異世界でフレンドリーな騎士と怠け者の神様

19話

次の日、俺はまた新たな事件に巻き込まれた。
いつものようにグルドラと一緒に市場を歩いていると、突如として空から大きな音が響いた。

「ゴォォォォォ！」
空を見上げると、巨大なドラゴンが低空飛行していた。その体を青く輝く鱗が包み、金色の目が俺たちをじっと見下ろしている。

「おいおい、グルドラ、あれって…」
俺が言いかけた瞬間、ドラゴンが一気に舞い降り、俺たちの前にドスンと着地した。地面が震えるほどの衝撃が走る。

「お前ら！ ちょっと聞け！」
ドラゴンがすごい勢いで話しかけてきた。

「うわっ、うるさいな…」
俺は思わず耳を塞いだが、ドラゴンはまったく気にせず話を続ける。

「お前らの町に、またあいつが来てるんだ！」
「またあいつ…って誰だ？」
「ほら、あの変なクマ、フラッシュだよ！」
グルドラが指を指して言った。

「え？ それって…クマ？」
ドラゴンが言っていたのは、どうやら街にたまに現れる「フラッシュ」という名の異世界のクマらしい。こいつは異常に速く動き、町中で物を盗んだり、騎士たちを驚かせてはそのまま逃げてしまうので、みんなで捕まえようと何度も試みたが、毎回逃げられているという。

「そのフラッシュがまた現れてるって？ 今回はどうするんだよ？」
俺はグルドラに尋ねる。

「そりゃ、もう捕まえるしかないだろ！」
グルドラが意気込みを見せた。もちろん、俺にはその自信がどこから来るのかさっぱり分からなかったが、面倒くさそうにしつつも「やれやれ…」と覚悟を決める。

「おい、グルドラ、行くぞ！」
ドラゴンが再び空を舞い上がり、俺たちも後を追うように町の広場へ向かう。途中、何人かの騎士たちがすでに準備を整えていた。

「フラッシュがどこにいるか分かるか？」
俺が問うと、騎士の一人が答えた。

「たぶん、あの辺の森の中だと思います。でも、あいつすっごく速いから…」
「速いって…どう速いんだよ？」
「見た目は普通のクマなんですが、ものすごいスピードで移動するんです。あいつが現れると、あっという間に街中がパニックになりますよ。」
そんな話を聞いて、ますます面倒くさくなったが、今更引き下がるわけにもいかず、俺たちは森に向かって出発した。

数十分後、森の奥に到着すると、何やら巨大な音が響き渡った。「ゴゴゴゴゴ！」
「やっぱりフラッシュだ！」
グルドラが駆け出すと同時に、見えないスピードで走っているクマの影が一瞬で目の前に現れた。フラッシュは、目にも留まらぬ速さで木々の間を駆け抜け、そのままどこかへ消えてしまう。

「ちょっと待て、早すぎるだろ…！」
俺は驚き、足を取られて転びそうになった。

「くそ、また逃げられたか…」
「フラッシュ、待てぇぇぇぇ！」
グルドラはあっという間に追いかけようとするが、彼も速さにはついていけない。

その時、俺の中で突然閃いた。「待てよ…フラッシュの速さに勝つ方法があるんじゃないか？」
俺はグルドラを呼び止めた。
「グルドラ！待て、ちょっと考えがある！」
グルドラが息を切らしながら振り返る。

「何だよ？ こんなに速いクマにどうやって勝つんだ？」
「それは…」
俺は振り返ると、目の前にある木を指差した。

「これだ！木を一斉に倒して…フラッシュを捕まえる！」
「木を倒す…？何言ってんだお前？」
「見てろよ！」
俺は魔法の力を使って、周囲の木々を一気に倒す。木々が倒れる音が響くと、フラッシュは急に足を止め、木の間を走るのをやめた。

「おお、成功したぞ！」
俺は勝ち誇ったように笑った。フラッシュは驚いた表情で立ち止まり、俺たちに向き直った。

「よし！今だ！」
グルドラと騎士たちが一斉にフラッシュに向かって突撃する。

「捕まえたぞ！やったな！」
ついにフラッシュを捕まえ、俺たちは勝利を祝った。普段は逃げ回るばかりのフラッシュも、今度はじっとしていて、どうやら無力化されたらしい。

「いやぁ、さすが俺だな！」
俺はちょっと自信を持ちながら、笑った。もちろん、周りの魔物たちも拍手で迎えてくれたが、俺の中で何かがモヤモヤしていた。

「…本当は、速さには勝てなかったけどな。」
俺は心の中でつぶやいた。