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99話
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あまりにも小さな声だったので俺には聞こえなかったが、俺の耳には陳宮の声が届く。
「これから頑張りましょうね!ご主人様!」
(いや、聞こえてるから!!)
こうして俺は魏続と龐徳に続き陳宮も手に入れる事ができたのであった。
そして呂布は心の中で呟いた……。
(何か全然実感湧かないんだけど……それにこれからどうすれば良いの?)
そんな俺の心の声は誰にも聞いてもらう事なく静かに消えて行ったのである。
その後、魏続と龐徳を含めた俺の軍勢は許昌を出発し北に向かい始めた。
まさかたった十万の兵が曹操と全面対決するなんて思いもしなかったが……。
これが後に三国鼎立と呼ばれる戦乱の始まりであった。
陳宮の言う様にたった一人で十万の兵を倒す事が出来るのだろうか? そんな不安を抱きながら俺は長江を渡る船に乗っていた。
(敵になるか味方になるか分からない奴に十万もの兵を預けるか?普通……)
今更そんな考えが浮かぶが、許昌を出た時点でもう引き返す事は出来ない。
(弱気になるなよ俺!自分でやると決めたんだ!全力で劉備をぶっ倒してやるぜ!!)
そんな意気込みを胸に抱きながら俺は船に積まれていた食料を手に取り口にすると気合いを込めて拳を握り締めたのであった。
「曹操様の軍は二十万もの軍勢だ!」
(十万人以上はいるよな?だったら何か食べ物でも残していけば……)
俺はそんな事を考えながら船に積まれていた食料を口にしていたが、陳宮から今後の事について話し合いをしたいとの申し出があり呂布軍の舵取りを任されている高順は渋々ながらもそれを受け入れた。
「じゃあ頼んだからな」
そう言って高順は呂布の肩を軽く叩くと魏続や龐徳と共に徐州へと向かって行く。
そんな光景を呆然と眺めていた俺の服の裾を軽く引っ張られたので振り返ってみると何故か気まずそうにしている貂蝉の姿があった。
「どうして貂蝉までついて来るんだ?」
俺がそう尋ねると貂蝉は何か言いたげにモジモジしている。
「あの~貂蝉ちゃんには呂布軍に残っててもらった方が良いと思うけど……」
そんな俺の疑問に答えてくれたのは劉備であった。
「貂蝉には黄巾党の時の恩義もあるしな」
そう言って笑顔を浮かべる劉備に対して、貂蝉は少し嬉しそうに微笑むと俺に抱き付いてきた。
そんな貂蝉の行動に困惑しながらも劉備に視線を向けてみる。
「貂蝉は呂布と一緒じゃないとダメなんだと思う」
「いやいや、陳宮だって優秀な軍師なんだぞ?」
すると劉備は少し呆れた表情をしながら俺に言った。
「恋や趙雲だってお前の役に立てなかった事にガッカリしてると思うぞ?」
(え?そうなるのか?でも今回の事が成功すれば俺の事を見直すだろうし……)
そんな考えを巡らせながら視線を下に向けると、何故か貂蝉も残念そうな顔をしている。
(こんな目をした奴を連れて行くと呂布に叱られそうだな……)
貂蝉の視線は俺に何かを懇願する様な目で訴えかけてくる。
「分かったよ、一緒に行こう」
そう言って手を差し出すと貂蝉は俺の手を両手で握り締めて何度も頷いた。
そんな様子を見ていた劉備は笑いながら言う。
「そうそう、恋や趙雲だけじゃなくもう一人呼んでるんだ」
(もう一人?まあ、別に構わないか?呂布軍に比べると兵力も半分以下だろうしな)
そんな事を考えながら、俺は劉備の言葉を聞く。
「入って来て良いぞ!」
そんな劉備の声に答えが返って来ると同時に扉が静かに開き入ってきた人物を見て俺は唖然とした。
何故なら俺の目の前にいたのは董卓の配下の華雄だったからだ。
(いや、別に構わないけどさ?華雄は大丈夫なのか?曹操に寝返ったなんて事がバレたら死刑じゃないのか?)
そんな疑問を抱き訝しげに眺めていると華雄が俺の目の前までやって来て口を開く。
「貴様が呂布奉先だな?」
(いや、間違いなく俺の目の前に立っている奴は董卓軍最強の武将である華雄だ……)
戸惑いながらも俺は小さく頷く。
そんな俺に対して華雄は何故か満足そうに頷くと隣に居る貂蝉の事など気にせずに話し掛けて来る。
「これから頑張りましょうね!ご主人様!」
(いや、聞こえてるから!!)
こうして俺は魏続と龐徳に続き陳宮も手に入れる事ができたのであった。
そして呂布は心の中で呟いた……。
(何か全然実感湧かないんだけど……それにこれからどうすれば良いの?)
そんな俺の心の声は誰にも聞いてもらう事なく静かに消えて行ったのである。
その後、魏続と龐徳を含めた俺の軍勢は許昌を出発し北に向かい始めた。
まさかたった十万の兵が曹操と全面対決するなんて思いもしなかったが……。
これが後に三国鼎立と呼ばれる戦乱の始まりであった。
陳宮の言う様にたった一人で十万の兵を倒す事が出来るのだろうか? そんな不安を抱きながら俺は長江を渡る船に乗っていた。
(敵になるか味方になるか分からない奴に十万もの兵を預けるか?普通……)
今更そんな考えが浮かぶが、許昌を出た時点でもう引き返す事は出来ない。
(弱気になるなよ俺!自分でやると決めたんだ!全力で劉備をぶっ倒してやるぜ!!)
そんな意気込みを胸に抱きながら俺は船に積まれていた食料を手に取り口にすると気合いを込めて拳を握り締めたのであった。
「曹操様の軍は二十万もの軍勢だ!」
(十万人以上はいるよな?だったら何か食べ物でも残していけば……)
俺はそんな事を考えながら船に積まれていた食料を口にしていたが、陳宮から今後の事について話し合いをしたいとの申し出があり呂布軍の舵取りを任されている高順は渋々ながらもそれを受け入れた。
「じゃあ頼んだからな」
そう言って高順は呂布の肩を軽く叩くと魏続や龐徳と共に徐州へと向かって行く。
そんな光景を呆然と眺めていた俺の服の裾を軽く引っ張られたので振り返ってみると何故か気まずそうにしている貂蝉の姿があった。
「どうして貂蝉までついて来るんだ?」
俺がそう尋ねると貂蝉は何か言いたげにモジモジしている。
「あの~貂蝉ちゃんには呂布軍に残っててもらった方が良いと思うけど……」
そんな俺の疑問に答えてくれたのは劉備であった。
「貂蝉には黄巾党の時の恩義もあるしな」
そう言って笑顔を浮かべる劉備に対して、貂蝉は少し嬉しそうに微笑むと俺に抱き付いてきた。
そんな貂蝉の行動に困惑しながらも劉備に視線を向けてみる。
「貂蝉は呂布と一緒じゃないとダメなんだと思う」
「いやいや、陳宮だって優秀な軍師なんだぞ?」
すると劉備は少し呆れた表情をしながら俺に言った。
「恋や趙雲だってお前の役に立てなかった事にガッカリしてると思うぞ?」
(え?そうなるのか?でも今回の事が成功すれば俺の事を見直すだろうし……)
そんな考えを巡らせながら視線を下に向けると、何故か貂蝉も残念そうな顔をしている。
(こんな目をした奴を連れて行くと呂布に叱られそうだな……)
貂蝉の視線は俺に何かを懇願する様な目で訴えかけてくる。
「分かったよ、一緒に行こう」
そう言って手を差し出すと貂蝉は俺の手を両手で握り締めて何度も頷いた。
そんな様子を見ていた劉備は笑いながら言う。
「そうそう、恋や趙雲だけじゃなくもう一人呼んでるんだ」
(もう一人?まあ、別に構わないか?呂布軍に比べると兵力も半分以下だろうしな)
そんな事を考えながら、俺は劉備の言葉を聞く。
「入って来て良いぞ!」
そんな劉備の声に答えが返って来ると同時に扉が静かに開き入ってきた人物を見て俺は唖然とした。
何故なら俺の目の前にいたのは董卓の配下の華雄だったからだ。
(いや、別に構わないけどさ?華雄は大丈夫なのか?曹操に寝返ったなんて事がバレたら死刑じゃないのか?)
そんな疑問を抱き訝しげに眺めていると華雄が俺の目の前までやって来て口を開く。
「貴様が呂布奉先だな?」
(いや、間違いなく俺の目の前に立っている奴は董卓軍最強の武将である華雄だ……)
戸惑いながらも俺は小さく頷く。
そんな俺に対して華雄は何故か満足そうに頷くと隣に居る貂蝉の事など気にせずに話し掛けて来る。
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