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34話

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「ほほう、これは面白い事になっておるな」
楊彪はそう言って笑みを浮かべると二人の元にゆっくりと歩いてくる。
その様子を見て呂布が慌てて跪くと、その様子を見た張済も剣を下ろして跪いた。
「どうだ?これより俺と一騎打ちをするのは?」
そんな事を言い出す楊彪に張済は立ち上がり反論しようとするのだが、楊彪の視線は呂布に向けられている。
「これから俺の指示に従ってくれるか?」
楊彪のその言葉に、呂布は迷わず答える。
「太師がそうせよと仰られるのなら」
それを聞いた楊彪は満足そうに頷くと周囲で見ている兵に向かって大声で命令を下す。
「これよりこの者と俺との一騎討ちを始める!一騎打ちを見届けた者はこの戦いの勝者に従う様に!」
楊彪の大声に兵士達は動揺と興奮で喜びの雄叫びをあげる。
「さて、これでこの者も断れまい?」
そんな楊彪の言葉に張済が顔を強張らせて言う。
「お待ちください!私も呂布が怪しいのではないかと考えております!この様な決着では納得がいきません!」
そんな張済の言葉などまるで聞こえていないかの様に楊彪は腰にぶら下げている剣を抜いて呂布に差し出したのである。
「これは?」
状況が理解出来ない呂布が訊ねると楊彪は言った。
「お前の勝ちだ。これは俺からのささやかな礼だ」
そんなやり取りを固唾を呑んで見つめていた李儒は張済を手招きすると耳打ちをする。
「あの男は私の想像した通り、ただの武人でしたな」
それを聞いて張済は一瞬笑みを浮かべたのだが、すぐに顔を引き締めると頷き言う。
「うむ……この事を利用しなければ」
そう言うと周囲を取り囲む兵達に命じたのである。
「この一騎打ちにより呂布は我らの味方となった!我らはこの者を全面的に支持するぞ!」
すると、その言葉を聞いた兵達は大きな歓声を上げる。
「では張済様……どうか心置きなく戦っていただきたい」
李儒がそう言うと張済は笑みを浮かべる。
「分かった……」
そんな会話が終わると、これから始まるであろう激闘を思い周囲を取り囲んでいる兵達は胸を高鳴らせた。
そんな中で二人だけは冷静だったと言えるだろう。
楊彪が剣を構えると呂布もそれに従う様に自分の武器を構えたのである。
その様子を見守る兵達から大きな歓声が上がる。
先に動いたのは張済だった。
呂布の元へ走り込み下からの剣を振り下ろすのだが、呂布はそれを軽く後ろに飛び退くとそのまま低い姿勢で剣を突き出してきたのである。
その切っ先を身を反らせて避けた張済はそのまま後方転回をして起き上がると再び剣を振るう。
だが、その剣は呂布にあっさりと避けられてしまいさらに張済の足元に向けて呂布は剣を振り下ろした。
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