上 下
8 / 100

8話

しおりを挟む
「呂布奉先は変態だったのか?」
「そりゃ、性欲も強いはずだ」などといった事を言っていたのだ。
そんな状況を見かねた諸葛亮が声を発した。
「いい加減にしろ!そんな話はどうでもいいではないか!!」
(よくないだろ!)
そう突っ込みたい気分だったのだが、言葉が見つからず沈黙していると話の続きを始める。
「私が聞きたいのは、関羽殿が魏続殿の命を奪い奉先殿にどんな得があるかという事じゃ!」
諸葛亮の言葉を聞いた関羽が静かな口調で話し出した。
「確かに私の勝手で呂布殿に迷惑をかけてしまいましたが、それは私が望んでした事です。魏続殿にもそれをご理解頂き納得して頂きました」
(そんな事を説明してるんじゃないんだよ!)
そう思っていると今度は劉備が関羽に尋ねる。
「それでは呂布奉先に一体何をさせようとしていたのだ?」
その問いに関羽は答えたのである。
「蜀軍が大事そうに守ってる玉璽という物を手に入れるよう進言したのです」
(なに?)
俺だけじゃなく劉備や諸葛亮、更に曹操軍の武将たちも驚きの表情を浮かべていた。
そんな中で魏続だけが泣き始めていた。
(可哀想にな)
そんな魏続を見ながら俺は考える。
(玉璽を狙っている事を知っていたから俺を仲間に引き入れたのか?)
そういえば玉璽を狙っていた事を諸葛亮や関羽に話した覚えもなかったし、そもそも知らないと思うのだが何故そんな細かい所まで知っているんだと疑問に思ったのだ。
そんな事を考えていると劉備は関羽に向かって叫んだのだ。
「それは、お前の野心の為ではないのか?」
それを聞いた諸葛亮も言う。
「いくら玉璽が素晴らしい物だと言っても主を殺す理由にはなるまい」
その言葉に関羽は首を横に振って答えた。
「呂布殿は私欲で動くような人物ではありません。蜀の地に攻め入ろうと思ったのは私の我が儘であり、そこに魏続殿を巻き込んでしまった事に深く反省しております」
その言葉に対して曹操軍の武将達は顔を見合わせると全員が同じ意見である事を認識する。
そんな中で諸葛亮は関羽に問いかけた。
「もしも仮に、曹操様が天下を統一した場合には玉璽を譲ると言われておられたのか?」
「はい」
(え?どういう事だ?)
俺が不思議に思っていると曹操軍の武将の一人が進み出ると言ったのである。
「この者の言う事は大げさではありますが嘘か誠か確かめようがないかと。それに今ここで話し合っても何の解決にもなりませぬ」
確かにそうである。
(関羽はどうしてそこまで知っているんだ?)
そう思いながら俺は関羽を睨むのであった。
「魏続殿、関羽殿の言葉に嘘偽りはございませんか?」
諸葛亮が尋ねると魏続はコクンと頷く。
それを見て諸葛亮は何かを考えているかのように腕を組んでいたが、直ぐに言う。
「曹操様に会いに行き、直接確かめるしかあるまい」
(曹操にって……何を話す気なんだよ)
俺がそう思っていると関羽が叫ぶ。
「奉先殿、お願いしたい事があります」
(何だよ?改まって)
そう思って見ていると関羽は続けた。
「私に玉璽を譲ってくれぬか?」
俺は思わず反応する。
「は?」
(え?何を言ってるんだこいつは?)
俺は関羽を見つめると怒鳴るように声を荒らげた。
「いい加減にしろ!これまで色々な事があったけど、お前はなんなんだ?魏続を殺したかと思えば今度は俺に玉璽を譲ってくれだって?馬鹿も休み休み言えよ」
俺の言葉に関羽は焦った様に話す。
「もちろん奉先殿から玉璽を騙し取ろうなどとは考えておりません。ただ私の口から曹操様に奉先殿が望んだ事を伝えても良いでしょうか?」
(何か勘違いされてるな)
そう思った俺は関羽を睨みながら言う。
「魏続の事はどうするんだ?何の音沙汰もなく消えていたら怪しむのは当たり前だろ」
俺の言葉に関羽は首を横に振って答えた。
「魏続殿は失踪ではなく、命を落とした事にします。曹操様にそれを信じ込ませるだけの事、奉先殿にご迷惑をおかけしませぬ」
(本当かよ)
俺はそう思ったのだが、そこに諸葛亮が口を挟む。
「それが嘘ではないと申すのであれば曹操様へ納得して頂く証拠を見せて頂かねば」
諸葛亮の言葉を聞いた関羽は頷いてから俺に玉璽を出させると自分の左手に握らせる。
そして、不敵な笑みを浮かべたまま宣言したのだ。
「この関羽、一度口にした事は守ります」
そんな関羽の言葉を聞いて魏続は号泣していたのだ。
(いくらなんでも酷すぎるだろ!)
俺がそんな事を考えていると曹操軍の武将の中から一人の男が声を上げたのである。
「その話、信じても宜しいのでしょうか?」
(誰だ?あいつ?)
俺が不思議に思っていると関羽がその男の名を告げる。
「楽進、良い時に声を上げる」
その名に劉備が驚いていた。
「楽進!まさかお主が魏続殿を裏切っておるのか?」
その問いに楽進は叫ぶ。
「元より主を裏切るなど武将としてあるまじき行為!劉備様とてお分かりのはず」
(え?あいつも裏切っていたのか!?全く気付かなかったぞ)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...