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87話
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そう言って俺の右手を両手で掴み、立ち上がらせて俺を称賛する。
「まさか、将軍がここまでの戦況に出来る方だとは思いもしませんでした。そこでお願いがあるのですが……」
そこまで言うと曹操は横に立つ張遼を見る。
その意図する事に気づいた俺は手で拱手の礼を取りつつ答えた。
「分かりました、この勝負を呂布軍だけで終わらせてみせましょう!」
その言葉を聞いた曹操は嬉しそうに頷くと本陣に下がる。
俺達は待ち構えているとそこへ陳宮がやって来た。
「御主人様、お待たせして申し訳ありませぬ」
陳宮の報告によると江陵で戦闘を行った者達は撤退に成功したと言う事だった。
そこで俺は高順と共に張遼の元へ向かうと言った。
「呂布将軍!どうされるおつもりですか?」
そんな高順の言葉に俺は答える。
「張遼将軍と合流します。今、この状況で陳宮を連れて行くと再び危機に陥る事になるでしょう」
呂布の言葉を聞いた高順は頷くと陳宮を見た後で俺に言う。
「この者だけならば将軍の足手まといにはならないでしょうな」
それだけ言うと俺は本陣から出て張遼の元へと向かう事にした……。
呂布達が去った後の本陣では曹操が配下の夏侯淵に指示をしながら今後についての話を進める。「とりあえず江陵は放棄する。本国に戻ってから再び奪い返せば良い」
そんな曹操に対して夏侯淵が言い難そうに口を開く。
「ですが将軍、宜しいのですか?この戦を袁紹に勝ちを譲ると約束なされたはずでは?」
その質問に曹操は鼻を鳴らしてから答える。
「そんな事は心配せずとも勝つつもりでいる。勝つ為に戦を始める事など古今東西で腐るほどある事だ。もし今回の戦で負けてもそれはそれで良い、勝てればこの大陸に袁紹などという屑は必要無くなるのだから。」
そう言われると夏侯淵は頭を下げて言った。
「さすがです!私も袁紹殿にはそろそろ痛い目にあって貰いたいと思っていた所でした!」
その言葉を聞くと曹操は満足そうに頷いた後で更に指示を出すのであった……。
張遼とは容易く合流する事が出来たのだが、彼が率いている騎馬隊を始めとした兵士達の足取りは重く見えた。
しかし、そんな中でも騎馬隊を束ねる張遼は見慣れぬ物を使って兵士達を鼓舞すると最後まで戦う為にまた先へと軍を進める。
呂布もそれについて行くのだが、敵襲の対応をしていた高順の部隊が到着したので一度足を止めた。
「どうかしましたか?」
俺は戻ってきた高順に状況を確認する事にした。
「今、陳宮殿よりの情報によりますと張遼将軍の部隊は全滅に近い被害を受けているとの事です」
その報告を聞いて俺は絶句する。
「今、最前線にいるのは張遼将軍だけだと思われます。敵の士気が下がる前に指揮官である彼を討ち取らなければ自軍は崩壊する恐れがあります」
そう説明する高順に対して陳宮は言う。
「申し訳ありませんが私が敵将の懐へ斬り込みます!」
そんな陳宮の言葉に対して俺は止める。
「待ってくれ!いくら何でもあの数は無理だろう!?」
「しかしこのまま時間が経てば被害はますます拡大しますぞ!」
「それでも勝手に突っ込むなど許可できるはずが……」
そんな話をしていると、どうやら張遼は少数の騎馬隊だけで曹操軍を翻弄しているらしく次々と犠牲を出しながらも奮闘しているとの報告を受ける。
その報告を聞いた陳宮は歯ぎしりをした後に言う。
「ならば!この陳宮が先陣を切り必ず敵の指揮官を討ち取る事をお約束しましょう!」
そこまで言うと俺の制止の声を無視して敵の軍勢の中へ駆けていった。
それを見て高順が言う。
「よろしいのですか?陳宮殿の言う通りにさせて」
「良いのか悪いのかなど俺には分からん!」
俺がそう言うと高順が答える。
「もし陳宮殿が失敗したとしても次は私が行く事を将軍にお約束します!」
そんな高順を俺は一度見た後、先頭に立つ騎馬兵に向かって叫ぶ!
「すまんな、休んでいたところに申し訳ないがもうひと踏ん張りしてくれ!」
俺の叫びに応える様に兵士は雄叫びを上げて武器を振り上げる。
すると……。
「陳宮殿は囮です、恐らく敵の狙いは……」
「まさか、将軍がここまでの戦況に出来る方だとは思いもしませんでした。そこでお願いがあるのですが……」
そこまで言うと曹操は横に立つ張遼を見る。
その意図する事に気づいた俺は手で拱手の礼を取りつつ答えた。
「分かりました、この勝負を呂布軍だけで終わらせてみせましょう!」
その言葉を聞いた曹操は嬉しそうに頷くと本陣に下がる。
俺達は待ち構えているとそこへ陳宮がやって来た。
「御主人様、お待たせして申し訳ありませぬ」
陳宮の報告によると江陵で戦闘を行った者達は撤退に成功したと言う事だった。
そこで俺は高順と共に張遼の元へ向かうと言った。
「呂布将軍!どうされるおつもりですか?」
そんな高順の言葉に俺は答える。
「張遼将軍と合流します。今、この状況で陳宮を連れて行くと再び危機に陥る事になるでしょう」
呂布の言葉を聞いた高順は頷くと陳宮を見た後で俺に言う。
「この者だけならば将軍の足手まといにはならないでしょうな」
それだけ言うと俺は本陣から出て張遼の元へと向かう事にした……。
呂布達が去った後の本陣では曹操が配下の夏侯淵に指示をしながら今後についての話を進める。「とりあえず江陵は放棄する。本国に戻ってから再び奪い返せば良い」
そんな曹操に対して夏侯淵が言い難そうに口を開く。
「ですが将軍、宜しいのですか?この戦を袁紹に勝ちを譲ると約束なされたはずでは?」
その質問に曹操は鼻を鳴らしてから答える。
「そんな事は心配せずとも勝つつもりでいる。勝つ為に戦を始める事など古今東西で腐るほどある事だ。もし今回の戦で負けてもそれはそれで良い、勝てればこの大陸に袁紹などという屑は必要無くなるのだから。」
そう言われると夏侯淵は頭を下げて言った。
「さすがです!私も袁紹殿にはそろそろ痛い目にあって貰いたいと思っていた所でした!」
その言葉を聞くと曹操は満足そうに頷いた後で更に指示を出すのであった……。
張遼とは容易く合流する事が出来たのだが、彼が率いている騎馬隊を始めとした兵士達の足取りは重く見えた。
しかし、そんな中でも騎馬隊を束ねる張遼は見慣れぬ物を使って兵士達を鼓舞すると最後まで戦う為にまた先へと軍を進める。
呂布もそれについて行くのだが、敵襲の対応をしていた高順の部隊が到着したので一度足を止めた。
「どうかしましたか?」
俺は戻ってきた高順に状況を確認する事にした。
「今、陳宮殿よりの情報によりますと張遼将軍の部隊は全滅に近い被害を受けているとの事です」
その報告を聞いて俺は絶句する。
「今、最前線にいるのは張遼将軍だけだと思われます。敵の士気が下がる前に指揮官である彼を討ち取らなければ自軍は崩壊する恐れがあります」
そう説明する高順に対して陳宮は言う。
「申し訳ありませんが私が敵将の懐へ斬り込みます!」
そんな陳宮の言葉に対して俺は止める。
「待ってくれ!いくら何でもあの数は無理だろう!?」
「しかしこのまま時間が経てば被害はますます拡大しますぞ!」
「それでも勝手に突っ込むなど許可できるはずが……」
そんな話をしていると、どうやら張遼は少数の騎馬隊だけで曹操軍を翻弄しているらしく次々と犠牲を出しながらも奮闘しているとの報告を受ける。
その報告を聞いた陳宮は歯ぎしりをした後に言う。
「ならば!この陳宮が先陣を切り必ず敵の指揮官を討ち取る事をお約束しましょう!」
そこまで言うと俺の制止の声を無視して敵の軍勢の中へ駆けていった。
それを見て高順が言う。
「よろしいのですか?陳宮殿の言う通りにさせて」
「良いのか悪いのかなど俺には分からん!」
俺がそう言うと高順が答える。
「もし陳宮殿が失敗したとしても次は私が行く事を将軍にお約束します!」
そんな高順を俺は一度見た後、先頭に立つ騎馬兵に向かって叫ぶ!
「すまんな、休んでいたところに申し訳ないがもうひと踏ん張りしてくれ!」
俺の叫びに応える様に兵士は雄叫びを上げて武器を振り上げる。
すると……。
「陳宮殿は囮です、恐らく敵の狙いは……」
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