姉ちゃんこの店にはよく来るんだぜ
いろんな意味でな」
こいつ!!
どんな意味でだよ!?
さらに客は
俺の肩に腕を置き胸の辺りを刺激する
「ん、、やめ、、てください」
「あ?聞こえねえぞ?姉ちゃん」
「やめて、、ください!」
「やめないとどうなるって言うんだ?」
と更に強く乳首を摘ままれる
「ううっ」
「お、お兄ちゃん、、大丈夫?」
レナードも
「おい!お前、、、ユウキが嫌がってるだろ」
と怒ってくれた
俺は恥ずかしさと悔しさから泣き出してしまった
するとムサイも一緒に泣いていた
俺はムサイを抱き抱えて店を飛び出した
自宅で
ルシフェル様に事情を話す
「ふむ、事情はわかった、ムサイ」
「は、はい」
「今日からお前はうちの子だ」
「え?いいの?」
「ああ、いいとも」
「やったぁ、お兄ちゃん、僕お兄ちゃんのお嫁さんになる」
ルシフェル様が
「それはダメだ」
ムサイは
「なんで?」
と、訊く
「ユウキは我の嫁だからだ」
俺は顔を赤くする
「お兄ちゃん、お嫁さんだったの?」
と聞くので
「うん、」
と答えると
ムサイも納得したようだ
「あ、フューリーも紹介しておくね、、フューリー!」
すると
きゅーと鳴いてフューリーがやってくると
ムサイはすこし怯え
「わあ!ドラゴン!!」
と叫ぶ
「あ、大丈夫だよ、、フューリーは俺の子供なんだ」
「え!?お兄ちゃんの子供!?え?え?お兄ちゃんって人間じゃ」
「え?俺は人間じゃなくて神の一族だよ現在は
そして、世界の主神っていう職業に就いてる」
そしてフューリーは正確には俺の子供ではないけど
俺を親だと思っているんだと説明
「へえ、神様ってすごいね」
とムサイは言った
「うーん、神様ではないんだよ、人を導く存在なのは変わらないけどね」
ムサイはよくわからないやという
まあそうだよな
「お兄ちゃんはいくつなの?ぼくはね14なの」
「俺?一応17だよ!」
フューリーも
「フューリーはね!8ヶ月!!」
「ええ!?8ヶ月で喋れるの!?」
「これは複数の方にも訊かれたけど
本来なら数年で喋れるようになるみたいだけど俺の魔力などに相当な影響をしてるって言われたよ」
「ムサイお風呂入ろっか」
「うん、お兄ちゃんとお風呂入る」
とムサイは素直に返事をする
「じゃあ、ちょっと待っててね」
と言ってお湯を沸かし
ムサイを洗ったあと自分も洗い
二人でお風呂に入る
「お兄ちゃんお風呂おっきいね」
「ふふんそうだろう!風呂場は大きくして貰うようにお願いしたんだよ」
「そうなんだ、ありがと」
とムサイは言う
「ムサイ?これからどうしたい?」
「んー。ぼくはお兄ちゃんと一緒に居たい」
「なに言ってるんだよ。ルシフェル様の言ってたことを思い出してみな
ムサイは今日から俺たちの『家族』だぞ」
と伝える
ムサイの目からは涙が溢れていた
しばらくそのまま泣かせてあげることにした
落ち着いたところでムサイに 今日から住むことになる部屋を案内する
部屋のドアを開けると
ベッドの上には白い羽が落ちている ムサイは
「え?これ何?」
と言いながら
俺は
またか
「それ、天使の羽だよ」
「ええ!?天使?お兄ちゃんの仲間?」
「仲間じゃないんだけど、、まあいいや、ムサイが寝るときにその羽を持って眠ればきっといい夢が見られると思うな」
「ほんと?ありがとう」
ムサイは嬉しそうにしてるので
まあいいかと思うことにした
ムサイを寝かしつけたあと
俺はテレポータスを使い
ミカエルの元へ
「おーい!あの羽根お前だろ?」
「あ、バレちゃいました?」
「ああ、バレたぞ」
「あれ?ムサイ君には見せたんですか?」
「ああ、見せたぞ」
「へぇ、ムサイ君はどんな反応しました?」
「ん?普通に驚いてたぞ」
「へぇ、そうなんですね」
「仲間です?訊かれたが俺はまだあんたを認めてないからな!
まあ、前のダンジョンの時は一緒に付いてきてくれてサンキューだったけどさ
俺の中ではまだ認められない」
だって
過去にあいつとガブリエルは俺に『あんなこと』したわけだしなそう簡単には認められないよ
「ふふふそうですね
で、『廃墟都市』ですか?行くんですか?」
なんで
「なんで知ってる?」
「ふふふ、私はあなたの監視者ですよ」
「まあ、いいや、明日行ってくる」
「わかりました、気をつけてくださいね」
「ああ、わかってる、お前は来んなよ」
「はい、わたしは、行きませんがガブリエルが行きますよ」
ガタガタと震える
「なんであいつが」
「知りませんよ、でもあなたには大変興味がおありですからねぇ彼は」
お前やあいつには
特にガブリエルにだけは会いたくないが仕方ないのか

翌日、俺は
ムサイ、ルシフェル様、ルドガーを連れて街の外へと向かう
出入口で誰かが待っていた
そう
ガブリエルである
「、、っち」
俺の舌打ちを聞き
「俺は相当な嫌われ方をしているようだな」
「致し方ないのではないかな?」
ルシフェル様がガブリエルに言う
「ふん、お前にだけは言われたくないな
『元魔王軍四天王』」
これを聞いたムサイがすこし怯え
俺の後ろへ隠れる
「大丈夫だよムサイ」
と頭を撫でる
「ユウキ、その子は?」
とガブリエルが俺に訊く
「この子はムサイって言いまして、今日からうちの子になりました」
「ユウキ、お前は龍神の子供だけでなく
今度はコボルトまで手中に納めるとはなんてやつだ」
やれやれという顔をされたが
まさかこいつミカエルからムサイの事を聞いてないのか?
なら好都合かな
もしかしたら機神の事も案外知らなかったりしてな
「で?天使のガブリエル様はどうしてここにいるんです?」
と含みある言い方をする
「どうしてだと?そんなのお前のお目付け役に決まっているだろう?」
まあ、確かに俺は天使の監視下にあるらしい
「お目付け役?お前監視でもされているのか?天使どもに」
ルシフェル様がいう
「どうやらそうらしいんですよね
ミカエルから俺は聞きましたけど」
「あやつか
たしかミカエルはメタトロンの配下であったな」
メタトロン図鑑によると
ミカエル=メタトロンの部下
メタトロンは天界の王つまりこいつは俺を監視するために
わざわざやって来たって事なのか?
そして、、 ガブリエルはルシフェル様を睨みつける どうやらルシフェル様に嫉妬しているようでもある
まあ、そりゃそうだ
ルシフェル様は元が付くけど魔王軍四天王でかつ大魔王サタンの息子なんだしな
あいつもまあ、天使並みには羨ましく思ってるんだろうな
俺たちは街を出発し
ムサイが来たという廃墟都市へと向かう
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