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44話
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「この様な暴挙……天が許す訳がないだろう!この様な事をしているといずれ罰を受ける事になるぞ」
その声の大きさから俺達のところまではっきりと聞こえたのである。
驚いた様にその声が聞こえた方を見たのは呂布と張飛であり関羽だけは表情を変えずに声の主である男を凝視していた。
俺はその男を見て呟いたのであった。
「あれは……袁紹の軍師の太っている男が何か喋っているな、アイツの名前は何だったかな……」
それを聞いた李儒が少し嫌そうな表情をしながら俺に言ったのである。
「張勲ですよ」
そんな二人の会話を聞いていた関羽が嬉しそうに話し掛けてくる。
「ならばあの肥満体と太った男は斬って捨てましょうぞ、呂布様」
そんな関羽の言葉に張飛はニヤッと笑う。
「お前は太った男が嫌いだったのか」
「いや……少し言い方が悪かったが、さすがにあそこまで太っていると少し斬ってダイエットさせた方が良いのではないかと思っただけだ」
そんな俺の返事に関羽は笑い出すと張飛も笑い出したのであった。
そんな二人の姿に戸惑いながらも俺は再び視線を太った男へ向ける。
どうやら袁紹軍の兵士達の退却の様子を見ていた男は自分が声をかけられている事に気が付いたのである。
「失礼ですが、どなた様でしょうか?」
そんな男に太った男は敵意を向けながら答えた。
「私は太尉袁術様の軍師である張勲だ」
「劉将軍と申す者でこの黄巾党討伐に参加する様に董卓将軍より命じられてまいりました」
そんな俺の言葉に張勲は鼻で笑うと呂布達の戦いを見ながら言ってきたのだ。
「だから何だと言うのですか?見ての通りこちらの方が圧倒的な優勢ですよ」
そんな張勲に関羽が笑いながら答えた。
「あのような奴の策に呂布殿が負けるはずが無い」
そんな関羽の言葉に俺は疑問を感じて問い掛けたのである。
「張飛は知っているのか?」
俺のその質問に張飛は笑いながら答える。
「劉将軍も知っているだろう?呂布殿の剣の腕の凄さを……今、目の前を見てみろよ」
そんな張飛の言葉を肯定する様に呂布や関羽が大暴れしているのだ。
俺は張飛の言葉を聞きながら呂布と関羽の動きを見て納得したのである。
「そうか……そういう事か」
その呟きに李儒も気が付き、そして笑みを浮かべたのである。
そんな俺達に対して張勲は鼻で笑ってから言った。
「劉将軍……まさか今の状況が見えていないのですか?これは貴方が思っている以上に厄介な事になっていますよ」
そんな張勲の言葉に俺と張飛は顔を見合わせて笑ったのであった。
その様子を驚きながら見ていた太尉袁術は張勲に怒鳴り付ける。
「一体何だと言うのだ?呂布達の方が優勢ではないか!」
その言葉に張勲は不敵な笑みを浮かべたまま言ったのである。
「では、何故呂布殿が仮面を外していないのでしょうか?」
そう言われて初めて気が付いたのか、袁術の表情が変わったのであった。
太尉袁術は自分の兵を見ると既に半数近くの兵士が逃げ出している状況であったからである。
そんな状況に袁術と張勲を睨みつける袁紹の元へ黄巾党の兵士が飛び込んで来たのだ。
「申し上げます。張超様、曹操軍の夏侯淵将軍が総大将を討ち取りました」
その報告に袁紹は激しく動揺して顔を引きつらせながら張勲を怒鳴りつけたのであった。
「貴様!最初から私を罠に掛けるつもりでここに来ていたな!」
そんな袁紹に張勲は冷静な口調で答える。
「黄巾党の兵士とはいえ、人の命を大切にしないアナタのやり方を見過ごす事は出来ないと言っているだけですよ」
「貴様!何を言っているのだ?我が軍は何の問題も無く進んでいるではないか?」
袁紹の言葉に呆れた様な溜め息を張勲が吐いた。
「戦局が変わった事にすら気が付いていないとは、これでよく太師と呼ばれていられたものですね」
そんな皮肉に激高した袁紹は剣を抜いて斬りかかろうとした時、太師の兵が止めに入ったのである。
「何をしておる?」
「張勲殿には手を出さないで下さい。我らの負けでございます」
その言葉に驚いた袁紹は動きを止めるが、張勲はお構いなく話し掛けてきた。
「どうします?まだ戦いを続けますか?これ以上は無意味だと思いますがね」
すると、少しの沈黙の後、太師の兵から声が聞こえた。
その声の大きさから俺達のところまではっきりと聞こえたのである。
驚いた様にその声が聞こえた方を見たのは呂布と張飛であり関羽だけは表情を変えずに声の主である男を凝視していた。
俺はその男を見て呟いたのであった。
「あれは……袁紹の軍師の太っている男が何か喋っているな、アイツの名前は何だったかな……」
それを聞いた李儒が少し嫌そうな表情をしながら俺に言ったのである。
「張勲ですよ」
そんな二人の会話を聞いていた関羽が嬉しそうに話し掛けてくる。
「ならばあの肥満体と太った男は斬って捨てましょうぞ、呂布様」
そんな関羽の言葉に張飛はニヤッと笑う。
「お前は太った男が嫌いだったのか」
「いや……少し言い方が悪かったが、さすがにあそこまで太っていると少し斬ってダイエットさせた方が良いのではないかと思っただけだ」
そんな俺の返事に関羽は笑い出すと張飛も笑い出したのであった。
そんな二人の姿に戸惑いながらも俺は再び視線を太った男へ向ける。
どうやら袁紹軍の兵士達の退却の様子を見ていた男は自分が声をかけられている事に気が付いたのである。
「失礼ですが、どなた様でしょうか?」
そんな男に太った男は敵意を向けながら答えた。
「私は太尉袁術様の軍師である張勲だ」
「劉将軍と申す者でこの黄巾党討伐に参加する様に董卓将軍より命じられてまいりました」
そんな俺の言葉に張勲は鼻で笑うと呂布達の戦いを見ながら言ってきたのだ。
「だから何だと言うのですか?見ての通りこちらの方が圧倒的な優勢ですよ」
そんな張勲に関羽が笑いながら答えた。
「あのような奴の策に呂布殿が負けるはずが無い」
そんな関羽の言葉に俺は疑問を感じて問い掛けたのである。
「張飛は知っているのか?」
俺のその質問に張飛は笑いながら答える。
「劉将軍も知っているだろう?呂布殿の剣の腕の凄さを……今、目の前を見てみろよ」
そんな張飛の言葉を肯定する様に呂布や関羽が大暴れしているのだ。
俺は張飛の言葉を聞きながら呂布と関羽の動きを見て納得したのである。
「そうか……そういう事か」
その呟きに李儒も気が付き、そして笑みを浮かべたのである。
そんな俺達に対して張勲は鼻で笑ってから言った。
「劉将軍……まさか今の状況が見えていないのですか?これは貴方が思っている以上に厄介な事になっていますよ」
そんな張勲の言葉に俺と張飛は顔を見合わせて笑ったのであった。
その様子を驚きながら見ていた太尉袁術は張勲に怒鳴り付ける。
「一体何だと言うのだ?呂布達の方が優勢ではないか!」
その言葉に張勲は不敵な笑みを浮かべたまま言ったのである。
「では、何故呂布殿が仮面を外していないのでしょうか?」
そう言われて初めて気が付いたのか、袁術の表情が変わったのであった。
太尉袁術は自分の兵を見ると既に半数近くの兵士が逃げ出している状況であったからである。
そんな状況に袁術と張勲を睨みつける袁紹の元へ黄巾党の兵士が飛び込んで来たのだ。
「申し上げます。張超様、曹操軍の夏侯淵将軍が総大将を討ち取りました」
その報告に袁紹は激しく動揺して顔を引きつらせながら張勲を怒鳴りつけたのであった。
「貴様!最初から私を罠に掛けるつもりでここに来ていたな!」
そんな袁紹に張勲は冷静な口調で答える。
「黄巾党の兵士とはいえ、人の命を大切にしないアナタのやり方を見過ごす事は出来ないと言っているだけですよ」
「貴様!何を言っているのだ?我が軍は何の問題も無く進んでいるではないか?」
袁紹の言葉に呆れた様な溜め息を張勲が吐いた。
「戦局が変わった事にすら気が付いていないとは、これでよく太師と呼ばれていられたものですね」
そんな皮肉に激高した袁紹は剣を抜いて斬りかかろうとした時、太師の兵が止めに入ったのである。
「何をしておる?」
「張勲殿には手を出さないで下さい。我らの負けでございます」
その言葉に驚いた袁紹は動きを止めるが、張勲はお構いなく話し掛けてきた。
「どうします?まだ戦いを続けますか?これ以上は無意味だと思いますがね」
すると、少しの沈黙の後、太師の兵から声が聞こえた。
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