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20話

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「わかった……ここは通そう」
そう言うと陳宮は兵を引き始めたが、張遼にはそれが罠か判断出来なかったのである。
6 そんな二人を少し離れた場所から眺めている者がいた。
奉先と別れた呂布である。
そんな呂布に向かって二人の人物が近づいて来た。
二人は共に鎧を着て呂布の前に跪(ひざまず)くと言うよりも膝を付いて奉先であった。
「お初にお目に掛かります。高順、字を漢升と申します」
呂布が頷くともう一人の男も答える。
「李蒙、字は子文と言います」
そんな二人に戸惑いながら呂布は言う。
「面を上げよ……張遼ならまだ陳宮と争っているのか?」
その言葉に顔をあげながらその者が言う。
6人の将軍の中で最初に曹操軍に降ると言い、その後も劉備軍を裏切り曹操軍に戻ってきたと言う魏続であった。
「張遼とは互角の戦いを繰り広げていたのですが、後方から陳宮が現れ、張遼は退却せざるおえなくなったのです」
「ほう、あの呂布も恐れる陳宮か……高順と子文と言ったな?」
そう言った呂布の視線の先にいたのは諸葛亮であった。
その後呂布は李蒙に言う。
「お前達二人は俺と一緒に来い!奉先を援護するぞ!」
そう言うと奉先の元へと駆け出すのであった。
「殿、二人が来ましたか?」
そう聞くと呂布は頷いた後に李蒙と子文に言った。
「俺が指揮を取る!高順の指揮下に入れ!」
一方、張遼の方は予想外の苦戦に徐々に追い込まれて行っていた。
そんな状況の中、呂布が手勢を連れて現れたのである。
「将軍のご到着だ!」
張遼は思わずそう言ってしまったが、呂布軍の軍師である陳宮がこの状況は好都合と言わんばかりに、先程と同じ様に大声で叫びながら撤退を始める。
「呂布が現れたぞー!総員退却せよ!!」
しかしそれは嘘であり、同じ手で誘い出そうとしたのであった。
それを聞いた高順は舌打ちをする。
「呂布将軍のお出ましだと?陳宮の奴、今度はそう来たか!」
高順は悪態をつくと敵陣へと突撃しながら叫んだ。
「撤退している奴など放っておけ!敵将は俺が討ち取る!!」
その号令に配下の兵は鼓舞され、高順を先頭に全力で駆け出すと一瞬で呂布と陳宮の近くまで駆け寄る事が出来た。
しかし、ここで思いもよらぬ事態が起こったのである。
先頭を駆ける高順の前に突如として李蒙が現れたかと思うと、騎乗したまま彼に向かって剣を振り下ろしたのである。
間一髪で攻撃を避けた高順であったが、勢い余って陳宮から離されてしまう。
「何をする!」
しかし呂布軍の兵に槍で突かれ、呂布にも弓で射られた為、陳宮を追う事が出来なかったのである。
その頃、諸葛亮は城の一番高い物見櫓から戦況を見守っていた。
そんな所へ李蒙が走りながらやって来る。
「丞相!至急指示をいただきたい!!」
息を切らせて言う李蒙に対し諸葛亮は冷静に言い放つ。
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