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「申し訳ありません……私も今は呂布将軍の命令で長安に向かっている所でして……」
その言葉に孫策は華淋の方に視線を向けると口を開いた。
「俺とお前の間に無用な混乱が起きない様に事前に周瑜とすり合わせていたのか?」
そんな問いに華淋は答える事なく黙っている。
そんな二人のやり取りを見ていた周瑜が口を開く。
「無用な混乱なんて無いと思いますわ」
そんな周瑜の言葉に孫策は驚くと、ジッとその姿を見る。
「お前……本当に周瑜か?」
その問いに周瑜は嬉しそうな表情を浮かべると答えたのだ。
「ええ、あの時は孟徳の命令で仕方なく呂布将軍に付き従っておりましたが、今回は違いますもの」
そう言って笑顔を向けた周瑜であったが、そんな彼女を見て孫策が口を開く。
「へぇ、珍しい事もあるもんだな?俺が知ってる周瑜はこんなにも楽しそうに話す女じゃなかったけどな」
「ふふふ、もう遠慮する必要もないですからね。これからは我が主君の為に身を粉にして働かなければならないのですもの」
「ほう!そいつは頼もしいな!そう言えば貂蝉の姿が見えなかったが元気か?」
そんな孫策の問いかけに周瑜は一瞬の間に表情が曇った。
その様子を見て何かを察した孫策が口を開こうとした時、後ろから声が聞こえ二人の会話がそこで止められた。
「これは何の騒ぎじゃ?」
その声が耳に届いた孫策と周瑜の二人は咄嗟に振り返ると、そこには赤い甲冑を纏った見覚えのある女性が立っていた。
それを見た孫策は目を見開いたまま言葉を口にする。
「ち、張遼ではないか!?」
その驚いた声に張遼は笑顔を向けた後、華淋に視線を移し口を開く。
「華淋殿が来たという事は……そういう事で間違いないのかぇ?」
その問いに華淋も答える。
「そうですね。ようやく私の役目が終わったと言う事ですよ」
そんな二人のやり取りを見て孫策は驚きの声を上げたのだ。
「張遼が味方になっただって?どういう事だ?」
「今までの華淋殿の功績を称える為に一時的に我が曹操軍に戻って貰ったのじゃ」
そんな張遼の説明に孫策は声を上げて喜んだ。
しかし、周瑜の表情は暗くなりながらも無言で頭を下げただけであった。
そんな周瑜の姿を見ながら華淋は心の中で思うのであった。
(我が策に狂いなし……曹操には痛い目に合ってもらいましょう)
そんな華淋の不気味な笑みに気付いていたのは高順だけだったのである。
華淋は華琳と蓮華の元へ赴き、二人の会話を中断させる様な形で口を開いたのだ。
「せっかく魏続が頑張って長安を落としてくれたのですが無駄になりましたね」
そんな華淋の一言に対して二人の反応はそれぞれであった。
「そうか……」
と淡々とした様子で答える蓮華に対し、華琳はあからさまに残念そうな表情を浮かべると視線を華淋に向ける。
「というと?何故、貴女が私の邪魔をしたのかを教えてくれる?」
そんな華琳の問い掛けに華淋はニッコリと笑みを浮かべると言った。
「そろそろ限界だったのです。この辺りで私に指揮権を譲って欲しいのですよ」
その突然の言葉に驚いた蓮華が声を上げる。
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