駅の果てで

183話: リュクセンブルクの夜と告白

マールス帝国の港町リュクセンブルクに到着した聡たちは、異国の地に漂う活気と独特の文化に心躍らせながらも、旅の疲れを癒すため、町の酒場兼宿屋に泊まることにした。港町特有の賑わいが夜の帳に染まり、聡たちは部屋へと向かった。

夜も更け、静かな空気が宿屋を包む中、聡の部屋の扉が控えめにノックされた。開けてみると、そこにはユウキが立っていた。意外な訪問に少し驚いたものの、聡は軽く微笑んでユウキを部屋に招き入れる。

部屋に入ったユウキは、少し戸惑ったように視線を泳がせてから、静かに口を開いた。「聡…俺、伝えたいことがあるんだ。」

その真剣な表情に聡は少し緊張を覚えながらも、「どうした？何か悩みごとか？」と肩を軽く叩いてみせる。しかし、ユウキの目には決意が宿っており、彼はまっすぐに聡を見つめたまま、息を深く吸い込んだ。

「…聡、俺、お前のことが好きだ。」

その言葉は驚きと共に、部屋の空気を一瞬にして凍りつかせた。思わず聡は口を開くことができず、ユウキの真剣な表情をただ見つめるしかなかった。だが、すぐに聡は心の中で自分を落ち着かせ、彼の言葉を友情の一環として受け止めた。

「はは、ありがとうよ、ユウキ！」聡は少し照れくさそうに笑いながら、彼の肩をポンと叩いた。「お前とは最高の仲間だもんな、俺もお前のこと好きだぜ！」

聡の軽い言葉にユウキは一瞬目を伏せたが、やがて小さく微笑んだ。少し苦笑にも似た表情を浮かべながら、「そうか…ありがとうな、聡」とつぶやく彼の姿に、聡はその夜が持つ特別な意味を少しずつ理解し始めていたのかもしれない。

聡が何気なく返した言葉の奥に潜む、ユウキの切実な想いにふと気づくと、彼の胸にかすかな戸惑いが湧き上がった。普段はどこまでも頼りになる仲間として、自分と共に多くの戦場を駆け抜けてきたユウキ。その彼が、今ここで伝えてきた「好きだ」という言葉が友情以上の意味を含んでいるのではないかという予感が、聡の心にじわりと染み渡る。

少しの沈黙が部屋の中に漂い、互いの気配だけが静かに行き交った。やがて、ユウキがそっと口を開く。

「…こんなふうに言って困らせてしまったな。聡は仲間として、信頼してくれる。それだけで俺には十分なんだ。でも…伝えたかったんだ。」

ユウキの声には微かな震えが混ざっていた。聡は、自分がどう答えるべきなのか一瞬迷ったものの、いつもの軽さではなく、真剣な気持ちで向き合うことにした。少し深呼吸をしてから、聡はゆっくりと口を開く。

「ユウキ、ありがとう。正直、お前の気持ちには驚いた。でも、こうして伝えてくれたことは…本当に嬉しいよ。俺にとっても、お前は大切な仲間だからな。」

聡の言葉にユウキは頷き、複雑な表情を浮かべながらも、どこか安堵したように笑みを返した。聡にとって、ユウキとの友情が変わることはない。だが、この告白が二人の間に新たな理解をもたらし、より深い信頼へと繋がっていくのだと、彼はどこかで確信していた。

その夜、二人は深夜まで語り合った。これまでの旅路、仲間たちとの出会い、そしてこれから向かう未知の世界について。ユウキは少しずつ本音を語り、聡もまた自身の思いを正直に話していく。

外では港町の夜が静かに流れ、リュクセンブルクの灯が揺れていた。その光の中、聡とユウキの友情はまた一つの絆を得て、さらに強く結ばれていったのだった。


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